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Channel: 碓井広義ブログ
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週刊朝日で、「おしん」と「なつぞら」について解説

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「おしん」令和に再注目

「『なつぞら』のヒロインよりスゲー」

「面白すぎる」



現在NHK BSプレミアムで午前7時15分から再放送中の連続テレビ小説「おしん」が、巷の声やSNS上などで再び注目を集めている。

1983年から84年にかけ放送された。山形県の貧しい農家に生まれたおしんがさまざまな経験を重ねながら成長、やがて大成功を収める一代記。「おしんの“しん”は辛抱の“しん”」という名ぜりふも話題になり、平均視聴率52.6%と、テレビドラマ史上最高視聴率記録を持つ作品だ(ビデオリサーチ調べ)。

「橋田壽賀子さんの脚本による密度の濃さがとにかくすごい。常に正面から闘っているおしんの強さも、魅力の一つです」

と、ドラマ評論家の田幸和歌子さんは言う。

一方、朝ドラ最新作の「なつぞら」は地上波版の視聴率は20%前後を維持しているものの、昭和の名作の再放送に思わぬ余波を受けている。

BSでの放送は「おしん」の直後、7時30分から。幼いころに戦争を体験し北海道へ連れてこられて育ったヒロインが東京に戻り、アニメーターとして活躍する物語だ。

「朝ドラ100作目ということもあり、それこそ『おしん』の小林綾子さんや『純ちゃんの応援歌』の山口智子さんら歴代ヒロインが続々と出演していることでも話題。『おしん』をセット放送しているのも、100作目を盛り上げるためだったと思います」(田幸さん)

しかし、「おしん」の迫力が災いしているのか、BS派の視聴者にとっては「なつぞら」がどうにも「ぬるく」映ってしまうようなのだ。

「おしんは関東大震災も戦争も、もろにかぶり、少女時代から常に敵役と呼べる存在がいて、しかも、そのリアリティーも見事。綿菓子的な作品に慣れた現代の視聴者にとって、かみごたえのあるドラマが突然現れた。若い世代にとっては新発見であり、一度見た人もいろんな体験を重ねたことで、より深く感じられる」

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)はそう指摘する。

「ドラマというものは基本的には葛藤の連続で構成されているのですが、『なつぞら』はその葛藤さえも、どこか緩い雰囲気がある。東京大空襲にもあまり緊迫感を感じられず、周りもいい人ばかりです」

「おしん」の再放送は、「なつぞら」が終了した後も続く。101作目の戸田恵梨香主演「スカーレット」も、昭和の名作の陰影をかえって深く映しだすのか。(本誌・太田サトル)

(週刊朝日 2019年7月19日号)

 


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