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仕事ドラマが映す現代社会

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仕事ドラマが映す現代社会

就職情報サイト「リクナビ」の調査によれば、大学生・大学院生の「内々定率」は6月半ばで72%に達したそうだ。

確かにゼミの4年生たちも、「夏休みまでには」という目標より早く就職活動を終えた者が多い。彼らに会社選びのポイントを訊いてみると、業種や仕事の内容もさることながら、就業時間や福利厚生についても細かくチェックしていることが分かる。プライベートの時間を大事に考える傾向は以前と比べて格段に強い。

先月ゴールした、吉高由里子主演「わたし、定時で帰ります。」(TBS-HBC)。ネット関連会社の10年選手であるヒロイン(吉高)は残業をしない。「やる気、あるのか?」などと言う上司もいるが、モーレツ社員だった父の姿や、 かつての恋人(向井理)が過労で倒れたことなどから無用の働き過ぎを警戒し、定時で帰ることをポリシーとしている。とはいえ、その働き方には工夫があり、極めて効率的。有能な社員なのだ。

もちろん会社には様々なタイプの人間がいる。自分の居場所が無くなることを恐れて、短期の産休で職場復帰する女性。まるで会社に住んでいるかのように、家に帰らず仕事を続ける男性。また残業など当たり前、会社とはそういうものだと思っている上司も。

この上司(ユースケ・サンタマリア)が引き受けてきた無理な仕事で、部下たちは過酷な目に遭う。最後はチーム力で乗り切ったが、主人公の定時退社は崩された。こうしたリアルな現場も見せながら、「働くこと」と「生きること」の関係を考えさせてくれたのがこのドラマだった。

もう1本、仕事ドラマと呼べるのが、福山雅治主演「集団左遷‼」(TBS-HBC)である。こちらの舞台は銀行だ。効率化とリストラを目的に「廃店」を決められた支店が、熱血支店長(福山)を中心に一丸となって業績を上げ、活路を見出そうと頑張っていた。

だが、発案者の本部役員(三上博史)がこれを目の敵にし、あの手この手で邪魔をする。自分の出世と銀行支配のためなら手段を選ばない男は、最後には政治家への賄賂で墓穴を掘ることになった。

暑苦しいほど熱演の福山と、いつも通り達者な香川照之、そして三上の怪演などで見応えはあったが、「銀行はいまだにこんなことをしているのか」と少々辟易する内容で、銀行志望の学生が減らないかと心配するほどだ。しかし、これもまた社会の「合わせ鏡」であるドラマの醍醐味なのだろう。

(北海道新聞「碓井広義の放送時評」 2019.07.06)

 


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