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Channel: 碓井広義ブログ
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思い当たって、ちょっと泣けるCM

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日経MJ(流通新聞)に連載しているコラム「CM裏表」。

今回は、東京ガスのCM、「家族の絆 やめてよ」編について書きました。

東京ガス 「家族の絆 やめてよ」編
父娘のやりとり
涙誘う「ズルさ」
ズルいCMだ。東京ガスの「家族の絆 やめてよ」編である。

娘(平田薫さん)の化粧を嫌がる。テレビに出る人を悪く言う。電話でペコペコするなど、この年代の男なら誰もが思い当たるエピソードがズルい。自分のことは棚に上げて、父親(映画『鉄男』『野火』の塚本晋也監督)を苦笑いで見つめてしまうからだ。

やがて娘の結婚が近づく。アルバムに貼られた、娘の幼い頃の写真をぼんやり眺める姿もズルいだろう。しかも娘に「寂しい?」と聞かれ、「ああ、寂しいなあ」と正直に答えるなんて。困った。すっかり、このオトーサンの味方だ。

そして、ふと気づく。娘は一度も「やめてよ」と声に出して言ってはいないのだ。すべて心の中だった。それをするのは、結婚式で父親がポツリと「幸せになれよ」と言った時だ。娘は目に涙を浮かべながら、「やめてよ、おとうさん」と初めて口にする。

やっぱりズルいよ、東京ガス。また泣けてくるじゃないか。

(日経MJ 2016.12.05)

「コピーフェイス」は栗山千秋の代表作になるか?

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日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、NHKドラマ10「コピーフェイス~消された私~」について書きました。


NHKドラマ10
「コピーフェイス~消された私~」
栗山千明の代表作となるかもしれない
TVリポーターのエイブリーは飛行機事故から生還するが、意識が戻った時、自分が別人になっていることを知る。キャロルという犠牲者と間違えられ、形成手術で彼女の顔にされてしまったのだ。上院議員候補の夫をもつキャロルは、かなりの悪妻だった。しかも、エイブリーは病床で聞いた「夫を殺す」という言葉を記憶していた……。

これは26年前に全米でベストセラーとなった、サンドラ・ブラウンの小説「私でない私」である。作中のTVリポーターを雑誌記者に、議員候補夫人を病院理事長夫人に置き換えたのが、NHKドラマ10「コピーフェイス~消された私~」だ。

記者の広沢和花(栗山千明=32)は美容外科クリニックの不正を暴こうと、理事長(佐藤隆太=36)の妻・芙有子(栗山千明)に接近していた。そして同乗した飛行機が墜落したのだ。当初、事故のショックで記憶を失っていたが、自分が記者であることを思い出す。その上で、芙有子の容姿と立場のまま、“潜入取材”を敢行中だ。

現在、夫は妻の性格の変貌をいぶかしく思いながらも、好ましく感じ始めている。一方、何かを探っている芙有子に目を光らせる者たちもいる。主演の栗山は、ヒロインが持つ“二面性”を演じ分けるという、なかなか難しい役どころに挑戦して大健闘。もしかしたら、彼女の代表作の一本となるかもしれない。

(日刊ゲンダイ 2016.12.07)

京都で、「実相寺昭雄監督・上映会」開催中 2016.12.09

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京都文化博物館で
私たち実相寺昭雄研究会と京都文化博物館が主催する上映会、「没後10年/生誕80年 鬼才・実相寺昭雄監督 映像の世界~ウルトラマンから仏像まで~」が開催されています。








