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Channel: 碓井広義ブログ
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書評した本: 橋本 治 『九十八歳になった私』ほか

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週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。

橋本 治『九十八歳になった私』
講談社 1728円

舞台は2046年、大震災後の東京だ。主人公の「橋本治」は元小説家にして98歳の独居老人。50代の編集者や自分自身を相手に「記憶が執着心と共に消えて行くな」「希望は幻想だよ」などと呟く様子は日頃の著者を思わせる。近未来予測私小説とでも言えそうだ。


大庭萱朗:編
『色川武大・阿佐田哲也ベスト・エッセイ』
ちくま文庫 1026円

『離婚』で直木賞を受けた色川武大。『麻雀放浪記』の阿佐田哲也。2つの顔をもつ作家のエッセイを集大成した文庫オリジナルだ。構成は博打、文学、交遊など全7章。特に冒頭の「戦後史グラフィティ」には、敗戦0年から11年までのニッポンが活写されている。


福田和也『ヨーロッパの死~未完連載集~』
青土社 3024円

中断した連載ばかりを集めた異色評論集。ほとんどが1990年代後半の仕事で、テーマは当時の関心を反映したものだ。幸田露伴、ゲーテ、ワーグナー、そしてヒトラーとハイデガー哲学などに様々なスタイルで挑んでいる。未完というより現在も進行中の論考だ。

(週刊新潮 2018年3月1日号)

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