配役が光る「I(アイ)ターン」
“深夜ドラマのテレ東”は今期も健在
人生、一寸先は闇。何が起こるか、わからない。でも、自分以外に起きた不幸は笑って楽しめるのが人間だ。今期のドラマ24「Iターン」は、まさにそんな一本である。
主人公は広告会社に勤務する狛江光雄(ムロツヨシ)。上司である高峰部長(相島一之)に嫌われて、突然遠方の支店に左遷されてしまう。行った先は商店街のシャッターとヤクザとヤンキーが目立つ阿修羅市だ。
支店には覇気のない営業マン・柳(渡辺大知)と、事務の美月(鈴木愛理)しかいない。何とか売り上げを伸ばそうとするが、ヤクザの竜崎組長(田中圭)が経営するサラ金のチラシ広告でミスを犯してしまう。狛江は竜崎に金で縛られる一方、対立する岩切組長(古田新太)の舎弟になるという末期的状況に……。
ムロツヨシの「情けないほど小心者のサラリーマン」。古田新太の「小さな組を率いて任侠道に生きる組長」。田中圭の「冷徹非情で野心満々のインテリヤクザ」。そして、黒木瞳の「タロット占いが特技のスナックママ」。いやはや、いずれもこれ以上ないというハマり役で、このドラマに「キャスティング大賞」を贈りたいほどだ。
加えて各回のゲストも楽しい。たとえば、接待されるのが大好きなデパートの部長にTKOの木下隆行。あまりに似合い過ぎて笑ってしまう。「深夜ドラマのテレ東」の異名は今期も健在だ。
(日刊ゲンダイ 2019.07.31)