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Channel: 碓井広義ブログ
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2013年 テレビは何を映してきたか (6月編)

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ハワイ島 2013

日刊ゲンダイに連載している、番組時評コラム「TV見るべきものは!!」。

ひとつの「同時代記録」として再読しながら、今年のテレビが何を映してきたかを概観しています。

今日は6月分。

各文章は掲載時のまま。

文末の日付は掲載日です。


2013年 テレビは何を映してきたか (6月編)

「応援ドキュメント・明日はどっちだ」 NHK

「応援ドキュメント・明日はどっちだ」(火曜夜10時55分)は、関ジャニ∞にとってNHKでの初レギュラーである。「明日に向かって頑張っている人たちを応援する」がコンセプトで、対象となる人物にある期間、密着取材するのだ。

スタジオには関ジャニの渋谷すばる、村上信五、横山裕がいるが、軸はあくまでも取材VTRだ。これまでに36歳の崖っぷちプロボクサー、赤字温泉を立て直すべく大奮戦する父子、大工の棟りょうを目指して修業中の女性などが登場した。

この番組の特色は、取材対象の取り組みを数週にわたって放送すること。立ちはだかる壁を越えようとする努力や失敗や達成のプロセスを、いわば“連続ドラマ形式”で見せてくれるわけで、そこから見る側の感情移入も生まれるのだ。

たとえば警察犬の訓練士になるために北海道から上京してきた若者は、迫る実技試験を前に犬が自分の思うように動かないことに苛立つ。しかし、やがて犬の気持ちに寄り添うことで活路を開いた。最初に見た時は「大丈夫か?」と思えた青年が、だんだんプロフェショナルの顔のなっていく様子は確かに応援したくなる。

また関ジャニの3人が上から目線だったりせず、挑戦者たちを真摯に応援していることにも好感が持てる。連ドラ型の成長ドキュメントは、彼ら自身にも当てはまるのだ。

(2013.06.04)


「みんな!エスパーだよ!」 テレビ東京

「夏帆」である。「優香」の登場以来、この手の水商売の源氏名みたいな芸名にも慣れてしまったが、思えば夏帆ってのもすごいネーミングだ。デビューからもう10年。顔と名前が知られたのは、やはり「三井のリハウス」のCMだろう。大人い美少女、清楚なお嬢さんといった路線でここまでやってきた。

その意味で、今回のテレビ東京「みんな!エスパーだよ!」(金曜深夜0時12分)は大きな転換点になるのではないか。何しろヤンキー女子高生の役だ。しかも人の心の声が聞こえるという超能力者(エスパー)。路上ですれ違った男の「お、ヤリマン女子高生。いくらかな?」といった“心の声”にキレたりする。

主演は染谷将太で、夏帆はエスパー仲間の1人なのだが、彼女が出てくると画面が生き生きする。一本気なヤンキーぶりと、自分の超能力への戸惑いぶりがカワイイのだ。加えて制服の短いスカートによるアクションで、毎回のパンチラもお約束だ。夏帆21歳、頑張ってます。

メイン監督は映画「ヒミズ」の園子温。愛知県東三河の長閑な風景をバックに、エスパー高校生たちの“ゆるくて笑える”戦いを描いている。確かに力を合わせての活躍だが、映画「ファンタスティック・フォー」の超能力者たちのように世界を救う大きな話じゃないところがいい。いや、パンチラは夏帆を救うかも。

(2013.06.11)


「世界の村で発見!こんなところに日本人」 テレビ朝日

なぜか最近、タイトルに「日本」の文字が入る番組が目立つ。「YOUは何しに日本へ?」(テレビ東京)、「世界の日本人妻は見た!」(TBS)、「世界ナゼそこに?日本人」(テレビ東京)、そして今回取り上げる「世界の村で発見!こんなところに日本人」(テレビ朝日・金曜夜9時)などだ。

いわゆる海外在留邦人は、永住者と長期滞在を併せると約118万人もいる。単なる旅行者ではなく、現地に暮らす人たちだからこそ見えてくる「海外」と「日本」があるはずで、この番組もそこを狙っているのだ。

先週の放送では女優の伊藤かずえがパラオへ。小さな島に76年前から住んでいるという日本人女性に会いに行った。ただし、出演者は自力で目的の日本人を捜し歩くのがこの番組の特色だ。現地の人たちに話しかけ、移動手段を探し、右往左往するプロセスから、その国の様子が見てくる。

また、ようやく会えた女性が語る半生が壮絶だ。パラオで日本人の両親から生まれたが、戦争で父親が死亡。子供が多かった母親は、日本に帰る際に彼女をパラオに残す。大人になって一度母親を訪ねたが、日本になじめず戻ってきたと言う。

70年近い歳月が流れても戦争の傷痕は消えていない。そのことを私たち日本人は知るべきだろう。バラエティの形を借りた堂々のドキュメントだ。

(2013.06.18)


「噂の!東京マガジン」 TBS

TBS「噂の!東京マガジン」(日曜午後1時)がスタートしたのは1989年。現在24年目となるが、今や希少な長寿番組だ。ではこれだけ続いている理由は何なのか。

まず、変わらないことだ。総合司会は一貫して森本毅郎で、パネラーである井崎脩五郎、清水國明、山口良一といった面々も20年以上変らない。進行役の小島奈津子以外、おじさんばかりという特殊番組だが、馴染みの顔が並ぶ安心感がある。また一緒に年齢を重ねていく共生感もたっぷりだ。

次にシンプルな構成。何しろコーナーは3つしかなく、これまた長年不動のラインナップである。週刊誌の見出しをチェックし、ランキングする「今週の中吊り大賞」。街角で若い女の子が料理に挑戦する「やって!TRY」。そして、番組名物「噂の現場」だ。

実は放送時間の半分を占める「噂の現場」こそがこの番組のキモである。話題の出来事や現象の現場を訪ね、両論併記で取材していく。たとえば、先週は世界遺産登録された富士山だった。観光客増加を当て込んで盛り上る人たちがいる一方で、環境破壊や登山者の安全を危惧する声があることを紹介していた。

この一歩引いて見る姿勢の中に、野次馬的好奇心とジャーナリズム的批評精神が共存しており、長寿の秘訣もそこにある。番組の課題は、出演者たちの超高齢化だけだ。

(2013.06.25)



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