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Channel: 碓井広義ブログ
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ヒロインも脇役も光る、朝ドラ「半分、青い。」

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NHK朝ドラ「半分、青い。」
ヒロインだけでなく脇役のキャラクターも光る
主人公が母親の胎内にいる時点から始まったNHK朝ドラ「半分、青い。」。楡野鈴愛(永野芽郁)は、1971(昭和46)年に岐阜県東濃地方で楡野宇太郎(滝藤賢一)と晴(松雪泰子)の長女として生まれた。この両親で思い浮かぶのが「ひよっこ」のヒロイン、谷田部みね子(有村架純)だ。

みね子は64(昭和39)年の「東京オリンピック」の時に高校3年生だった。物語の最後で「すずふり亭」の秀俊と結婚したが、71年には25歳になっているはずで、鈴愛を産んだ晴とみね子はほぼ同世代だ。つまり、「半分、青い。」の背景となっている時代は「ひよっこ」のその後であり、鈴愛も律(佐藤健)もいわば「みね子の子供たち」に当たる。好評だった先行作品との“ゆるやかな連続性”を意識したこの設定は上手い。

加えて岐阜編では、「あまちゃん」で話題となった「80年代文化」も登場した。松田聖子のヒット曲から温水洗浄便座まで様々なアイテムで楽しませてくれたが、このあたりも成功例を踏まえた見事な目配りと言える。

鈴愛は小学3年生の時、片方の耳が聴こえなくなってしまった。朝ドラ史上初の「ハンディキャップを持つヒロイン」だ。しかし、このドラマは「障害も個性だ」という姿勢で貫かれている。鈴愛が「障害のある女の子」ではなく、「個性的でユニークな女の子」として描かれていることに好感がもてる。

現在ドラマの舞台は東京へと移っており、鈴愛は漫画家を目指して修業中だ。元々朝ドラではヒロインが「何かのプロ」になろうと切磋琢磨するのが王道で、これまでも様々な職業に就いてきた。「梅ちゃん先生」の医師、「花子とアン」の翻訳家、「まれ」のパティシエなどだが、変わったところでは「ちりとてちん」の落語家というのもあった。そんな中でも漫画家はかなり異色で、垣間見る創作の現場は視聴者にとっても興味深い。

しかも鈴愛が弟子入りした売れっ子少女漫画家、秋風羽織(豊川悦司)のキャラクターが秀逸だ。長身、長髪、サングラス。徹底的に自分のルールと価値観にこだわる偏屈さ。さらに浮世離れした天才のお茶目な一面もある。

脚本の北川悦吏子と豊川の組み合わせは、95年の「愛していると言ってくれ」(TBS-HBC)、01年の「Love Story」(同)などがあるが、今回、豊川が恋愛ドラマの主演とは違うポジションを大いに楽しんでいることが伝わってくる。ヒロインだけでなく脇役も輝いている朝ドラにハズレはない。

(北海道新聞 2018.06.02)

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