「半分、青い。」
朝ドラらしからぬ朝ドラの魅力
後半戦に入ったNHK朝の連続テレビ小説「半分、青い。」。この朝ドラにはいくつもの驚きがある。
まずユニークなのが主人公だ。楡野鈴愛(永野芽郁)は左耳が聴こえない。朝ドラ史上初の「障がいをもつヒロイン」だ。しかも幼い頃から「左耳の中で小人(こびと)が踊ってる」と面白がってきた。独特の感性でハンディキャップも個性に変えていく。そんな見たことのないキャラクターが視聴者を引きつけている。
次にユニークなのが物語展開だ。朝ドラはヒロインの「成長物語」という要素が強く、目標に向かって努力する姿が描かれることが多い。それは自立へのプロセスでもあり、一種の「職業ドラマ」として見ることができる。過去には弁護士、医師、翻訳家などがあった。
この「半分、青い。」では、鈴愛が人気漫画家の秋風羽織(豊川悦司、好演)に弟子入りしてデビューを果たした。しかし単行本まで出したところで行き詰り、なんと漫画家を廃業してしまう。ヒロインが一筋の道を突き進むことが当たり前の朝ドラとしては思いがけない展開で、現在は100円ショップでアルバイト中のフリーターだ。
さらに「恋愛ドラマ」という側面が際立つ点もユニークだろう。岐阜での少女時代から東京での漫画家修業あたりまでは、幼なじみの萩尾律(佐藤健)との淡い関係が続いていた。だが、ふとした行き違いから2人は別れ、律はさっさと別の女性と結婚してしまった。
また律を通じて知り合った朝井正人(中村倫也)を好きになり、自分から告白した鈴愛だが、意外やあっさりフラれてしまう。
どうやら鈴愛は目の前に現れたイケメンに弱いらしい。今度はバイト先で出会った助監督の森山涼次(間宮祥太朗)と結婚すると騒ぎ出した。(追記:本当に結婚してしまった!)
脚本の北川悦吏子は「ロングバケーション」や「ビューティフルライフ」などを手がけてきた恋愛ドラマの名手だ。今回は朝ドラという場で「恋愛」という得意技を奔放に炸裂させている。おかげで若い視聴者も増えた。それには脚本家自身によるツイッターなどでの積極的な発信も寄与しているようだ。
朝ドラらしからぬ朝ドラだが、魅力的な主人公と予想外のストーリーは人気ドラマの必須アイテムである。
(しんぶん赤旗「波動」 2018.07.16)