9日(金)は、上映のほかに、映画評論家・樋口尚文さん、特別参加の俳優・堀内正美さんによるトークショーがありました。司会は研究会の正賀瀬重憲監督です。




樋口さんも、堀内さんも、監督をめぐる「ここだけの話」を披露してくださり、会場のコアな実相寺ファンは大いに盛り上がりました。

午後の上映は、1960年代にTBS社員として演出したドラマ、「あなたを呼ぶ声」「生きる」「さらばルイジアナ」の3本。

いずれも、「おかあさん」というレギュラー枠での異色作ばかりです。

「さらばルイジアナ」の主演女優は、放送の翌年に結婚することになる、原知佐子さん。そう思って観ると、また、いろんな感慨がありました(笑)。

原さんも、11日(日)のトークショーに特別参加してくださる予定です。


正賀瀬重憲監督

樋口尚文さん

堀内正美さん




産経新聞で、「勇者ヨシヒコ」のパロディについて解説

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「勇者ヨシヒコ」人気の秘訣 
ダシュウ村、ニッテレン、テベス…
絶妙パロディー
テレビ大阪系で放送中の深夜ドラマ「勇者ヨシヒコと導かれし七人」(毎週月曜深夜0時12分~)が話題を呼んでいる。録画を含めた「総合視聴率」が7%を超えることもあり、深夜番組としては異例の人気。「勇者が魔王を倒す」というゲームを題材にした冒険活劇だが、作中には他局の人気番組や話題の商品のパロディーがちりばめられている。表現を抑えつつある近年のテレビ番組の中では異彩を放ち、パロディーの成功例として注目されている。

11月7日深夜放送の第5話は、ツイッターなどのSNSを中心に大きな反響を呼んだ。主人公の勇者ヨシヒコ(山田孝之)らは「ダシュウ村」で、バンド演奏がしたいのに農作業ばかりしてしまう5人の青年と出合う。村の守り神「ニッテレン」が魔物に操られ、村人にのろいをかけたのだという。ヨシヒコたちは、かつて最強の神とされた「シエクスン」や、別の神「テベス」に助けを求めようとするが、頼りにはならないとの情報が…。

日本テレビ系のバラエティー番組「ザ!鉄腕!DASH!!」と出演者のグループ「TOKIO」のパロディーに始まり、民放テレビ局間の視聴率競争の現状を虚実ないまぜに描いた内容だ。

元テレビプロデューサーで上智大学教授の碓井広義氏(メディア論)は「余計な解説はなく、分かる人だけが楽しめるパロディー。中途半端ではなく、針が振り切れている面白さがあった」と評する。

番組はゲーム「ドラゴンクエスト」を開発したスクエア・エニックス社の協力でテレビ東京が制作。深夜ドラマを数多く手がけた、放送作家の福田雄一氏が監督、脚本を務めている。主役級には山田孝之をはじめ、宅麻伸、木南晴夏、ムロツヨシといった実力派を配置しているが、「低予算」のため、ハリボテのモンスターが登場し、大きなモンスターとの戦いは動きの少ないアニメーションで表現するなど全体にチープな作りなのが特徴だ。

ビデオリサーチによると、第6話までの平均視聴率(関東地区、毎週金曜深夜放送)は3・2~4%で推移。録画を含めた総合視聴率は7・4%(10月28日放送分)を記録することもあり「深夜番組としてはとても高く、十分に人気といえる」(ビデオリサーチ)水準に達している。

「果敢なパロディー」は枚挙にいとまがない。第3話では、1人で「異世界」を旅したヨシヒコが、ジャンプをしながら仲間のもとへ帰ってくる。全身がモザイク処理されているためはっきり見えないが、仲間のせりふで、ひげをたくわえ赤い帽子をかぶっていることが明らかにされる。任天堂の人気ゲーム「スーパーマリオブラザーズ」を彷彿とさせる姿だ。

任天堂は、「事前に企画の持ち込みなどはなかった」としながら、番組について「特にお話することはない」と静観の構え。同じ放送回ではカプコンのゲーム「モンスターハンター」のパロディーとおぼしき映像もあったが、カプコンは「『モンスターハンター』とは認識していない。コメントできない」。

