<放送芸能を楽しむ>
テレビと動画 連動続々
配信時代にらみ各局模索
インターネットでの動画視聴が一般的となる中、テレビ各局で放送番組と動画配信サービスを連動させる動きが広がっている。ドラマ本編にはないオリジナルストーリーを配信したり、バラエティー番組の未公開シーンをネットで披露したり-。狙いを探った。
▽きっかけ
「動画配信でオリジナルの展開をすることで、地上波だけでは番組を見てくれない若い人に視聴のきっかけを与えたい」。傘下のHulu(フールー)での動画配信事業に携わる日本テレビの岩長真理=写真=は力を込める。
同局が積極的に取り組むのがドラマ分野での連動だ。日曜夜のドラマ枠では昨年度、全クールでオリジナルストーリーや未公開シーンをHuluで配信。
「今日から俺は!!」と「3年A組」は、週間視聴数の記録を更新した。ツイッターなどで関心を持った人がドラマ本編を配信で見たり、テレビ視聴したりすることを期待している。
こうした取り組みでHuluの有料会員数も増えているといい、岩長は「動画を見るのにお金を払う感覚がない人に、それをどう根付かせるか。日テレの強力なコンテンツと連動することで価値を高めたい」と話す。
▽ノウハウ
テレビ朝日は、IT大手サイバーエージェントと共同出資したインターネットテレビ局AbemaTV関連の事業を「経営上極めて重要」と位置付け、バラエティーを中心に連動を強める。
昨年五月からテレ朝の制作スタッフは、毎週四時間にわたるAbemaTV向けの番組を配信し、動画制作のノウハウを習得。
今年四月からはAbemaTVとの“完全連動”をうたうバラエティー番組「陸海空 こんなところでヤバいバル」と「しくじり先生 俺みたいになるな!!」の放送を開始した。未公開シーンを盛り込んだ「完全版」やオリジナル企画を配信する。
▽先行投資
他局も、TBSがテレビで放送してきた人気恋愛リアリティーショー「恋んトス」の新シーズンをParavi(パラビ)で配信するなど、新たな取り組みを始めている。
こうしたテレビ局の動きについて、上智大の碓井広義教授(メディア文化論)は「一種の先行投資。放送時代から配信時代への流れが明らかになる中で、大きな利益が突然生まれるわけではないが、手を付けないといけない状況になってきた」と指摘する。
電波で番組を放送するテレビ局の優位性がネットにより崩れてきたとした上で「テレビ局はコンテンツ制作に生き残りの鍵があると考えつつあり、対応が遅れたところは競争から脱落する可能性がある」と話した。
(東京新聞 2019.05.11)