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【書評した本】 西垣 通、河島茂生『AI倫理』

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人間とAIの関係を根本から問う警世の書


西垣 通、河島茂生

『AI倫理~人工知能は「責任」をとれるのか』

中公新書ラクレ 929円

 

18歳で運転免許を取った頃、クルマのギアはマニュアルだった。その後、オートマが当たり前になったが、今でも時々、シフトレバーを握る左手がむずむずする。

最近はEV(電気自動車)もたくさん見かけるようになった。11万キロ走ってきたガソリン車から、「クルマも家電の時代ですか」と横目で眺めているうちに、今度は「自動運転」だそうだ。

確かにテレビでも、ドライバーがハンドルから手を離して走るCMが繰り返し流され、メーカーは「近い現実」としてのアピールに余念がない。まさにAI(人工知能)サマサマだ。

しかし、素朴な疑問がある。万一、自動運転車が事故を起こしたら、責任は誰がとるのだろう。ドライバーは乗っているだけで、運転していない。だからと言って免責なのか。ならば自動車メーカーや販売店が背負うのか。それともAIが責任をとってくれるのか。

いや、それは無理だ。そもそもAIが人間に代わってクルマを運転するなら、そこで生じるはずの責任、また倫理や道徳の問題を無視することは出来ない。だが、AIをめぐる技術開発の根底にあるべき倫理については、きちんと論じられないままだと著者は言う。

西垣通、河島茂生『AI倫理』では、「AI倫理とは何か」に始まり、近代社会における倫理思想の流れ、AIロボットと人格、生物と機械の差異など、緻密な考察が重ねられていく。自動運転の例も含め、これからの人間とAIの関係を根本から問う警世の書だ。

(週刊新潮 2019年10月17日菊見月増大号)

 

 

AI倫理-人工知能は「責任」をとれるのか (中公新書ラクレ (667)) 西垣 通,河島 茂生 中央公論新社

 


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