週刊テレビ評
「メゾン・ド・ポリス」 定番の刑事ドラマに新風
1月クールのドラマが終了した。印象に残った作品の中で、刑事ドラマという定番ジャンルに新風を吹き込んだ「メゾン・ド・ポリス」(TBS系)に注目したい。
まず、新米女性刑事の牧野ひより(高畑充希)が、退職刑事専用のシェアハウス「メゾン・ド・ポリス」に暮らす高齢者たちの力を借りて事件を解決していく、その設定が新鮮だった。主演の高畑は演技のシリアスとコメディーの配分が絶妙で、大先輩たちのムチャぶりに困惑しながらも彼らに助けられ、同時に彼らを元気にするヒロインを好演していた。
また5人のベテランのキャラクターと、演じている俳優のマッチングも楽しめた。ハウスのオーナーは元警察官僚の伊達(近藤正臣)で、警察内部での影響力をしっかり保持している。ひよりと同じ柳町北署にいた迫田(角野卓造)は、最後まで「所轄」勤務にこだわった職人肌の元刑事だ。
シェアハウスの管理人は現役時代に現場経験がなかった高平(小日向文世)。家事はもちろん、住人たちの健康管理も担当する。藤堂(野口五郎)が所属していたのは科捜研。今も自分の部屋には鑑定用の機材が山積みだ。そして、最も若いのが元捜査1課の敏腕刑事だった夏目(西島秀俊)。集中して何かを考えたい時には、アイロンかけをする変わり者だ。
いずれも極めて個性的なおじさんたちであり、贅沢(ぜいたく)なキャラクターショーになっていた。そんな5人がひよりと共に捜査を行っていくのだが、彼らはいずれも単なる“いいひと”ではない。確かにチームだが、互いにリスペクトする個人の集まり、ゆるやかな連帯といった雰囲気がほほえましい。
原作は「インディゴの夜」や「モップガール」などで知られる、加藤実秋の同名小説だ。ただし脚本の黒岩勉(「謎解きはディナーのあとで」など)が有効なアレンジを施している。たとえば第2話「密室殺人」編。原作では被害女性が働く消費者金融の人たちが事件に関係していた。それがドラマでは小学校のPTAに変えてあり、消費者金融の店長もPTA会長だ。おかげで日常に潜む悪意や殺意が浮き彫りになった。
こうした毎回の事件と、ひよりの父の死を巡る、物語全体を貫く過去の事件。短期と長期の謎がバランスよく融合され、最後まで見る側を飽きさせなかった。さらに、このドラマには女性の働き方、パワハラ、熟年離婚、定年後の人生、シェアハウスという暮らし方、オトコの家事といった現代的テーマが、重くならず、そしてさりげなく、ちりばめられていたことも成功要因の一つだ。
(毎日新聞夕刊 2019.03.30)