日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、NHK・Eテレ「SWITCH(スイッチ)インタビュー 達人達」について書きました。
もちろん各回の組み合わせにもよりますが(笑)、先週はかなり面白かったですね。
1粒で2度おいしい“対談ドキュメント”
Eテレ「SWITCH(スイッチ)インタビュー 達人達」
誰かの話を聞くのはインタビュー。2人が向き合って話しあうのは対談。しかしEテレ土曜夜10時「SWITCH(スイッチ)インタビュー 達人達」では、注目すべき人物2人が、前半と後半でインタビュアーとゲストの立場を交代(スイッチ)する。いわゆるインタビューや対談の枠を超えた、新感覚のインタビュー番組だと言っていい。
番組の生命線は人選と組み合わせだ。たとえば構成作家・小山薫堂とアートディレクター・佐藤可士和の回では、企画や発想の手法といった互いの手の内をどこまで見せるか、その「カードの切り方」に醍醐味があった。
先週は脚本家の宮藤官九郎と、バイオリニストの葉加瀬太郎だ。朝ドラ「あまちゃん」が絶好調の宮藤は、田舎の人たちの「ここには何もなくて」という自信のなさや、逆に外部から「本当に何もないですね」などと言われると頭にくる感じを描きたいと語っていた。
一方の葉加瀬は、ブラームスに対する特別な思いと、その楽曲には年齢を重ねることで新たな発見があると明かしていた。そんな葉加瀬の古典回帰には、昨年宮藤が歌舞伎の脚本を手掛けたことに通じる模索の姿勢がある。
相手が単なるインタビュアーではないからこその話の広がりと展開。さらに互いの仕事の現場が垣間見られる興味。1粒で2度おいしい“対談ドキュメント”だ。
(日刊ゲンダイ 2013.05.29)