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Channel: 碓井広義ブログ
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映画『そして父になる』の現実喚起力

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今年観た映画の中で、強く印象に残った作品の一つが、是枝裕和
監督の『そして父になる』です。

学歴、仕事、家庭といった自分の望むものを自分の手で掴み取ってきたエリート会社員・良多(福山雅治)。自分は成功者だと思っていた彼のもとに、病院から連絡が入る。それは、良多とみどり(尾野真千子)との間の子が取り違えられていたというものだった。6年間愛情を注いできた息子が他人の子だったと知り、愕然とする良多とみどり。取り違えられた先の雄大(リリー・フランキー)とゆかり(真木よう子)ら一家と会うようになる。血のつながりか、愛情をかけ一緒に過ごしてきた時間か。良多らの心は揺らぐ……。


赤ちゃんの取り違え。

あり得ることですが、あってはならないし、でも起きた時には、どうしたらいいのか。

平穏に暮らしていた2組の夫婦が、それぞれの家庭が崩壊するような状況に、突然直面する。

子どもたちのために、という思いが深いからこそ、迷うし、悩む。

観る側もまた、家族や家庭って何だろう、と考えながらスクリーンを見つめる。

“正解”はあるのか、ないのか。

登場人物、特に主人公が、じわじわと成長していく姿が描かれていたことが良かった。

だからこそ、最後に彼らが出した結論に、その選択に、納得する自分がいた。

きっと、それでいいんだ、と。


今年、まるでこの映画と同じような出来事がありました。

ある60歳の男性が、60年前の昭和28年、生まれた病院で別の赤ちゃんと取り違えられたとして、病院を開設した東京・墨田区の社会福祉法人「賛育会」を訴えていたのだ。

11月になって、東京地方裁判所は、DNA鑑定の結果から取り違えがあったことを認め、合わせて3800万円を支払うよう命じたことが報じられた。

現実の出来事というだけでなく、「全く別の人生(経済的にも苦しい生活)を余儀なくされた」ことを理由に訴訟が起きていたことに驚いた。

この判決についてうんぬんはしないが、ただ、「男性が事実関係を知ったとき、実の両親はすでに亡くなっていた」と聞いて、どこかほっとしたのも事実だ。

もし取り違えがなかったとしたら、あり得たかもしれない、もう一つの別の人生。

確かにそうかもしれない。

でも、それを思うことが、60年生きてきた自分を否定することになるのか、ならないのか。

映画『そして父になる』が、あたかも現実を呼び寄せたようで、これもまた是枝監督のチカラかもしれない、と思ったりした出来事でした。


<このブログ内での関連記事>

2013年05月30日
日刊ゲンダイで、「そして父になる」是枝監督についてコメント
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/380c75a0914223a0911f5703aee4f836


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