10月改編を目前に、朝日新聞が好調の日本テレビに関する記事を掲載。
この中で、解説しています。
日テレ、視聴率DASH!!
今年の視聴率争いで、日本テレビがトップを快走している。1〜6月の視聴率3冠王(ビデオリサーチ調べ、関東地区)に輝き、好調を維持。10月改編で民放各局が新番組投入でてこ入れをはかるなか、ドラマ以外のほとんどの番組をそのまま継続する。突出した強さの秘密はどこにあるのか。
■日曜夜、企画育て定着
東京湾に浮かぶ人工の無人島「第二海堡(かいほ)」。9月初め、人気バラエティー「ザ!鉄腕!DASH!!」のロケでTOKIOの城島茂と山口達也が初上陸した。雑草の力強さに感動し、炎天下での釣りに没頭する。好奇心の赴くまま行動する2人をカメラが追う。
ロケは28日放送の3時間スペシャルの企画。島にテレビカメラが入ったのは初めてで、島の生物の生態調査の許可が国から下りた。
DASH!!は放送開始から19年。ゲストもなく、5人はめったにそろわない。それでも愛されるのはTOKIOとスタッフの雑談などから生まれる企画を楽しんで採り入れる懐の深さにあるようだ。城島も「僕らはがむしゃらにやっているだけ。スタッフと表裏一体で作り上げてきた」と言う。
島田総一郎プロデューサーは「5人がやりたいことをやるのが軸。変にテレビを意識せず、ありのままの姿を見せる形が今の視聴者に受けるのでは」と話す。
全日帯(午前6時〜翌午前0時)、ゴールデン帯(午後7〜10時)、プライム帯(同7〜11時)のいわゆる「視聴率3冠」で日テレは独走状態だ。全日帯は、昨年12月第2週から40週連続でトップを保つ。
好調の象徴がDASH!!を含む日曜夜の番組だ。「笑点」から始まり、「真相報道バンキシャ!」「世界の果てまでイッテQ!」「行列のできる法律相談所」「おしゃれイズム」と常時2ケタの高視聴率番組が続く。多彩な番組をそろえ、他局の追随を許さない。
10月期の改編率は全日帯で4・0%で、ほぼ変えていない。八木元・編成部担当部次長は「番組が当たっているということ。番組の枠は変えず、その中でいろんな企画を試す努力が、数字につながっているのではないか」と話す。
他局に比べ、視聴率の基礎をつくるレギュラーのバラエティー番組は日テレの安定度が抜群だ。13〜49歳の「コアターゲット」層の視聴習慣を定着させる戦略があたっているようだ。
上智大学の碓井広義教授(メディア論)はこうみる。
「際だつのは企画の重視。一度始めた企画を長く大事に育てる傾向がある。イッテQ!など大物タレントを起用せずとも企画力次第で人気を得た番組も多い。根底にあるのは作り手のこだわりや思い入れだ。
また、テレビは日常のメディアだからこそ目先の数字に振り回されず視聴習慣が根付くのを待つ。その姿勢が功を奏しているのでは」
(安斎耕一)
■他局、番組改編で対抗
「1強」の日テレに他局はどう対抗するのか。
「週末に勝てないと、全日でも勝てない」。フジテレビの大多亮常務は12日、定例会見で力を込めた。10月改編では日テレが圧倒的に強い日曜夜を崩すため、「重量級」の歌手、美輪明宏を起用したニュースバラエティーをぶつける。TBSも22年続いた「さんまのスーパーからくりTV」に終止符を打ち、家族で楽しめる衝撃映像番組を始めることにした。テレビ東京も午後10時台に、ジャニーズの5人が週替わりで登場する生放送をレギュラー化する。
テレビ朝日は深夜帯で五つ以上の新バラエティーをスタートさせる。深夜で企画を育て、視聴率が取れる強い番組をゴールデン帯に投入していく戦略だ。こうして生まれた出世頭の「坂上忍の成長マン!!」は10月から日曜午後6時半に移動。「日テレ崩し」の一翼を担うことが期待されている。
(中島耕太郎)
<朝日新聞夕刊 2014.09.20>