NHK 土曜ドラマ
「デジタル・タトゥー」
異色コンビの戦いは他人事ではない
土曜ドラマ「デジタル・タトゥー」(NHK)は、ネット社会のダークサイドに斬り込んだ意欲作だ。タイトルは、ネット上に刻まれた“負の記録”が、入れ墨のように残り続けることで人を苦しめる現象を指す。
主人公は元特捜検事で弁護士の岩井堅太郎(高橋克実)。検事時代に大物政治家・伊藤秀光(伊武雅刀)の疑獄事件を担当し秀光の長男を自殺に追い込んだ過去がある。そして岩井に助けを求めてきたのが、人気ユーチューバーのタイガこと伊藤大輔(瀬戸康史)だ。
タイガは伊藤秀光の次男だが、ネットでの炎上をきっかけに何者かに命を狙われる事態に陥った。そんな2人が、ネットによる被害者を救済する活動を開始する。
第2話では、8年前に冤罪(えんざい)の痴漢事件で有罪となり、教師の職を追われた男が登場した。彼は住む場所を変え、ようやく小さな塾を開いたが、過去の出来事を蒸し返す執拗(しつよう)な投稿のせいで、塾を閉めざるを得なくなる。痴漢事件の検事が自分だったこともあり、この案件を引き受ける岩井。調べてみると、投稿者は塾に息子を通わせていた母親(中越典子)だった。彼女には性犯罪者を恨む強い理由があり……。
2人が向き合うのは、他者の人生を破壊する力を持つ、「匿名性」という名の凶器だ。しかも被害者になる可能性は誰にでもある。異色コンビの戦いは他人事ではない。
(日刊ゲンダイ 2019.05.29)