第2話ではゾンビとなった村人たちを浄化する「プラズマクラスター」が登場。同名のイオン発生機を販売しているシャープの広報担当者は「企画部門、プロモーション部門の担当者とも話を聞いておらず、驚いていた」と明かす一方、「弊社商品がネガティブに扱われたわけではない。『歓迎』とは言えないが、社内では好意的に受け止められている」と説明する。「ネタ元」が目くじらを立てる気配はない。

前出の第5話では、フジテレビ(CX)を暗示する「シエクスン」には「蘇ると思うよ」「期待してます」などと声がかけられ、テベスには「日曜の夜に、まれにとんでもない力を発揮する(TBSの日曜劇場)」などとフォローも入っていた。

碓井氏は「悪意はなく、おとしめようとはしていない。パロディーを文化として楽しもうとしている」と分析。「テレビがまだまだ面白いからこそ、パロディーの題材になった。最近の『コンプライアンス』に縛られつつあるテレビの幅を広げる挑戦で、他局の作り手も奮起してほしい」とエールを送る。

当のテレビ東京はパロディーには言及せず、番組について「悪いイメージを与えないよう心がけて制作しています」とコメント。毒のある笑いを追求しつつ、ネタ元に嫌がられない絶妙なバランス感覚が、人気の秘訣かもしれない。

(産経新聞 2016.12.08)

京都・法然院~法話とお墓参り 2016.12.10

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「哲学の道」を歩いて、法然院へ

法然院





梶田真章・貫主の法話をうかがう

ありがとうございました




谷崎潤一郎の墓
「寂」の文字は自身が決めて、書いた

名作のふるさと「谷崎潤一郎の陰影礼賛」がデビュー作
撮影以来、33年ぶりのお墓参り

10日の「実相寺昭雄監督・上映会」

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会場の京都文化博物館

10日の「鬼才・実相寺昭雄監督 映像の世界~ウルトラマンから仏像まで~」では、「ウルトラマン 恐怖の宇宙線」と、ドキュメンタリー「KAN TOKU 実相寺昭雄」(監督:勝賀瀬重憲)を上映。

「恐怖の宇宙線」に子役として出演していた内野惣次郎さん、京都嵯峨芸術大学准教授の安齋レオさんのトークライブがありました。司会は勝賀瀬監督です。





内野さん   安齋さん





町で見かけたポスター

京都散歩 2016.12.10

京都での「実相寺昭雄監督・上映会」最終日 2016.12.11

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勝賀瀬重憲監督と



京都文化博物館での「実相寺昭雄監督・上映会」も、いよいよ最終日。

「ウルトラセブン 狙われた街」と、「ウルトラマンマックス 狙われない街」が上映されました。

「ウルトラセブン」を、しかも、あの名作「狙われた街」を、16ミリのフィルム上映で観るという贅沢。

この2作品には、40年近くをつなぐ、監督の強いメッセージが込められていました。

トークショーのMCは、すっかりお馴染みの勝賀瀬重憲監督。

ゲストは、撮影監督の中堀正夫さん。

そして、スペシャルゲストは、実相寺昭雄監督夫人で、女優の原知佐子さん。

中堀さんは監督との出会いを語り、また原さんは「ヘンな人だったわねえ」と(笑)。

監督が大好きだった京都で行われた上映会、名残惜しくも、お開きとなりました。





中堀正夫さん



原 知佐子さん





コンフィデンス「期待のニューカマー 女優編」で解説

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オリコンの専門誌「コンフィデンス」に、特集「期待のニューカマー」が掲載されました。

その「女優編」で解説しています。


特集 年末新人特集(後編)
「映画・ドラマ」で期待のニューカマーを紹介
2017年“ブレイクの芽”
碓井広義氏
 (上智大学文学部新聞学科教授/メディア論)

大学での研究・教育のかたわら、多くのコラムや放送時評などを連載する碓井広義教授。元テレビマンユニオンという経歴に裏打ちされた独自の視点からの論調や、新たな才能への確かな選球眼でも知られる。

