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読売新聞で、「きのう何食べた?」 について解説

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男性カップルの日常 自然に

「きのう何食べた?」 西島秀俊と内野聖陽熱演

西島秀俊と内野聖陽が恋人役を演じる、テレビ東京系で放送中の連続ドラマ「きのう何食べた?」(金曜深夜0・12 ※一部地域を除く)が、話題を集めている。SNSなどで評判が広がり、各回の見逃し配信の再生回数は同局の番組で過去最高を記録している。男性カップルの日常を描いたドラマが今、なぜ視聴者の心をつかんでいるのだろうか。(佐伯美保)

ドラマは放送前から注目を集めていた。講談社の雑誌「モーニング」で連載中のよしながふみによる同名漫画が原作。加えて料理上手な弁護士の筧史朗を西島、同居する美容師の矢吹賢二を内野と、人気と実力を兼ねそなえた2人が演じることが明らかになると、期待は一層高まった。

ビデオリサーチによると、第6話(10日)の平均視聴率(関東地区)は3・7%を記録するなど、深夜帯としては高視聴率で推移。「TVer(ティーバー)」などの見逃し配信の再生回数は、第7話(17日)までの全話で100万回を超えた。また、ドラマで史朗と賢二が使うマグカップは、同局のウェブサイトで即日完売し、ドラマ化に合わせて出版されたレシピ本は10万部を突破した。

ドラマを味わい深くしているのが、西島と内野の演技だ。「これまで強く、格好良い役柄のイメージが強かった2人が、かわいらしさや繊細さをそなえた男性カップルを演じるのは一見意外かもしれない。だが説得力のある芝居をしていて、それが面白さにつながっている」。松本拓プロデューサーはこう評価する。

特に賢二は、時にしぐさや言葉遣いに女っぽさがにじむ難役だ。同性愛者であることを職場で隠す史朗に不満をぶつけたり、史朗が女性アイドルのファンだと知ってヤキモキしたりするシーンもある。松本プロデューサーは「実写化したドラマでは、男性役で女っぽい部分を出し過ぎると、くどくなる。加減が難しいが、内野さんは見事に表現していると思う」と語る。

同局はこれまで「孤独のグルメ」「忘却のサチコ」などのドラマを深夜に放送してきたが、今作も番組を見ていて食べたくなるような“飯もの”の魅力が満載だ。ドラマでは、史朗や賢二が調理の手順や調味料の分量などをセリフを通じて視聴者に伝えながら作っているため、見るだけで再現することが可能。電子レンジで半熟卵を作る方法など、料理の知恵も盛り込む。実際にSNSでは、ドラマを見て作った料理写真の投稿が相次いでいる。

小松菜と厚揚げの煮浸し、大根とホタテのなます、タマゴと千切りのタケノコ、ザーサイの中華風炒(いた)め--。2人の食卓にのぼる料理は、身近な食材を使った素朴なものばかり。史朗はスーパーで食材を吟味し、月の食費を2万5000円以内に抑えている。「ごく普通の人の生活を描いていることが、親しみやすさを感じさせるのでは」。松本プロデューサーはそう語っている。

 ◆幸せのつかみ方のモデル

番組の支持が広がった理由について、碓井広義・上智大教授(メディア文化論)は「男性同士の生活を自然に描くことで、視聴者も『こんな生き方もあるね』と受け入れられるのではないか」とし、「2人は出世や多くのお金を手に入れるのではなく、一緒に食卓を囲む生活を大切にしている。先行きの見えない時代だからこそ、幸せのつかみ方のモデルになっているのかもしれない」と説いた。

また、深夜枠ドラマならではの制作の狙いについて、「万人に受けるものを作ろうとすると、深く愛されないことがある。今回は『特定の層に支持されればいい』と割り切って見せたい作品を作ったことで、逆に支持が広がった」とみている。

スマートフォンや動画配信サービスの普及など、近年のテレビを取り巻く環境が大きく変化する中で、「きのう何食べた?」は見逃し配信での視聴も好調だ。放送作家の山田美保子さんは「ドラマのヒットには、放送時間は関係なくなっているのではないか。娯楽が多様化する中、テレビ局は今後も新しいテーマに挑戦し、トレンドを探ることが求められていく」と語った。

(読売新聞 2019.05.27)

 


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