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HTB北海道テレビ「イチオシ!」 2106.11.25

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ゲストはファイターズの稲葉篤紀SCO



オクラホマ藤尾さん

ニュース担当の国井美佐アナ



今週の「高橋春花アナウンサー」




【気まぐれ写真館】 札幌 2016.11.25

HTB北海道テレビ「イチオシ!モーニング」 2106.11.26

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「イチオシ!モーニング」土曜日。

プロ野球のベストナインの話題では、日ハムの大谷選手が、投手と指名打者の2部門で同時受賞というので、岩本さんを中心に、大いに盛り上がりました。

スタジオに用意された、「えぞ但馬牛」のしゃぶしゃぶも、これまた賑やかに。



【気まぐれ写真館】 いつもの千歳市「柳ばし」にて・・・

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貝類が大好物の私に、特製「ほたてフライ定食」

書評した本: 『トヨトミの野望 小説・巨大自動車企業』ほか

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「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。

梶山三郎 
『トヨトミの野望 小説・巨大自動車企業』
講談社 1,836円

初めて目にする著者だが、覆面作家だ。実は現役の経済記者だという。梶山三郎という名前は、梶山季之と城山三郎のミックスではないかと勝手に想像している。

梶山には新車開発の裏側と産業スパイの活動を描いた出世作『黒の試走車』があり、城山にも本田技研の海外進出をモチーフにした小説『勇者は語らず』がある。ペンネームには、敬愛する先輩たちに負けない作品をという自負が込められているようだ。

物語の舞台は、世界トップクラスの自動車メーカーである「トヨトミ自動車」。主人公の武田剛平は、経理のプロとして仕事に徹したため、上層部から「融通の利かない危険人物」として嫌われ、左遷される。海外で実績を残した後、本社に復帰。やがて社長の地位を得ると、様々な改革を断行していく。しかし、「ビジネスは戦争だ」が口癖の武田を、創業家の逆襲が待っていた。

本書が実在の企業や人物をモデルとした小説であることは明白だ。「トヨトミ自動車」は、やはりあの巨大自動車会社なのだろう。希代のサラリーマン社長「武田剛平」と創業者の孫で後に社長となる「豊臣統一(とういち)」も著者は、実在の人物と読めるように書いている。

小説であり、架空の人物であることは承知しているが、それでも豊臣統一に対する著者の目は厳しい。卓越した経営能力と輝かしい血統の両方を持った人物など、そうはいない。

だが、国の経済全体にまで影響を及ぼす企業のトップとして、「この人物でいいのか」と思わせる危うさが統一にはあるのだ。トヨトミ自動車がリーマンショックにリコール運動と創業以来の危機に見舞われる中、社長自ら公聴会で答弁する場面など、読んでいて冷や汗が出る。

本書は自動車産業史ともいえる背景を踏まえ、著者が記者として得た情報と知見を投入した企業小説の力作だ。また、巨大企業を形作っているのも人であることを痛感させてくれる、リアルな人間ドラマである。


加藤典洋 『言葉の降る日』
岩波書店 2,160円

登場するのは太宰治、坂口安吾、三島由紀夫、吉本隆明、鶴見俊輔など。いずれも著者の核となる部分に影響を与えた文学者や思想家たちだ。彼らの言葉と行動が静かに提示しているものとは何なのか。「自分と世界のあいだをつなぐ手がかり」だと著者は言う。

(週刊新潮 2016年11月24日号)

本日から、没後10年「実相寺昭雄監督」上映会

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今日、11月29日は、師匠の一人である実相寺昭雄監督の命日。

今年は没後10年であり、年が明ければ生誕80年となります。

参加している「実相寺昭雄研究会」が主催の大規模な上映会も、今日から京都で始まります。

勝賀瀬(しょうがせ)重憲監督の新作ドキュメンタリー「KAN TOKU 実相寺昭雄」も初公開。

以下は、京都新聞の記事です。


「ウルトラ」シリーズ、故実相寺監督の足跡 
京都文博で上映
テレビの「ウルトラ」シリーズやエキセントリックな映像作品で知られ、今月没後10年を迎える映画監督実相寺昭雄さんの足跡を振り返る上映会「鬼才・実相寺昭雄 映像の世界 〜ウルトラマンから仏像まで」が29日から京都市中京区の京都文化博物館で始まる。

実相寺さんは1960年代に「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の演出を手掛け、日本の特撮映像の第一人者となった。

長編映画デビュー作「無常」(70年・ロカルノ国際映画祭グランプリ)をはじめ、人気幻想小説が原作の「帝都物語」など幅広い作品を発表、2006年に69歳で他界した。

上映会は、実相寺さんに約15年間師事した京都市出身の映画監督勝賀瀬(しょうがせ)重憲さん(48)らが企画した。

命日の29日と12月6〜11日の計7日間で26作品を上映。ウルトラマンシリーズで人気の高い「故郷は地球」「恐怖の宇宙線」などや、京都や周辺を舞台にした「無常」「曼陀羅(まんだら)」「哥(うた)」のATG三部作、62〜63年にTBSで放送され大島渚さんらが脚本を手掛けたドラマ「おかあさん」(6本)などを紹介する。


