週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。
川本三郎 『「それでもなお」の文学』
春秋社 2160円
おもにこの5年間に書かれた文学作品についての文章だ。対象は自身が好きな作家と作品であり、そこには「生きる悲しみ、はかなさ」が描き込まれている。坂口安吾や林芙美子など「昔の作家」と、桜木紫乃や東山彰良といった「現代作家」が並んでいるのも著者ならでは。
本城雅人 『友を待つ』
東京創元社 1944円
困難と思われる取材対象に肉薄し、多くのスクープを放ってきた伝説の週刊誌記者、瓦間慎也。そんな男が女性宅への不法侵入と窃盗の容疑で逮捕される。真相を探ろうとする後輩記者たちは、過去におけるある官僚と瓦間の関係に注目する。緊迫の記者ミステリだ。
椹木野衣
『感性は感動しない
~美術の見方、批評の作法』
世界思想社 1836円
気鋭の美術批評家による初の書き下ろしエッセイ集だ。絵を鑑賞する際に大切なのは「なにかを学ぼうとしないこと」だと著者は言う。唯一無二の存在と存在の交錯であり、響き合うかどうかだと。この「絵をまるごと呑み込む」方法からユニークな椹木批評が生まれる。
(週刊新潮 2018年9月13日号)