6月4日、恵比寿のウエスティンホテルで、「第51回ギャラクシー賞」の贈賞式が開催された。
ギャラクシー賞は放送批評懇談会によって1963年に創設され、すでに半世紀の歴史をもつ、放送界の大きな賞の一つだ。テレビ、ラジオ、CM、報道活動など部門ごとに表彰が行われている。
審査を担当するのは、放送批評懇談会会員から選ばれた選奨事業委員会だ。一般的に、賞の決定を第三者に委託する顕彰制度が多い中で、放送批評懇談会の会員が一貫して審査にあたるギャラクシー賞は、賞としての独立性を維持しつづけていると言っていい。
贈賞式当日には、すでに公表されていた入賞作の中から選ばれた、大賞と優秀賞が発表された。
ちなみに、ギャラクシー賞では「授賞式」ではなく「贈賞式」と呼ぶ。“上から目線”で賞を授けたり、与えたりするのではなく、あくまでも贈るというのが基本姿勢だ。
●ギャラクシー賞に見るテレビの現在
賞の中軸となる「テレビ部門」の入賞作は全部で14本あった。放送局別で見ると、NHK4本、地方局7本、東京キー局2本、BS局1本となっており、半数を占める地方局の健闘ぶりがうかがえる。
またジャンル別でいえば、ほとんどがドキュメンタリーであり、ドラマは14本中2本だけだ。
贈賞式では、まず3本の優秀賞が発表された。1本目は、中京テレビ放送『ニッポンの性教育 セックスをどこまで教えるか』。
次に、TBSテレビ『報道特集 シリーズ秘密保護法案「秘密保護・法案成立なら社会は? 原発情報どこまで秘匿? 現役官僚語る」「特定秘密保護法が成立…議論は尽くされたのか?』。
3本目が、テレビ朝日の山田太一ドラマスペシャル『時は立ちどまらない』だった。
そして栄えある大賞に選ばれたのが、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』である。
2013年4月から14年3月の1年間に放送された、ドラマだけでなくテレビ番組全体の中で、最高の評価を得たことになる。
『あまちゃん』に関しては、実際に多くの人が見ていたし、一種の社会現象となったことで、様々な論評がなされてきた。あらためて、それらを挙げる必要もないだろう。
ここでは、もう1本のドラマ、『時は立ちどまらない』に触れておきたいと思う。
●ドラマ『時は立ちどまらない』が描いた震災当事者の心情
放送されたのは、2014年2月22日(土)夜9時から。「テレビ朝日開局55周年記念」と銘打った、山田太一脚本のドラマスペシャルである。
いわゆる震災ドラマだが、薄っぺらな「絆」や「つながり」、安易な「涙」に満ちた「いい話」とは一線を画していた。
妻と孫を失った老人(橋爪功)が言う。援助される自分は「ありがとうと言うしかない」。だがそんな立場は「俺のせいか?」とも思う。そこにあるのは支援される側の心の負担の問題だ。
さらに被災地に暮しながら家も家族も無事だった男(中井貴一)は、何も失っていないことに罪悪感を抱いている。不公平だとさえ言い、「自分の無事が後ろめたいんです」と悩んでいる。
だがその一方で、支援する側として「そうそう他人の身になれるか」という反発心も押さえきれない。
ドラマは相反する思いが同居する当事者の心情を、巧みなストーリーとセリフで表現していた。震災から3年。これからが本当の意味での「絆」が問われる正念場だと教えてくれる秀作だ。
『あまちゃん』の成功を支えていたのが宮藤官九郎の脚本だったように、この作品もまた、山田太一ならではの脚本によって、見る者の気持ちを動かすドラマとなっていた。
ぜひ、ギャラクシー賞優秀賞の受賞記念として、再放送されることを望みたい。