初日と最終日には、勝賀瀬さんが新作したドキュメンタリー「KAN TOKU 実相寺昭雄」も初上映される。期間中、親交のあった映画人のトークもある。

昼夜2部制(土日は3部制)。各千円。詳細は同博物館TEL075(222)0888。

「『ぴあ』を片手に町へ出よう」の時代があったのだ

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「『ぴあ』を片手に町へ出よう」の時代があったのだ
本屋さんやコンビニの雑誌コーナーで、ふと、『ぴあ』を探している自分に気づくことがある。あの映画情報誌が”休刊”してから、もう5年は経つというのに。

映画や演劇、コンサートなどの情報を、ネットから自在に入手できる時代になったことが、休刊の最大の要因だ。それは、わかっているけれど・・。

思えば、創刊された1972年当時、自分が観たい映画が「どこの映画館で、何時からの上映か」を知ることは、本当に大変だった。『ぴあ』は、一種の情報革命だったのだ。

掛尾良夫「『ぴあ』の時代」(小学館)は、この雑誌を生み出した矢内廣(創刊時は大学生)と仲間たちが、時代とどう向き合い、自分たちの事業を進めていったのかを辿るノンフィクションだ。

素人集団だった彼らが、手づくりのような雑誌を巨大ビジネスに育てていく過程は、企業物語であると同時に70年代の青春物語でもある。

また、『ぴあ』を足場に、森田芳光、大森一樹、長崎俊一など何人もの映画監督が世に出た。一つの雑誌が日本映画界に与えた影響は大きい。映画専門出版社の社員として、時代と並走してきた著者ならではの一冊だ。

【気まぐれ写真館】 新校舎、外側はほぼ完成 2016.11.29


『ドクターX』は、“2つの進化”で今期も絶好調

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日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、テレビ朝日「ドクターX~外科医・大門未知子~」について書きました。


「ドクターX~外科医・大門未知子~」
今期も絶好調の要因は何か
米倉涼子(41)主演の「ドクターX~外科医・大門未知子~」が、“失敗しない”どころか今期も絶好調だ。それを可能にしているのは何なのか。

ヒットシリーズが衰退する最大の原因は制作側の慢心だ。ストーリーはワンパターンとなり、出演者の緊張感が緩み、視聴者は飽き始める。シリーズ物こそ、現状維持どころか進化が必要なのだ。

今期、第一の進化は「登場人物」である。アクが強く、アンチもたくさんいる泉ピン子を副院長役に抜擢。“権力とビジネスの巨塔”と化した大学病院で、院長(西田敏行)との脂ぎった対決が展開されている。また、米国の病院からスーパードクターとして戻ってきた外科医・北野(滝藤賢一)の投入も有効だ。

さらに肝心の「物語」も進化している。先週の第7話では、当初、耳が聞こえない天才ピアニスト・七尾(武田真治)が患者かと思われた。だが、七尾は中途半端な聴力の回復よりも、自分の脳内に響くピアノの音を大事にしたいと手術を断る。大門はその過程で、七尾のアシスタント(知英)の脳腫瘍を見抜き、彼女の命を救っていくのだ。

この回の寺田敏雄をはじめとするベテラン脚本家たちが、「毎回、大門が手術に成功する」という大原則を守りつつ、より豊かな物語を模索している。その努力がある限り、「ドクターX」一座の興行は続行可能だ。

(日刊ゲンダイ 2016.11.30)


11月の北海道新聞「碓井広義の放送時評」

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秋ドラマで本領発揮
女優たちの代表作になるか!?
今期ドラマのナンバー1として、「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS-HBC)を挙げたい。津崎(星野源)とみくり(新垣結衣)は「契約結婚(事実婚)」だ。夫が雇用主で妻は従業員。「仕事としての結婚」という設定がこのドラマの核になっている。

みくりは大学院出だが、就職活動に失敗。家事代行のバイトで津崎と出会う。戸籍はそのままだが、住民票は提出した。業務・給料・休暇などを取り決め、家賃・食費・光熱費は折半。もちろん性的関係は契約外だ。回を追うごとに津崎とみのりの奇妙な同居生活から目が離せなくなっているが、それは2人が見せてくれる「誰かと暮らすこと」の面倒臭さと楽しさに、笑えるリアリティーとドキドキ感があるからだ。

みのりには自分が美人だという自覚がない。高学歴女子の知性も嫌みにならず、性格の良さと相まって天然風ユーモアへと昇華している。また、とらえどころのない男・津崎(星野が好演)にも、徐々に人間味が出てきた。とはいえ、相手に対する気持ちや意識が変われば結婚生活も危機を迎える。今後の注目は2人の“こころの距離感”だろう。

「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(日本テレビーSTV)の設定も絶妙だ。舞台は出版社だが、「編集部」ではなく「校閲部」である。開始前、多少の不安はあった。本や雑誌の原稿の誤字・脱字、事実誤認などをチェックする、重要ではあるが縁の下の力持ち的役割だからだ。

しかし始まってみれば、石原さとみのパワフルな演技がすべてを凌駕している。校閲の守備範囲を逸脱する仕事ぶりにリアリティーうんぬんの意見もあるが、過剰と純情がヒロインのキャラクターだ。近年の石原は松本潤や山下智久の相手役といった立場で、完全燃焼とは言えなかった。だが今回は、「鏡月」のCMで表現した大人の女性の可愛らしさも、「明治果汁グミ」のCMで見せたコメディエンヌの才能も、思う存分解放していい。まさに本領発揮である。