大別するなら、日常とはかけ離れたある種のファンタジーとしての女優と、どこかに隙や素朴さを感じさせる女優、その2タイプが現代は求められている印象だという。

「圧倒的に少ないのは、誰が見ても美少女というタイプ。明らかに自分たちとは同じ土俵ではないけれど、別次元の存在として憧れてしまう。中条あやみさんなどが代表格です。

とにかく、画面に映るだけでゴージャス感が自然にこぼれ出る。ただ、それだけにドラマや映画での扱いが難しい面はあると思います。2017年には映画『チア☆ダン~』で重要な役どころでの出演がありますが、そんな普通の女子高生役で大丈夫なのかと心配してしまうほど。

このタイプでは、小松菜奈さんも注目しています。2人とも、来年はかなり話題になるでしょう」

ではもう一方の、“隙がある”タイプとは。

「全体に、何か物語を持っていそうな空気感がある女優さんと言い換えてもいいでしょう。あるいは地方色。決して都会的な洗練ではなく、地方にいながら自分を探して密かに努力している感じというか。単純にスターを目指すとかではなく、どこか屈折して秘めた思いがあるような。

そういう意味で、例えば森川葵さんは、女の子の集団の中にいても気になってしまう存在感があります。何かを背負っていて、奥行きを感じさせるような役柄ができるのは貴重。

石井杏奈さんも、映画『ソロモンの偽証』で見せてくれたような、どこか痛みを抱えた役がとても似合います。元気で可愛いけれど、決してそれだけではない。実年齢と重なりながら成長していて、来年が楽しみな女優さんです。

いずれにしろ、実人生はせいぜい20年かそこらしかないわけですから、実際に闇を抱えているかどうかの問題ではない。それを想像させる余地があるということで、そういう意味での隙間が重要ということです」

感情移入できる余白としての隙は、見ていてホッとできる親近感にも容易につながる。そうした要素が求められる背景には、閉塞した時代感があるのではないかと分析する。

「簡単に言えば、炎上社会ですよね。SNS疲れという言葉もありますが、息抜きしたい、癒されたいという無意識の傾向はもっと強まるのではないかと思っています。

完璧な美女や美少女というのは、近寄りがたく、どこか緊張を強いられる面がありますしね。もちろん、そういう美しさを求めるニーズも決して無くなりはしないわけですが」

他にも、注目する女優は多数。

「まだこれからという方も多いですし、無理にタイプ分類はせずに置きます。上白石萌音さんは今後の顔出し演技での世界観の作り方に期待。永野芽郁さんは正統派ですが、ちょっと二面性のある役どころなどにも挑戦してほしいかな。

八木莉可子さんもどう成長するのか非常に楽しみです。平祐奈さんは映画『ぼくが命をいただいた3日間』(2016年3月公開)での落ち着いた演技に感心して以来、注目していますね」

ちなみに個人的に応援しているという乃木坂46関連の人材では、女優転向宣言をして卒業した深川麻衣に期待しているとのこと。

「がんばってほしいです。これはすべての女優さんに共通して言えることですが、小さな役からコツコツと。基本的には、そこでどう埋没せずに輝けるか、それしかありませんから」

(コンフィデンス 2016年12月5日号)

若村麻由美「黒い十人の女」最終回の快演

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週刊新潮で、ドラマ「黒い十人の女」最終回での若村麻由美についてコメントしました。


「黒い十人の女」最終回
”神ってる”若村麻由美 渾身の演技
最後に総てをかっさらっていったのは若村麻由美(49)だった。9月末より日テレ系深夜枠で放送した「黒い十人の女」の最終回。

市川崑監督が、妻である和田夏十の脚本で1961年に映画化した。TVプロデューサーの男(船越英二)には妻(山本富士子)がいるが、不倫相手が9人(岸惠子、宮城まり子、中村玉緒、岸田今日子……)もいる。あるとき正妻と愛人たちとで男を殺す計画に……。

