8日の産経新聞に、「集団的自衛権」をめぐって報道各社が行った、世論調査の結果に関する記事が掲載されました。
この中で、解説しています。
集団的自衛権 割れた世論調査結果
朝日・毎日 質問に「枕詞」、回答に影響?
安倍晋三内閣が集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更を閣議決定した前後に行った全国紙の世論調査結果が出そろい、賛否が真っ二つに割れた。中立にみえる世論調査も、各社の意図で結果が左右される場合があるのだ。(村上智博)
結果が大きく割れたのは回答方法に原因がある。
産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)合同調査では、集団的自衛権についての設問で、行使容認に相当する「全面的に使えるようにすべきだ」と「必要最小限度で使えるようにすべきだ」の回答肢を用意し、合わせて63・7%が「行使容認」とした。
一方、他社はいずれも「賛成か反対か」という二者択一で回答を求めた。
読売新聞は、前回調査で産経と同様の回答肢で実施、「行使容認」は7割を超えた。今回は朝日新聞などと同様の二者択一方式で行い、「行使反対」が上回る結果になった。
ただ、読売は集団的自衛権の個別事例についての賛否も求め、紛争中の外国から避難する日本人を乗せた米輸送艦を自衛隊が防護できるようにすることには67%が「賛成」と回答した。読売は4日付朝刊で、世論の反応を「事例は理解、総論は慎重」と報じた。
一方、朝日と毎日新聞の質問には「これまで政府は憲法上、集団的自衛権を使うことはできないと解釈してきたが」という枕詞(まくらことば)が登場。解釈変更はタブーとの印象を与えかねない。
朝日は「安倍首相が国会の議論や国民の賛成を経て憲法改正をするのではなく、政府の解釈を変えたことを適切だと思うか」とも質問し、「適切だ」は18%にとどまった。
これに対し産経・FNNは、集団的自衛権の行使を「容認」と回答した人のみに限定した上で「必ずしも憲法改正の必要はない」と「当面、解釈変更で対応すればよい」の2種類を用意、足すと70・8%に達した。
また、全回答者の中での比率を計算すると、45・1%が解釈変更を容認したことになり、質問の方法でも結果が大きく変わることを示している。
質問の中に「答え」
上智大の碓井広義教授(メディア論)
「回答する人は、大局的に賛成か反対かと聞かれると心情的に答えてしまい、各論に入り卑近な具体例を挙げられると筋道立てて物事を考えるようになる。報道各社も、自分たちが欲しい回答を導き出そうとする傾向があり、質問の中に答えが既に含まれている場合がある。まさに質問が命。結果をすべてうのみにはせず、客観性が担保されているか、ウラを読まないといけない」
(産経新聞 2014.07.08)