「逃げ恥」も、「地味スゴ」も、ヒロインの魅力を支えているのは、よく練られた脚本と自在な演出だ。たとえば「逃げ恥」では、「情熱大陸」や「サザエさん」、さらにNHKの深夜番組までがパロディーの素材となっている。また、「地味スゴ」では校閲した文字が画面上で乱舞する。作り手の遊び心だ。もしかしたらこの2作、新垣と石原、それぞれの“セカンドデビュー”ともいえる、代表作の1本になるかもしれない。

(北海道新聞「碓井広義の放送時評」 2016年11月07日)

黒澤明監督と黒澤映画を“読む”楽しみ

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書評サイト「シミルボン」に、以下のコラムを寄稿しました。

https://shimirubon.jp/columns/1676122


黒澤明監督と黒澤映画を“読む”楽しみ
「アップの多い映画だなあ」と何度も思った。DVDで、黒澤明監督の『わが青春に悔いなし』を見ていた時のことだ。

この映画では、お嬢さんだった原節子が生き方に目覚め、自分の意思で、あえて困難と思われる道を歩んでいく。その変化していく姿を見せる意味もあるのだろう。節目節目で、彼女の顔のアップが現れる。後期の黒澤作品では、アップのカットの印象が割と薄いので、よけい気になったのかもしれない。

樋口尚文『黒澤明の映画術』(筑摩書房)は、「技術が生み出す映画的なエモーションのみに切り口を絞る」というユニークな黒澤明論だ。その中に「顔と眼」の章があり、この作品での”顔のドラマ”にも言及していて、「顔そのものが持つ名状しがたい衝迫そのものがごろんと投げ出されている」とある。うーん、確かに。

『わが青春に悔いなし』で、原節子とともに、その顔が強い印象を残すのが、獄死した恋人(藤田進)の母である杉村春子だ。息子を思う気持ちは人一倍で、その息子が原因で受ける村八分の圧迫にも、じっと耐えていく。田んぼで汗を流す杉村の姿は、かつての「日本の母」そのものかもしれない。

中丸美繪『杉村春子 女優として女として』(文藝春秋)で確認すると、杉村はこの年、木下恵介監督の『大曾根家の朝(あした)』にも出ており、主人公である母・房子を演じている。ちなみに、1946(昭和21)年の『キネマ旬報』のベスト10では、『わが青春に悔いなし』が2位。1位が『大曾根家の朝』だった。

中丸さんによれば、かつて軍国の母を演じた杉村が、いわば「戦後民主主義映画の代表的作品」で評価され、これ以降、数多くの「日本の良心ともいえる、毅然とした理想の母親役」を演じていくことになるのだ。

一方、黒澤映画に欠かせない「男優」といえば、何といっても三船敏郎だろう。生涯出演本数は150本。中でも黒澤明監督とのコンビで生み出された名作の数々は、今も色あせることはない。

松田美智子『サムライ~評伝 三船敏郎』(文藝春秋)は、「世界のミフネ」と呼ばれた男の77年の軌跡を追った、初の本格的評伝である。

この本には、三船を身近に知る人たちの貴重な証言が多数収められている。殺陣師の宇仁寛三もその一人だ。黒澤監督の『用心棒』における壮絶な「十人斬り」は、三船の太刀さばきがあまりに速く、カメラで一気に追うことが出来なかった。宇仁は黒澤に相談して、カットを割ってもらったと言う。

三船の役作りは完璧で、撮影現場にも一番乗りする。スタッフへの気配りも忘れない愛すべきスターは、ついに世界進出も果たす。順風満帆だった三船に苦難が押し寄せるのは、自らの会社を興し、映画製作に乗り出してからだ。また女性問題や離婚騒動も栄光の歩みに影を落とした。本書はそんな三船の全体像に迫っていく。

上記以外にも、黒澤監督&黒澤映画に関する書籍は、関連本も含めたら、それこそ山のように出版されている。

そんな中で、読んでいてゾクゾクしてくるのが、橋本忍『複眼の映像~私と黒澤明』(文藝春秋)だ。橋本さんは、『羅生門』に始まり『生きる』『七人の侍』『蜘蛛巣城』『隠し砦の三悪人』などの共同脚本家として知られている。また、『砂の器』(野村芳太郎監督)などの脚本家・製作者でもある。

この本の最大の面白さは、「シナリオ作成」という、黒澤映画が生まれる”現場”を垣間見られることだ。黒澤の「テーマは理屈でなく、形の分かるもの、ハッキリ形の見えるもの」といったナマの言葉を知ることができるのも嬉しい。

黒澤監督作品はほとんど見ているが、もちろんリアルタイムで見たのは途中からだ。古い作品は、学生時代、都内にいくつもあった名画座での「黒澤明特集」で少しずつ”補填”していった。当時、銀座並木座でも何本かを見ている。

その並木座が配布していた無料のプログラム(懐かしい)のうち、1953年から56年までのものを収録した、復刻版銀座並木座ウィークリー編集委員会:編『銀座並木座ウイークリー』(三交社)という一冊がある。この本を開いてみると、54年に「黒澤明週間」、55年に「黒澤明選集」という特集をやっている。