“2016年版”では、夫を映画版の息子である船越英一郎が演じ、脚本はお笑い芸人のバカリズムが担当。愛人たちには水野美紀、成海璃子、トリンドル玲奈といった深夜とは思えぬ豪華な配役が話題だったが、終わってみれば正妻・若村の迫力が他を圧倒したのだ。

夫の殺害を企てたものの、それを裏切ったため愛人9人に詰め寄られる妻・若村、“ふざけるなっ! そもそも人のモノに手ぇ出してるのはどっちなんだ! 散々ウチの旦那と不倫しといてどのツラ下げて私に謝れとか言ってるのっ!”と和服姿で利かせたドスがまたいい。

上智大学の碓井広義教授(メディア論)も感心する。

「笑わせつつもジワジワと批判精神を効かせるバカリズムの脚本もよかったし、愛人たちを演じた役者も活き活きとしていましたが、最終回は若村さんのワンマンショーで、総てさらっていきました」

なにせ無名塾を経て、朝ドラでヒロインを演じ、新興宗教団体教祖の正妻(その後、夫は死去)に納まった人である。神ってた。

(週刊新潮 2016年12月15日号)

聴いても、読んでも、JAZZは楽しい

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書評サイト「シミルボン」に、以下のコラムを寄稿しました。

https://shimirubon.jp/columns/1676447


聴いても、読んでも、JAZZは楽しい
基本的にモダンジャズが好きなので、ジャズの新譜をあまり買わない。

ブルーノートクラブ:編『ブルーノート100名盤』(平凡社新書)は、どこを開いても楽しい。

今年、創立77年を迎えた最強のジャズレーベル、ブルーノート。数多ある名盤の中から「私のベスト3」を選ぶ、という世界的なアンケートが行われ、この本は、その結果発表みたいな一冊だ。

で、一体何が選ばれたのか。

第1位 「ブルートレイン」 ジョン・コルトレーン
第2位 「サムシング・エルス」 キャノンボール・アダレイ
第3位 「クール・ストラッティン」 ソニー・クラーク
第4位 「モーニン」 アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ
第5位 「処女航海」 ハービー・ハンコック
第6位 「ヴィレッジ・ヴァンガードの夜」 ソニー・ロリンズ
第7位 「アウト・トウ・ランチ」 エリック・ドルフィー
第8位 「キャンディ」 リー・モーガン
第9位 「ソウル・ステーション」 ハンク・モブレー
第10位 「バードランドの夜 Vol.1」 アート・ブレイキー

以上がベスト10だ。

全部は持っていないけど、1位から6位、そして10位は手元にある。確かに、どれが1位でも2位でもおかしくないくらい、どれもいい。

一番聴くのは「サムシング・エルス」だ。

メンバーにマイルス・デイビスがいる。ハンク・ジョーンズがいる。アート・ブレイキーもいる。悪いわけがない。絶品の「枯葉」も、1958年の録音だから約60年も前になる。でも、古さなどとは無縁だ。

12位に入っている、バド・パウエル「ザ・シーン・チェンジズ」もよく聴く。この中の「クレオパトラの夢」が好きだ。

以前、「RYU’S BAR」という、作家の村上龍さんがホスト役の対談番組があった。そのタイトルテーマ曲が「クレオパトラの夢」だったのを思い出す。

現在、村上さんがやっている「カンブリア宮殿」も悪くないけど、経済がテーマだからね。ゲストが限定されるわけで。

その点、よかったなあ、「RYU’S BAR」。異種格闘技ともいうべき対談ぶりが刺激的だった。今やってたら、見るんだけどなあ。

まあ、これもまた、ひとつの”クレオパトラの夢”かもしれない。

『ブルーノート100名盤』もそうだが、見つけると、どうしても、手が伸びてしまうのが<ジャズ本>だ。

たとえば、小川隆夫『ジャズ楽屋噺~愛しきジャズマンたち』(東京キララ社)。

まず、小川さんの経歴自体が面白い。東京医科大を出ていて、ニューヨークに行って、向こうのジャズマンたちと交流して、評論を書き、インタビューをして、プロデュースもしてしまう。

