北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。
今年の第1回は、年末年始番組をめぐって書きました。
年末年始番組に思う
生中継の現場力 感じた箱根駅伝
新年を迎えて2週間近く、大晦日のNHK「紅白歌合戦」も遠い思い出のようだ。とはいえ、その第2部(午後9時〜)の視聴率は44・5%。大ヒットドラマ「半沢直樹」(TBS系―HBC)の最終回、42・2%の記録的数字をかわして年間1位に輝いた。
目玉は予想通り「あまちゃん」コーナーだ。アキ(能年玲奈)はもちろん、北三陸のスナック梨明日(リアス)に集う面々、アイドルグループのGMT47やアメ横女学園もいる。ユイ(橋本愛)はNHKホールに駆けつけ、アキと「潮騒のメモリー」を熱唱。続けて天野春子(小泉今日子)と鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)がリレーで歌い継ぐ心憎い演出だ。
実はこの「紅白」こそ、「あまちゃん」の本当の最終回だったのではないか。ステージ上の大画面には存在しなかった第157回の文字も出ていた。アキはようやくユイと一緒にステージで歌うことができた。GMT47は念願の全国デビューだ。天野春子もまた憧れの舞台に立つことができた。「あまちゃん」完結編としての「紅白歌合戦」。そんな妄想をさせるに十分な15分(ドラマ1回分と同じ長さ)だった。この熱気を受けて、今年が「ドラマ復権の年」となることを祈りたい。
年が明けて、テレビは正月特番の喧騒に包まれた。お笑い、カラオケ、ドッキリなど、もうお腹いっぱいである。そんな中、2日と3日に放送された「箱根駅伝」(日本テレビ―STV)が目を引いた。
画面に映るのは走っている選手だけなのだ。それなのに見ることをやめられない。普通のマラソンではなく、仲間へとつなぐ「たすきリレー」のせいだ。母校の名誉とか自分の評価とか、そんなものが吹っ飛ぶくらい選手たちは必死で走っている。それがいいのだ。
ただし今年の実況アナウンスはうるさかった。復路の8区で拓殖大の選手が前の選手と足を絡めて転倒したが、すぐ立ち上り走り出した。するとアナウンサーが「俺は何をやっているんだ!転んでなんかいられない」などと絶叫。選手の気持ちを代弁したつもりかもしれないが実に聞き苦しかった。真剣勝負をアナウンスで無理に盛り上げる必要はない。
「箱根駅伝」で、あらためて感じたのは生中継がもつ現場力であり、リアルタイムの魅力だ。「テレビならでは」の強力コンテンツといえる。生放送・生中継というテレビ本来の能力を再認識し、これまで以上に生かすことが今後の活路の一つになるのではないか。年の初めにそんなことを思った。
(北海道新聞 2014.01.14)