たとえば「選集」では、2週間で「野良犬」「羅生門」「生きる」の3本を見ることができた。しかもスクリーンで! そう、やはり黒澤映画はスクリーンで見たいものだ。

そんな黒澤作品を映画館で、まさにリアルタイムで観てきた一人が、作家の小林信彦さんである。

小林信彦『黒澤明という時代』(文藝春秋)の中に、私の好きな『天国と地獄』について書かれた章がある。この第15章「文句なしに面白い『天国と地獄』」の途中で、小林さんが熊井啓監督の『世界の映画作家3 黒沢明』(キネマ旬報)での発言を引用している。

公開当時、『天国と地獄』での警察の扱いがおかしいと言われたようで、しかし熊井監督は「これはまったく見事なリアリズムだと思う」と述べているのだ。

続けて、「黒澤が官僚的な国家権力に癒着していくあらわれたみたいなことを、若手の批評家がいったけれども、ぼくは、よくぞ描いたと思う。警察とはそういうものだ。警察が自分で自分の交番を爆破することがあるんだから」。

そんな熊井監督の言葉をうけて、小林さんはこう書く。「これまた極論で、黒澤明には、そうした<国家権力>観はなかったと思う」。

いやあ、面白い。熊井監督は熊井監督らしく、小林さんもまた小林さんらしい(笑)。そして、映画『天国と地獄』を、また見直してみたくなる。

(シミルボン 2016.12.01)

4日の「TBSレビュー」で、ドラマ「赤めだか」について話します

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今週末、12月4日(日)の「TBSレビュー」に出演して、ドラマ「赤めだか」について話します。

早朝の番組ですので、録画予約などして(笑)、ぜひ、ご覧ください。


「TBSレビュー」
この番組は、TBSのみならず、放送全般が抱える問題について、幅広く取上げ、検証していく番組です。

テーマ
「赤めだか~なにが評価されたのか~」

出席者
上智大学教授 碓井広義さん

進行
TBSアナウンサー 秋沢淳子

放送日時
12月4日 日曜日 午前5時30分~6時

内容
「赤めだか」は、立川談春が
17歳で談志に弟子入りし、
数々の不条理に翻弄されながらも
若さと不断の努力で
1人前の落語家を目指していく
青春ドラマである。

ドラマの舞台は一般社会とは
大きくかけ離れた師弟の世界。
しかも単なる成功物語でも人情話でもない。

さらに常人には想像の及ばない
落語という芸の世界の
リアリズムが展開していく。

いま人々はテレビドラマに
こうした物語性を求めているのだろうか。

番組では、「赤めだか」を例に
なぜこのドラマは評価され
ある普遍性を持ち得たのか。
それはいまのテレビドラマに
何を問いかけるのか探っていく。

(TBS番組サイトより)

ドラマ「赤めだか」は、なにが評価されたのか!?

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4日(日)朝5時30分から放送の「TBSレビュー」


今年の「東京ドラマアウォード2016」単発ドラマ部門のグランプリ、「放送文化基金賞」ドラマ部門の最優秀賞などを受賞した、ドラマ「赤めだか」(TBS、2015年12月放送)。

原作は、立川談春さんが書いた自伝的エッセイです。ドラマでは、ある少年が談志師匠のもとに弟子入りし、落語家修業に励む日々が描かれていました。

先日、4日(日)放送予定の「TBSレビュー」の収録があり、ドラマ「赤めだか」について、以下のような話をしてきました。

●このドラマの何が評価されたのか

まず、実在の“天才落語家” 立川談志と、“人気落語家” 立川談春の2人の軌跡を、「物語」「ドラマ」というかたちで見せてくれたことです。

また、キャスティングの妙とも言うべき、ビートたけしさんと二宮和也さんが、それぞれ自分の個性を生かしながら、実在の人物を巧みに演じていて見応えがありました。

実在の人物をドラマで扱うのは、結構難しいのです。以前、プロデューサーとして、女優の夏目雅子さんを主人公にしたドラマ(「人間ドキュメント 夏目雅子物語」)を制作したことがあります。

主演は、オーディションで選んだ、当時まだ新人だった夏川結衣さんです。その時、夏川さんには、夏目雅子さんの映画やドラマを見ないようにしてもらいました。似せようとするのではなく、自分なりの雅子を演じて欲しかったのです。

ドラマが放送された直後、お元気だった雅子さんの母・小達スエさんが電話を下さって、「なぜ夏川さんは、うちの雅子の癖まで知ってるの?」と驚いていました。脚本をひたすら読み込んでいた夏川さんに、夏目雅子が降りてきたのかもしれません(笑)。

たけしさんの談志師匠も、二宮さんの談春さんも、それに近いことが起きていたのではないでしょうか。

●ドラマとしてどこが優れているのか

何より、間近で見た「立川談志」が描かれていることです。そして、ひとりの少年が落語家という特殊な職業人になっていく、その過程。

外からはうかがいしれない、落語界という、いわば<異界>の内側を垣間見ることができました。

特に、そこで展開される「人間模様」や、師匠である談志さんと、(原作者の)談春さんをはじめとする弟子たちとの「人間関係」がリアルに、そして生き生きと描かれています。

