日刊ゲンダイに連載中の「TV見るべきものは!!」。
今週は、三谷幸喜脚本「シャーロックホームズ」(NHK)を取り上げました。
三谷版ホームズは
見応え十分のパペット・エンターテインメント
ちょっとしたホームズ・ブームが来ているようだ。3月に日本を代表するシャーロキアン、小林司と東山あかねの全訳で、河出文庫版「シャーロック・ホームズ全集」全9巻の刊行が始まった。
また先週、NHKで三谷幸喜脚本「シャーロックホームズ」が3夜連続で放送された。さらに5月にはNHKBSプレミアムの海外ドラマ、「シャーロック」シーズン3も控えている。
中でも異色作は三谷版だ。何しろ人形劇、いやパペット・エンターテインメントである。しかも物語の舞台をロンドン郊外の全寮制の名門校に移し替え、ホームズ(声・山寺宏一)とワトソンも15歳の少年にした。彼らが暮らすのがベーカー街ならぬベーカー寮。部屋はもちろん221Bだ。これだけで嬉しくなる。
有名な「ボヘミアの醜聞」も「困った校長先生の冒険」に変換された。妖艶な保健室の先生、アイリーン・アドラー(声・宮沢りえ)に翻弄される校長を、家庭崩壊の危機からホームズが救う。人形劇らしからぬ不倫騒動を、三谷はユーモラスな謎解きで巧みにさばく。特にアドラーとホームズが互いの心理を読み合う、丁々発止のやり取りは見応えがあった。
人形たち(デザイン・井上文太)は微妙な表情の変化さえ感じさせる名優ぞろい。モリアーティ教頭が本性を出しそうな、8月の新作も楽しみだ。
(日刊ゲンダイ 2014.04.01)