<碓井広義の放送時評>
ダブルの復活劇に注目
日曜劇場「グッドワイフ」
刑事物や医療物など、同じジャンルのドラマが横並びになることは珍しくない。今期は弁護士物が競い合っている。「イノセンス~冤罪(えんざい)弁護士~」(日本テレビ-STV)、「スキャンダル専門弁護士QUEEN」(フジテレビ-UHB)、そして日曜劇場「グッドワイフ」(TBS-HBC)の3本だ。
この中では「グッドワイフ」が最も見応えがある。ヒロインの蓮見杏子(きょうこ)(常盤貴子)は主婦から16年ぶりに現役復帰した女性弁護士。戻ってきた最大の理由は、東京地検特捜部長だった夫の蓮見壮一郎(唐沢寿明)が汚職容疑で逮捕されたからだ。杏子は、司法修習生時代の同期である多田(小泉孝太郎)の助けで、彼が共同代表を務める法律事務所に仮雇用となり、弁護士業を再開した。
最初の案件はネット配信番組のキャスター、日下部(武田鉄矢)が相手だった。彼は幼い娘が行方不明になった事件に関して、母親が犯人だと決めつける。その影響を受けた風評に追い詰められ、母親は自殺。父親が日下部を名誉棄損(きそん)で訴えると、日下部も同じ名誉棄損で逆告訴してきた。
法廷で最初はおずおずしていた杏子だが、途中からは堂々の弁護ぶりを見せる。徐々に変化する様子も含め、緩急をつけた常盤の演技が光っていた。主演女優としての貫禄だ。しかもそんな杏子の姿が、「Beautiful Life~ふたりでいた日々~」以来19年ぶりで「日曜劇場」の主演に復帰した常盤本人と重なり、ダブルの復活劇という効果も生んでいる。
現在、物語は中盤に差しかかってきた。たとえば往年のロックスター東城数矢(宇崎竜童)の離婚訴訟では、杏子は長年連れ添ってきた妻(銀粉蝶)の代理人として、若い恋人とその弁護士に向き合った。しかも単なる資産をめぐる争いではない。そこに夫と離婚すべきか悩む杏子と、その夫を陥れたと思われる東京地検の脇坂部長(吉田鋼太郎)の離婚協議もからめて、見る側に「夫婦とは何か」を問いかける展開となっていた。
このドラマ、原作はアメリカの同名シリーズだ。脚本の篠崎絵里子は、ヒロインの繊細な心の動きをより重視しながらアレンジを行っている。またチーフ・ディレクターは「アンナチュラル」の塚原あゆ子であり、夫や子供たちとの関係はもちろん、杏子への思いを抱える多田(小泉)との微妙な距離感も丁寧に描かれているのだ。夫の汚職事件も政治がらみの背景が少しずつ見えてきた。後半戦、一層の盛り上がりが期待できそうだ。
(北海道新聞 2019.03.02)