この本もそうだが、何より、本物・実物と接してきたことが羨ましいし、書かれたものにも説得力がある。というか、とにかくジャズが好きなんだなあ、ということが伝わってくるのだ。

小川さんの本は結構本棚にある。

かなり厚手の『証言で綴る日本のジャズ』(駒草出版)。この本からは、原信夫、秋吉敏子、渡辺貞夫、山下洋輔といった、日本のジャズ界をリードしてきたミュージシャンの肉声が聴こえてくる。

また、彼らと併走してきた油井正一、相倉久人、湯川れい子など評論家の証言も収録されている。戦後日本のジャズが、生きた歴史として立ち現われてくる貴重な1冊だ。

そして、『感涙のJAZZライブ名盤113』(河出書房新社)。

「ジャズはライブに限る」を持論とする小川さんだからこそ、ライブ盤の価値を知っている。

この本には、1940年代から最近までの「個人的に好きなアルバム」が並べられている。カフェ・ボヘミア、ヴィレッジ・ヴァンガードなど伝説のライブ空間からの招待状だ。

それから、ときどきパラパラとページをめくるのが、後藤雅洋『ジャズ喫茶 四谷「いーぐる」の100枚』(集英社新書)である。

マイルス、コルトレーン、ビル・エヴァンスなど、自分の好きなアーティストのアルバムについて、「ふーん、こういう聴き方するんだ」「こんな意味があったのかあ」などと再発見できて嬉しくなる。聴いても、読んでも、JAZZは楽しい。

四谷にある大学に赴任することになり、いつ、そのドアを開ける時が来るだろうと、ずっと楽しみにしていたのが、後藤さんが店主のジャズ喫茶「いーぐる」だった。

初めて行った日のことは忘れられない。最初の新学期が始まって間もなくだから、ああ、あれは春だったんだね(by 吉田拓郎)。

まず、店の前で、「ああ、この看板、この文字だ」と、ひとしきり感慨にふけった。

階段を下りていく。地下ってのがいいよね。ジャズ喫茶は、なんてったって地下に限ります。

ドアを開け、店内に入る。おお、ジャズが流れている(当たり前だ)。これが噂の「いーぐる」の音。「いーぐる」のJBLの音か。
厨房というか、レジの奥というか、とにかくカウンターの向こうに、立ち働くおじさんの姿が見える。あれが後藤さんか。伝説のジャズ評論家にして、「いーぐる」店主の後藤雅洋なのか。

ちょっと無愛想で、かなり怖そうだ。あまり見ないようにしよう。

お客さんが点在している。奥へと進む。ほとんどスピーカーの前の席だ。木のテーブル。木の椅子。グリーン系の座席。

学生バイト風の青年に、コーヒーをお願いする。ああ、ピアノが気持ちいいなあ。誰だろう、まあ、誰でもいいや。「いーぐる」のJBLの前で聴いているんだから。

コーヒーがくる。やや苦めだ。結構です。ジャズ喫茶のコーヒーは苦くなくちゃ(笑)。

曲がサックスに変わったぞ。誰だろう、まあ、誰でもいいのだ、今日は。あの「いーぐる」に来たのだから。

大学から歩いてすぐのところに「いーぐる」があるなんて、福音以外の何ものでもない。クリスチャンじゃないけど、感謝だ。いや、ジャズの神様に感謝だ。

・・・というわけで、あの日から「いーぐる」に通うようになって、もう7年が過ぎた。

やっぱり、ジャズは聴くのも、読むのも楽しい。

“攻めのEテレ”を象徴する「ねほりんぱほりん」

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日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、Eテレ「ねほりんぱほりん」について書きました。