一般社会(家庭や会社)とは異なり、過剰なまでに濃密だったり、理不尽だったりする、「師匠と弟子=師弟」と呼ばれる関係が、とても興味深かったです。

中でも、香川照之さんが演じる志の輔さんが言った、「俺たちは談志を親に選んだ」という言葉が印象的です。師匠が弟子を決めるのではなく、弟子が勝手に弟子になる。この人が師匠だと決める。「ああ、そういうことか」と思いました。

同時に、「一生頭の上がらない存在を持っていることの幸せ」を、このドラマから感じました。

また、芸能評論家や放送局の人間など、原作にはなかった人物やエピソードの挿入によって、より奥行きのあるストーリーになっています。師弟物語、成長物語、教育物語、仕事物語、芸能物語など、いくつもの見方ができるドラマでした。

●演出として注目したこと

談志師匠という人物や、落語(落語界)というこのドラマの前提に関する配慮です。

立川談志を知っている人、ファン、知らない人、落語が好きな人、そうでもない人など、幅広い視聴者が、それぞれに楽しめるような工夫がしてありました。

その上で、談志師匠の人となりや、落語に対する思いなどが凝縮された、印象的な言葉やエピソードを各所に散りばめていました。

たとえば、「落語は人間の業(ごう)の肯定である」「俺は俺、弟子は弟子。それが立川流だ」といったセリフが、物語の中で納得できるものとして生きていました。

さらに、カーペンターズから忌野清志郎まで、音楽を有効に使って、常に80年代という時代の雰囲気を感じさせてくれたことも、よかったです。

●「赤めだか」は、いまのドラマになにを提起するのか

ドラマについて、以下のようなことを再認識させてくれました。

(1)「恋愛」や「事件」ばかりが、ドラマチックな物語ではないこと。
(2)描かれた人間、そして人間関係の中に、「ドラマ」があるかどうか。
(3)フィクションであっても、現実や実社会が、きちんと投影されていること。
(4)作り手の中に、登場人物たちへの“興味”、“共感”、“愛情”などがあること。

いまテレビドラマでは、複雑なもの、難解なものが敬遠される傾向があります。それは私たちの日常が、あまりに混沌と不条理の中にあるためかもしれません。

その意味で、不条理や、面倒臭さの価値を見直したくなるような物語が支持され、評価されたことは、ドラマの幅を広げることにつながると思います。





司会の秋沢淳子アナウンサー

書評した本: 原口隆行 『鉄道ミステリーの系譜』ほか

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「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

「鉄道」をキーワードにミステリーを読み解く
原口隆行 『鉄道ミステリーの系譜』
交通新聞社新書 864円

鉄道ミステリーとは鉄道を舞台にした、もしくは鉄道を主題にした推理小説の総称だ。原口隆行『鉄道ミステリーの系譜』にも登場する松本清張『点と線』、西村京太郎『寝台特急(ブルートレイン)殺人事件』などが思い浮かぶ。

海外物ではコナン・ドイル『消えた臨急』、本職が鉄道土木技師だったF・W・クロフツ『死の鉄路』、アガサ・クリスティ『オリエント急行の殺人』などを著者は挙げている。

しかし本書の功績は、一般的には知られていない逸品を発掘していることにある。大正期の甲賀三郎『急行十三時間』。戦前では浜尾四郎『途上の犯人』、海野十三『省線電車の射撃手』、大阪圭吉『とむらい機関車』。戦後の芝山倉平『電気機関車殺人事件』、土屋隆夫『夜行列車』などだ。周到に書かれた梗概に刺激され、読んでみたくなる作品が並んでいる。

優れた鉄道ミステリーは、作品が書かれた当時の駅や列車に関してはもちろん、世相や風俗、社会情勢をも反映させている。探偵小説から推理小説へと至る過程を踏まえた上で、内外の鉄道ミステリーを紹介していく本書は、初心者からマニアまでの興味に応える心強いガイドブックだ。

なお、このジャンルについては同社新書シリーズの中に、辻真先『鉄道ミステリ各駅停車―乗り鉄80年 書き鉄40年をふりかえる』がある。また松本清張作品にスポットを当てた、岡村直樹『「清張」を乗る―昭和30年代の鉄道シーンを探して』もお薦めだ。


集英社:編 
『週刊プレイボーイ創刊50周年記念出版「熱狂」』 
集英社 1,944円

大判の重たいムック本を開く。篠山紀信や立木義浩が撮ったグラビア。柴田錬三郎や赤塚不二夫の人生相談。勝新太郎とスティービー・ワンダーの対談まである。150人を超えるアイドルたちの顔と肢体の変化に、日本の半世紀が表出している。断固、永久保存版だ。

(2016年12月1日号)


笠井潔、押井守 『創造元年1968』
作品社 1,944円

ベトナム戦争のテト攻勢、フランス5月革命、日本の10・21国際反戦デー闘争。揺れる世界を、後に小説家と映画監督になる2人の若者が目撃していた。本書では当時を美化することなく、自身の創造活動とリンクさせながら語り合っている。貴重な同時代証言だ。

(2016年11月24日号)

毎日新聞で、「タイムシフト視聴」について解説

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「地味スゴ」「逃げ恥」ともフォロワー多く
テレビ番組を録画で見る「タイムシフト視聴」の実態がビデオリサーチの調査で明らかになり、番組の人気がリアルタイムの視聴率だけでははかれないことがわかってきた。調査結果を見たテレビ局関係者の間で注目されているのが、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)とタイムシフト視聴との関連性だ。番組の人気とSNSとの相関を探った。【兵頭和行】

