放送批評懇談会が発行する、放送専門誌『GALAC(ぎゃらく)』。
発売中の最新号の特集は「バラエティの時代感覚」です。
全国のローカルバラエティを、複数で分担して執筆していますが、その中の「北海道編」を寄稿しました。
ローカルバラエティのローカルパワー
北海道編
「水曜どうでしょう」の呪縛を超えて進め
北海道のローカル・バラエティについて、いや全国におけるそれを語る場合でも、「水曜どうでしょう」(北海道テレビ、以下HTB)を外すわけにはいかない。
スタートは1996年10月。ミスターこと鈴井貴之と大泉洋に加えて、ディレクター2人(藤村忠寿、嬉野雅道)の4人組が国内から海外までを旅してきた。
2002年9月に一旦休止したが、DVDなどで人気は持続し、再放送だけでなく、1〜2年に1回は新作スペシャルが放送されている。
この番組の成功以来、他局はもちろんHTBでも第2の「水曜どうでしょう」の開発にやっきとなってきた。現在、代表的なものだけでも次のような番組が放送されている。
札幌テレビ「1×8いこうよ!」
大泉洋と局アナの木村洋二が道内各地に出没し、地元を盛り上げる。
北海道文化放送「タカトシ牧場」
タカアンドトシが本物の牧場の一角にタカトシ牧場を設け、お笑い仲間と商品開発を行ったりする。
北海道テレビ「おにぎりあたためますか」
大泉洋、戸次重幸、佐藤麻美アナの3人が道内外を食べ歩く。ロケ車内でのトークが名物。お笑いコンビのオクラホマも「北海道完全制覇の旅」を続けている。
いずれも多くのファンを持っているが、各局とも「水曜どうでしょう」に比肩する番組とは思っていない。
しかし、考えてみればそれも当然で、鈴井、大泉、藤村、嬉野の個性とセンス、組み合わせの妙は代替え不能なものだからだ。
また時代背景も違う。18年前の彼らが持っていた「低予算だし、特に期待もされていないから、何をやってもいい」という自由は、今の制作者たちには与えられていない。それなりの結果を求められる。
その意味で、そろそろ「水曜どうでしょう」の呪縛から脱するべきだ。前記の番組も「水曜どうでしょう」との比較ではなく、それ自体としてきちんと評価できる。その上で、今後は視聴者の知的好奇心を刺激するタイプのバラエティがあってもいい。
3月28日の夜11時15分から、北海道テレビが「現代%(パーセン)基礎チシキ」を放送した。気になることを「アンケートによる%」で数値化し楽しもうというバラエティだ。
たとえば、「女性からボディタッチされると自分に気があると思う男性」は65%。「下着の上下は基本バラバラな女性」が54%など、放送時間が遅いこともあり、柔らかいネタが並んでいた。
司会はバナナマンの設楽統。スタジオに同じく日村勇紀、ますだおかだの岡田圭右など。壇蜜やデーブ・スペクターもVTR出演する賑やかさで、新機軸のバラエティを開発する意欲が感じられた。
しかし、それ以上に注目すべきは、この特番が北海道テレビ、名古屋テレビ、九州朝日放送による初の共同制作だったことだ。3局とも様々な自社制作を行っているが、あくまでも地域限定番組であり、また人員にも予算にも限りがある。
そこで、共同制作によって全国の視聴者に見てもらえる番組を生み出そうというのが狙いだ。テレビ朝日を含む各地の放送局に番組販売していく戦略商品。いわば中央集権的なネットワークシステムに風穴を開ける試みでもある。そのチャレンジに声援を送りたい。
(GALAC 2014年6月号)