NHK・Eテレ「ねほりんぱほりん」
“攻めのEテレ”を象徴する1本
本当は聞いてみたいけどなかなか聞けない話を、本人や当事者に直接聞いちゃおうというのがEテレ「ねほりんぱほりん」(水曜23時)だ。それを可能にしているのが人形劇。ゲストはブタに、聞き手のYOU(52)と山里亮太(39)はモグラに変身している。

たとえば「元薬物中毒者」は、20歳で覚醒剤に手を出し、薬を打ちながら子育てをしてきた29歳の女性。「クラブに行けば簡単に手に入るんですよお」と語り、「吸引はどうやって?」と聞けば、「あぶりですね」とハキハキ答える。笑っちゃうほど赤裸々な告白だ。

先週の「痴漢冤罪経験者」の話もびっくりだった。登場したのは人のよさそうな(見た目はブタだけど)53歳の男性。通勤電車の中でいきなり、「こいつ、痴漢です!」と若い女性に騒がれ、「私じゃない!」と言い張るが警察署に連行されて3カ月も帰れなかった。

刑事からは「○ンタマ出したんだってな」と罵倒され、犯人扱い。結局、2年の歳月と600万円を裁判に費やした。その間に職を失い、家庭も限界状態に。無罪にはなったが人生は元に戻らない。いやあ、これはシンドイ。当事者自身が語るからこそのリアリティーだった。

この夏、障害者をダシにして感動を生み出そうとするテレビを「感動ポルノ」と呼び、違和感を表明した「バリバラ」と並んで、“攻めのEテレ”を象徴する1本だ。

(日刊ゲンダイ 2016.12.14)

書評した本: 亀和田 武 『60年代ポップ少年』ほか

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「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。 


亀和田 武 『60年代ポップ少年』
小学館 1782円

昭和24年生まれのコラムニストによる60年代回想記だ。小学6年生で聴いた「悲しき60才」にしびれ、以後、ポップ少年として歩む。ビートルズ、SF小説、学生運動、そして女の子。“当時の若者たち”と世代論でくくるわけにはいかない、青春のディテールがある。


町山智浩 
『最も危険なアメリカ映画~「國民の創生」 から
 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」まで』
集英社インターナショナル 1296円

映画は社会の合わせ鏡だ。テーマや内容は時代や社会を映し出している。たとえ、それが隠されたものであっても。著者は過去のアメリカ映画を検証し、トランプを次期大統領に選んだ国の本質に迫っていく。どの作品も見直したくなること必至。


本城雅人 『紙の城』
講談社 1728円

物語の舞台はIT企業に買収を仕掛けられた新聞社だ。動揺する幹部たち。迷走する親会社のテレビ局。だが、社会部デスクの安芸は仲間と共に戦うことを決める。新聞というメディアの現在とこれからを見据え、ノンフィクションかと思わせる臨場感に満ちた企業小説だ。


井川楊枝 『モザイクの向こう側』
双葉社 1512円

最近、「出演強要問題」で注目されたAV業界。その実情を探るノンフィクションだ。AV女優、男優、スカウトマン、制作者、メーカーなどへのインタビュー取材によって、グレーな危うさに満ちた向こう側の様子が見えてくる。動かしているのは人間の欲望だ。


渡辺将人 
『アメリカ政治の壁~利益と理念の狭間で』   
岩波新書 929円

オバマ政権は何を成し遂げ、何が出来なかったのか。また、その要因は何なのか。北大大学院准教授の著者は雇用、宗教、外交、移民などにメスを入れ、“米国的リベラル”の本質に迫る。本書が書かれたのは次期大統領が決まる以前だが、今こそ読むべき1冊となった。

(週刊新潮 2016年12月8日号)

4台の重戦車のようだった、Nスペ「ドラマ 東京裁判」

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日刊ゲンダイで、NHKスペシャル「ドラマ 東京裁判」について、コメントしました。