タイムシフト視聴は、ビデオリサーチが10月3日から関東地区1都6県の900世帯を対象に調査を始めたもので、放送から7日(168時間)以内に録画して見た番組を測定している。導入理由は、デジタルビデオレコーダーの普及で録画再生で番組を見る習慣が視聴者の間で定着し、その絶対的な数が無視できないほど多くなったためだ。

録画視聴の多さは、同社が11月14日に発表したタイムシフト視聴率上位30番組のランキングで証明された。1位はTBSの「逃げるは恥だが役に立つ」(逃げ恥)で、タイムシフト視聴率は13.7%で視聴率は12.5%と、タイムシフト視聴がリアルタイム視聴を上回った。

2位は日本テレビの「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(地味スゴ)で、タイムシフト視聴率は10.8%と視聴率の11.2%に迫る勢いだ。両番組とも、視聴率にタイムシフト視聴率を足して重複分を除いた「総合視聴率」を算出すると、視聴率からほぼ倍増したことになる。

両番組に共通しているのは、公式SNSが充実しており、そのフォロワー数が多いことだ。「逃げ恥」は、主演の新垣結衣さんと星野源さんら出演者の撮影現場でのオフショットや、劇中で新垣さん演じる森山みくりがまかなう料理の写真を公開。料理レシピサイト「クックパッド」と提携してレシピも公開するなど、充実している。

「地味スゴ」は、主演の石原さとみさんが劇中で着用しているおしゃれな衣装をファッション雑誌風の写真で公開している。

フォロワー数は2日午後7時現在、「逃げ恥」がインスタグラム約38万6000人、ツイッター約41万9000人、「地味スゴ」がインスタグラム約30万4000人、ツイッター約11万5000人。

両ドラマともインスタグラムのフォロワー数では、タイムシフト視聴率上位10番組の中で1、2位となっており、ツイッターは「逃げ恥」が1位で、「地味スゴ」は「砂の塔 知りすぎた隣人」(TBS)▽「相棒」(テレビ朝日)▽「カインとアベル」(フジテレビ)に続く5位となっている。

ちなみにタイムシフト視聴率3位(9.5%)の「ドクターX」(テレビ朝日)は、もともとの視聴率が20.4%と高水準のため、タイムシフト視聴率も伸びたとみられ、ツイッターのフォロワー数は約1万6000人と低かった。

ソーシャルも使い分け

「逃げ恥」の峠田浩(たわだ・ゆたか)プロデューサーは以前、綾野剛さん主演のドラマ「コウノドリ」(昨年10~12月放送)を担当した。

その際、出演者手作りのフリップを使って「放送まであと○時間」という“カウントダウン”をツイッターで行い、好評を得たといい、「『楽しみになった』とか、『放送を忘れず見られた』とか、自分でカウントダウンの写真を送ってくれたり、視聴者とダイレクトに交流できた」と手応えを感じたという。

「逃げ恥」では媒体特性に応じ、「ツイッターはいろんな人と情報を共有したり、拡散してもらったりと情報的なものに。インスタグラムは料理など写真を中心に」と巧みに使い分けており、今回の結果については驚きながら「単純にうれしい」という。

SNSについて「TBSを見ていない人には番宣も届かない。ドラマを見ていただくために、普段テレビに接する機会の少ない方に届くような試み、接触を増やすための手立てとして大切にしている」という峠田プロデューサー。

「仕事していたり、お子さんを寝かしつけていたり、簡単に時間は動かすことができない。SNSで見て、感激してつぶやいたり、同じ時間を共有している感じが演出できれば。多くの人と共有したくなるドラマ作りができれば」と思いを明かしている。

ファッションで拡散

石原さんのファッション写真が「すごい拡散されている」というのが「地味スゴ」のインスタグラムだ。小田玲奈プロデューサーによると、キャストに石原さん、菅田将暉さん、本田翼さんなど若者に人気の俳優・女優をそろえ、ファッション好きの主人公を描くというストーリーから、相性がいいのではとインスタグラムに公式アカウントを設け、力を入れているという。

石原さんからもアイデアをもらって情報発信しているといい、「ツイッターは現場ではやっていることとか記事として面白いものが受けるが、インスタは(石原さん演じる主人公の)河野悦子の洋服とか、おしゃれな画像をさりげなく上げておけば、『調べたい』となる」といい、反応も「悦子のファッションと合わせたネイルにしてみたとか、活用してくれている」とその影響力の大きさに驚いているという。

タイムシフト視聴率とSNSとの関連性について聞くと「逆に知りたい。とりあえず録画して見るまでもなかった人が、番組終了後のインスタやツイッターの盛り上がりなどを見て、見てみようかとなっているのでは。後押しになっているかもしれない」と推測する。

タイムシフト視聴が多い現状について「ドラマはバラエティーと違い、『ちゃんと見よう』という意識が強いため、(録画して見ようと)後回しになる。ドラマをもっと気軽に見られるようにすることが重要かなと思う」とリアルタイム視聴に移行してもらうような方策を巡らせているという。

