フジテレビ「ほこ×たて」のやらせ問題に対して、BPOが出した「意見書」。
2日の日刊ゲンダイに、この件に関する記事が掲載されました。
その中で、解説しています。
「ほこ×たて」やらせ問題
「八百長勝負」を容認したBPO
昨年10月に放送が打ち切られたバラエティー番組「ほこ×たて」(フジテレビ系)が断罪された。
きのう(1日)、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が、「制作過程に重大な放送倫理違反があった」とする意見書を発表した。
「矛」と「盾」が勝負をしたらどうなるか――だれもが見たい“真剣勝負”を提供し、人気になった対決型バラエティー。
ところが、昨年10月20日の放送は、戦ってもいない相手と戦ったかのように見せた。これを出演者が暴露し問題が発覚。BPOは「存在しなかった対決を作りだし、出演者や視聴者との約束を破った」と指摘した。
もっとも、BPOが考える“約束”は視聴者とずれているようだ。
意見書はバラエティー番組について、<制作者と出演者が協力して、ある種の「虚構」を作り上げ、それに視聴者が安心して身をゆだね、楽しむ、という二重の了解の上に成り立つ>と定義している。
要するに、作り手も受け手も「虚構」であることを前提にしているから、「虚構」の有無は問題にならないというわけだ。
対決前に勝敗決定?
例えば「ほこ×たて」は、なんと、対決前に勝敗を決めていたという。勝負はしているが、結果は八百長。それでもBPOは「二重の了解」が成立していたと問題視しない。
今回のケースは、出演者の暴露で制作者との協力が破綻し、「二重の了解」が崩れたことが問題との結論である。視聴者は八百長と知った上で対決を楽しんでいたという判断だ。
しょせんテレビなんてそんなものとシニカルに捉える人もいるだろうが、バラエティーであっても「真剣勝負」をうたうなら八百長は許されないのではないか。
上智大教授の碓井広義氏(メディア論)もこう言う。
「視聴者もバラエティーに演出があることは理解しています。ただし同番組の場合なら、フェアな戦いのための条件整備までと思っているはずです。結果も演出とは想像していないでしょう。虚構ではなく本当の真剣勝負と受け止めたからこそ、視聴者は支持した。それが同番組に数々の賞をもたらしたはず。“虚偽は了解されている”とする意見書には違和感を覚えます」
BPOの姿勢も問われているのだ。
(日刊ゲンダイ 2014.04.02)