NHKの肩書捨てた有働由美子の“勝算”は?
有働由美子が、朝の人気情報番組「あさイチ」のMCを降板後、27年間勤めたNHKを退局した。NHKを代表するアナウンサーが選んだ次の道は、現場主義のジャーナリストだ。
芸能評論家の三杉武さんは「東京五輪まではアナウンサーとして活躍できるでしょうが、その後は管理職として後輩の指導に当たることになったのではないか」と、退局の背景を分析する。
その有働だが、NHKを通じ、「海外での現場取材や興味ある分野の勉強を自分のペースで時間をかけてしたいという思いが捨てきれず、組織を離れる決断」をしたとコメントしているが、入局前は各地を飛び回る特派員に憧れ、新聞記者を志していた。2011年12月の「AERA」のインタビューで、「国際部の記者になりたくてNHKを受けた」が、アナウンサーとして採用されたと明かす。
07年の人事異動で、アメリカ総局の特派員に就き、08年には管理職に昇進したが、周囲には「現場で、ずっとやっていきたい」と、当時から第一線へのこだわりを見せていたようだ。
今回の有働の決断はどのように映ったのか。有働と仕事をした経験のあるNHK職員は、有働の著書『ウドウロク』(新潮社)を熟読し、有働が海外に興味を持っていると感じていた。「電撃退職には驚いたが、ジャーナリストに転身すると知り、やっぱり海外で取材をしたかったんだなと合点がいった」という。
上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は「『NHKの有働』は唯一無二の存在。明るさ、親しみやすさ、また等身大の自分を見せる潔さで広く受け入れられてきました。たとえばわき汗の話題でも、取り繕わず視聴者に伝えていましたよね。決して上から目線にならず、『皆さんと同じ一人の女性ですから』というスタンスが見事でした」と評価すると同時に、「アナウンサー出身の女性が、組織運営に関わる理事などのポジションに就いてもいい時代。NHKで働く女性のロールモデルとして道を切り開いてほしかった」と惜しむ。
退局後の初仕事は今夏放送予定のNHKBSプレミアムのドキュメンタリー「世界プリンス・プリンセス物語」の第3弾で、元NHK記者・池上彰との共演がささやかれるが、NHKは「現時点では何もお答えできません」と回答。ジャーナリスト有働さん、これからも、チェスト! きばれ!(本誌・岩下明日香)
(週刊朝日 2018年4月20日号)