テレビ視聴の再評価が必要

上智大の碓井広義教授(メディア論)は「SNSの中心は若者たち。従来、若者たちは、時間とエネルギーをスマホに割くようになり、テレビは娯楽のトップの座から滑り落ちたといわれていたが、今まで見えなかった視聴スタイルが可視化されて、『実はドラマが若者たちに届いている』ことがこの調査で明らかになってきた」と指摘する。

「若い人にとって生活の中でスマホでのSNSコミュニケーションは不可欠だが、その際、盛り上がる大きなネタがテレビドラマ。スマホ片手に『このファッションかわいいわね』とか『今夜のドラマ面白かったね』と話題にし、拡散している。テレビの見られ方は変わってきており、そのことを再認識・再評価すべき時です」と問題提起している。

(毎日新聞 2016年12月4日)

幕張で、「テレビ取材の受け方」について・・・

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幕張の市町村アカデミーへ。

全国各地の自治体の広報担当の皆さんに、「メディアからの取材の受け方」について、話をさせていただいた。

わりと若い方たちが対象で、とても熱心。

こちらもつい、力が入ります。


終って、今度は自分が取材を受けました(笑)。

新聞から、「流行語大賞」について。

そして雑誌から、ドラマ「黒い十人の女」について。

どちらも、良いお題です。

産経新聞で、「小林麻央さんブログ」について解説

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小林麻央さんブログ、共感呼び読者数127万超
…専門家「言葉に勝る薬はない」
がん闘病、連日の更新
乳がんで闘病中のフリーアナウンサー、小林麻央さん(34)の公式ブログに、共感の輪が広がっている。病気への不安や家族への思いなどをありのままに書き込んだブログは、9月の開設から3カ月で読者数が127万人を突破。芸能人ブログの中でも断トツの数で、日々、増え続けている。読者からは、小林さんへの励ましの言葉とともに「一緒に頑張ろうね」といったコメントも相次ぎ、多くの人を力づけている。(豊田昌継)

海老蔵さんブログも上回る

〈力強く人生を歩んだ女性でありたいから子供たちにとって強い母でありたいからブログという手段で陰に隠れているそんな自分とお別れしようと決めました〉

「なりたい自分になる」と題して小林さんがブログ「KOKORO.」を始めたのは9月1日。夫の歌舞伎俳優、市川海老蔵さん(38)が小林さんの乳がんを公表して約3カ月後。テレビのワイドショーやスポーツ紙なども速報の形で大々的に報じた。翌2日にはかつらを装着した写真、同21日には病床の写真とともに、ほぼ連日のように更新している。

ブログを運営する「Ameba(アメーバ)」によると、登録読者数は12月4日午後7時現在で127万6739人。芸能界随一のブロガーとして知られる海老蔵さんの約88万をも上回る。1日あたりのアクセスランキングも、ほぼ毎日、芸能人部門1位だ。

昨3日には「はなまる」との題名で、温浴療法に取り組む水着姿の写真とともに、〈治療のためのスケジュールを予定通りクリアできるだけで“はなまる”です〉と喜びを記した。読者らの賛同を示す「いいね!」のクリック数は5万を超え、寄せられたコメントは1300件以上。

〈私も手術が終わりました。私も麻央さんと一緒に歩んでいます〉〈温浴療法は…体を温めるからダメだと思い込んでいました。勉強し直さなきゃあ!〉など、同じく闘病中とみられる人の声も多数寄せられている。

「言葉による免疫力」

ブログを通してがんと闘う人々に勇気を与え、共感を呼んだことが評価され、英公共放送BBCが選ぶ「今年の女性100人」にも選ばれた。

こうした現象に、がんの闘病に詳しい産婦人科医で日本笑い学会副会長の昇幹夫氏は「言葉による免疫力の効果は実証されている。医学的に厳しいといわれる状況でも、多くの応援をもらうことで病気克服につながった例はいくらでもある。それは応援する同様の患者も同じ。言葉に勝る薬はない」と指摘する。

一方、芸能界やメディア事情に詳しい上智大学の碓井広義教授(メディア論)は「ブログは毎日、記者会見を開いて情報を出すようなもので、それによって、外部が発信する自分に関するマイナス情報によるストレスから解放される面もある。思い切った決断が奏功していると思う」としたうえで、「芸能人は寝ている以外は、たとえブログでも他人に見せたい自分を演じている。でも、彼女は究極状態にある一人の人間として世間と同じフィールドに立っている。それが伝わってくるから多くの人から共感されるのではないか」と話している。

(産経新聞 2016.12.5)

定番ドラマにこそ必要な進化と挑戦

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北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。

今回は、「定番ドラマ」について書きました。


定番ドラマ 
飽きさせぬ進化と挑戦
定番ともいえるヒットシリーズが衰退する時、最大の要因は制作側の慢心にある。ストーリーはワンパターンとなり、出演者の緊張感が緩み、ドラマ作りは縮小再生産と化す。視聴者を飽きさせないためにも、シリーズ物にこそ進化と挑戦が必要なのだ。

今期、「ドクターX〜外科医・大門未知子」(テレビ朝日―HTB)における第一の進化は「登場人物」である。まず、アクが強く、アンチファンも多い泉ピン子を副院長役に抜擢した。“権力とビジネスの巨塔”となった大学病院で、院長(西田敏行)との脂ぎった対決が展開されている。また、米国からスーパードクターとして凱旋帰国した外科医、北野(滝藤賢一)の投入も功を奏した。

