週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。
川本裕司
『変容するNHK~「忖度」とモラル崩壊の現場』
祥伝社 1620円
「ETV特集」「ハートネットTV」など“NHKの良心”と呼ばれる番組群を制作する文化・福祉番組部が解体の危機にある。まさに“政権への忖度”だが、なぜこんなことが起きるのか。歴代会長の功罪を含め、ベテラン新聞記者がNHKの過去と現在を総括する。
古橋信孝
『ミステリーで読む戦後史』
平凡社新書 1015円
ミステリー小説を通じて戦後社会を読み解こうとする試みだ。60年代の松本清張『ゼロの焦点』に見る戦争の影。70年代に戦後社会に異議を唱えた清水一行『動脈列島』。そして小杉健治の『絆』など家族の問題がテーマとなる80年代。ミステリーは優れたうつし鏡だ。
メグ・ウォリッツァー:著、 浅倉卓弥:訳
『天才作家の妻 40年目の真実』
ハーパーコリンズ・ ジャパン 1000円
グレン・クローズ主演映画の原作だ。偉大な文学賞を受賞した夫とそれを支える妻。そんな図式が吹き飛ぶ衝撃の告白だ。確かに夫婦も他人であり別人格。相手の心の奥底までは知り得ない。それにしても40年分の鬱屈と葛藤の何と根深いものか。秀逸な恐怖小説だ。
(2019年3月28日号)
一本木透
『だから殺せなかった』
東京創元社 1944円
第27回「鮎川哲也賞」優秀賞受賞作だ。連続殺人犯から新聞社に挑戦状が送られてくる。しかも記者の一本木透を指名して。その手口を開陳しながら、自身の殺人哲学を語る犯人。新聞は劇場型犯罪の舞台となっていく。「報道とは何か」を問う秀作ミステリだ。
澤山博之:監修・著
『ミュージック・ライフ 東京で1番売れていたレコード
1958~1966』
シンコーミュージック・エンタテイメント 2808円
安保闘争で国会突入があった1960年6月、最も売れた洋楽のシングル・レコードはフランキー・レイン「ローハイド」。邦楽は平尾昌晃の「ミヨちゃん」だった。雑誌『ミュージック・ライフ』の独自チャートや記事を完全再現。当時の音楽シーンが甦ってくる。
(2019年3月21日号)