週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。
白石雅彦
『「怪奇大作戦」の挑戦』
双葉社 1944円
1960年代後半、『ウルトラQ』に始まる円谷プロの特撮シリーズが人気を集めた。しかしその中の『怪奇大作戦』は異色だった。怪獣も宇宙人も登場しない。しかも実相寺昭雄監督『京都買います』など名作が多い。本書は伝説の特撮ドラマの深層に迫っていく。
谷口桂子
『崖っぷちパラダイス』
小学館 2160円
「崖っぷち女」とは辛辣だ。約40歳で独身、フリーランス。現在の自分に矜持と不安あり。女性誌で働く4人の女性の“生活と意見”を描いた連作集だ。見合い、不倫、昔の男。さらに仕事をめぐる騒動や親の介護まで入ってくる。さあ、彼女たちはどう生きるか。
デイヴィッド・E・フィッシュマン:著、
羽田詩津子:訳
『ナチスから図書館を守った人たち』
原書房 2700円
ナチスが支配するポーランド領の街。ゲットーのユダヤ人は図書館の本を処分する作業を強いられた。だが、彼らにとって蔵書は自分たちの文化そのものだ。決死の覚悟で本を運びだし、守ろうとする人たちがいた。奇跡の闘いを掘り起こした歴史ノンフィクション。
(週刊新潮 2019年4月25日号)
こうたきてつや
『昭和ドラマ史』
映人社 2700円
日大名誉教授の著者はドラマ研究の第一人者。昭和の作品群の中でも、“ドラマの黄金時代”といえる70年代の記述が熱い。向田邦子『寺内貫太郎一家』、倉本聰『前略おふくろ様』、そして山田太一『岸辺のアルバム』など、まさに脚本家の黄金時代でもあった。
井上一夫
『伝える人、永六輔 『大往生』の日々』
集英社 1728円
著者は元「岩波新書」編集者。『大往生』という大ベストセラーに始まる、永六輔との日々を振り返った。約10年にわたる二人三脚で知った独特の発想や仕事の仕方、さらに生き方までが明かされる。「積み重ねでなく閃き」という方法の中に永六輔の神髄を見る。
(週刊新潮 2019年4月18日号)