さらに肝心の「物語」も進化している。たとえば第7話では、当初、耳が聞こえない天才ピアニスト・七尾(武田真治)が患者かと思われた。しかし、七尾は中途半端な聴力の回復よりも、自分の脳内に響くピアノの音を大事にしたいと言って手術を断る。大門はその過程で七尾のアシスタント(知英)の脳腫瘍を見抜き、彼女の命を救っていくのだ。

この回の寺田敏雄をはじめとするベテラン脚本家たちが、毎回、「大門が手術に成功する」という大原則を守りながら、密度の高い物語を構築している。こうした努力がある限り、このシリーズの続行は可能だろう。

一方、単発ドラマでは、11月19日にNHK・BSプレミアムで放送された、横溝正史原作「獄門島」に見応えがあった。これまで何度も映像化され、何人もの俳優が探偵・金田一耕助に扮してきた。特に市川崑監督作品の石坂浩二、ドラマ版での古谷一行の印象が強い。だが今回、長谷川博己が演じた金田一に驚かされた。これまでとは全く異なる雰囲気だったからだ。石坂や古谷が見せた“飄々とした自由人”とは異なる、暗くて重たい、どこか鬱屈を抱えた青年がそこにいた。

背景には金田一の凄惨な戦争体験がある。南方の島での絶望的な戦い。膨大な死者。熱病と飢餓。引き揚げ船の中で金田一は戦友の最期をみとり、彼の故郷である獄門島を訪れたのだ。また事件そのものも、戦争がなかったら起きなかったであろう悲劇だった。

制作陣が目指したのは、戦争と敗戦を重低音とした“原作世界への回帰”であり、“新たな金田一像の創出”だ。長谷川博己は見事にその重責を果たした。次回作があるとすれば、ドラマの最後で暗示された「悪魔が来りて笛を吹く」だろうか。期待して待ちたい。

(北海道新聞「碓井広義の放送時評」 2016.12.05)


日米開戦から75年 合掌  2016.12.08

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ハワイ・オアフ島 パールハーバー


展示されている人間魚雷「回天」

ドラマ化された、柚月裕子の「佐方シリーズ」

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書評サイト「シミルボン」に、以下のレビューを寄稿しました。

https://shimirubon.jp/reviews/1676314

ドラマ化された、柚月裕子の「佐方シリーズ」
先週末、ドラマスペシャル『検事の本懐』(テレビ朝日系)が放送された。原作は柚月裕子の同名小説。主人公の米崎地方検察庁検事・佐方貞人を演じたのは上川隆也だ。

小説がドラマや映画として映像化された時、演じる役者が、自分のイメージとズレていることは多い。原作と映像作品は別物ではあるが、それでも違い過ぎると結構、落胆。時には怒り、だったりする。

上川隆也の佐方貞人は、今回で第3弾。すっかりハマリ役となってきた。継続は力なりだ。

ただ、これから原作小説を手に取って読もうとする時、人によっては、上川の顔がちらついて嫌だと思うかもしれない。そんなハタ迷惑も、映像化にはあるのだ。

というわけで、『検事の本懐』より前にドラマ化されている、柚月裕子の佐方シリーズ2冊を、ご紹介。もちろん、上川隆也さんの顔を思い浮かべる必要は、ありません(笑)。


柚月裕子『検事の死命』(宝島社)

『検事の本懐』で大藪春彦賞を受賞した著者。検事・佐方貞人が活躍する4つの中編が収められている。

このシリーズの第一の魅力は佐方のキャラクターにある。いわゆるヒーロータイプではない。じっくりと考え慎重に行動する。

また、人間を見る目が確かで、他者の心情の奥まで量ろうとする。弁護士だった亡き父の無念にからむ作品「業をおろす」などはその好例だ。

次に、検事としての矜持に拍手を送りたい。時に内外からの圧力を受けながら、「罪をまっとうに裁かせることが、己の仕事」だと言い切る。

その戦いぶりは、地元出身の大物代議士や地検幹部を相手に一歩も引かない「死命を賭ける」と「死命を決する」の2作で描かれている。上司や同僚など、脇役たちも実にいい味だ。


柚月裕子『最後の証人』(宝島社)

女性検察官・庄司真生の目から見て、その事件の真相は明らかだった。現場はホテルの一室。被害者は医師の妻である高瀬美津子だ。

彼女を刺殺した島津邦明は会社経営の傍ら陶芸教室を主宰していた。二人は不倫関係にあり、事件は愛憎のもつれが原因。負けるはずのない裁判だった。

島津側の弁護士は、元・検事の佐方貞人だ。仕事の依頼を受ける基準は一つ。事件が面白いかどうかだった。今回も、あらゆる要素が犯人であることを示唆する島津が、容疑を否認していることに興味を持ったのだ。

公判では真生の厳しい追及が続く。佐方は劣勢に次ぐ劣勢だが、なぜか真生は安心できない。その予感通り、やがて裁判は誰もが思いもしなかった方向へと進み始める。

「このミステリーがすごい!」大賞作家らしい、絶妙なストーリー展開の法廷サスペンスだ。
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