NHK正月時代劇
「ライジング若冲〜天才 かく覚醒せり〜」
“大人のお年玉”のようなうれしい一本
正月2日、NHKで「ライジング若冲(じゃくちゅう)〜天才 かく覚醒せり〜」が放送された。
若冲とは江戸時代の天才絵師、伊藤若冲のこと。平成時代に入って注目を集めたので、極彩色で描かれた鶏や水墨画「象と鯨図」などを目にした人も多いはずだ。とはいえ、よもやドラマで若冲に会えるとは思わなかった。
京都の青物問屋に生まれながら、希代の絵師となった若冲(中村七之助)。その理解者で名プロデューサーの役目を果たした相国寺の僧侶、大典顕常(永山瑛太)。物語は2人を軸に展開する。
最大の見せ場は若冲が作品を生み出す姿であり、そのプロセスだ。鳥や虫や花などをひたすら見つめ、写生していく。また家の中では鶏を放し飼いにして、10日間も観察を続ける。求めるのは姿かたちではなく、「躍動する魂の力」だ。やがて、若冲は「神気が見える!」の境地へと到達する。
そしてもう一つの見どころが若冲と大典の、友情を超えた愛情ともいうべき深い絆だ。2人が向き合う場面に漂う濃密な「艶」は、中村と永山が見せてくれた、役者としての真骨頂と言える。
作・演出は「スローな武士にしてくれ〜京都 撮影所ラプソディー〜」で、いくつもの賞を受けた源孝志。再現性の高いレプリカを駆使して、「創造すること」への敬意を物語化していた。まるで「大人のお年玉」のようなうれしい一本に感謝だ。
(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.01.06)