4夜連続の全4回は、まるで4台の重戦車のようでした。

制作8年
Nスペが放送する再現ドラマ
「東京裁判」の圧倒的見応え
平日なので録画しただけで見ていないサラリーマンも少なくないかもしれないが、見応えたっぷりの労作だ。12日から4夜連続で放送中のNHKスペシャル「ドラマ 東京裁判」(総合、22時25分~)は、8年の歳月をかけて世界各国の公文書館や関係者に取材を重ね完成させたもの。民放が決して真似できない重厚感が味わえると評判になっている。

視点も面白い。主人公は、日本の戦争指導者を裁くために集まった戦勝国11カ国の判事たち。自国の威信や歴史文化を背負ったエリートの人間模様や2年半に及んだ裁判の舞台裏に迫っている。

■人は戦争を裁けるか

上智大教授の碓井広義氏(メディア論)もこう評価する。

「単なるドキュメンタリーではなく、再現ドラマという手法を用いたことで、外側からではうかがい知れない判事らの心の葛藤やぶつかり合いなど、裁判のバックヤードを知ることができる。戦後70年という歳月を経たいま、今作を通じて『人は戦争を裁けるか』という根源的な疑問について向き合う、確認する意義は大いにあると思います」

制作には戦勝国だったカナダ、オランダの両国も加わっている。主な舞台は法廷や判事室で派手さはないが、当時の建築仕様をほぼ忠実に再現したセットや国内外でのロケを敢行。そこに当時の資料フィルムも組み合わせているのだが、違和感はなく、さながら映画のワンシーンを見ているかのようだ。

俳優陣も凄い。

「裁判長役のジョナサン・ハイドをはじめ、判事役のポール・フリーマン、マルセル・ヘンセマ、イルファン・カーンなどは、いずれも映画ファンだったらこたえられないキャスティング。ハリウッド映画の主役級の役者ではないのでピンとこない人もいるでしょうが、いずれも名作の脇を固めてきた演技派俳優です。豪判事なら豪州人、英判事なら英国人といった具合に、その国の俳優を起用しているのも、制作陣の作品に対する強いこだわりをうかがわせる。東京裁判は連合国側にとっても、自分たちの正義を示すという重要な意味を持っていた。それを日本の公共放送であるNHKがどう切り取るか。主張や描き方を注目したいところです」(映画批評家の前田有一氏)

初回放送の直後からSNS上では右派左派がそれぞれの観点で意見を書き込み、騒ぎになっている。祖父の岸信介がA級戦犯として裁かれた安倍首相の感想も聞いてみたいところだ。

(日刊ゲンダイ 2016.12.15)

「現代用語の基礎知識 2017」に寄稿

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お馴染みの「現代用語の基礎知識 2017」(自由国民社)が店頭に並んでいます。

今年、「放送」のページを書かせていただきました。

冒頭には、今年目立った「キャスター交代」の件を、そして用語のトップには「停波問題」を置きました。

用語は、新しいものを数多く投入し、また以前からある言葉も、全部新たに書いています。

ぜひ、書店で手に取ってみてください。

そうそう、文字が大きく、読みやすい、大型の「赤版」もあります。



没後10年 師匠「実相寺昭雄監督」のこと

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本のサイト「シミルボン」に、以下のコラムを寄稿しました。

https://shimirubon.jp/columns/1676658


没後10年 師匠「実相寺昭雄監督」のこと
師匠の一人である、実相寺昭雄監督が亡くなったのは2006年11月29日のことだ。69歳だった。

今年は没後10年となる。また、年が明ければ、生誕80年を迎える。

1960年代にTBSで放送された、「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「怪奇大作戦」などでの印象深い作品の数々で知られる実相寺監督。

長編映画デビュー作「無常」(70年、ロカルノ国際映画祭グランプリ)をはじめ、「帝都物語」などの映画、さらに音楽番組やオペラの演出などでもその才能を発揮した。

ウルトラマンからオペラまでの広がりと奥行き。テレビディレクター、映画監督、オペラ演出家としてはもちろん、小説、絵や書、そして監督が大好きだった鉄道に関しても、すべて一流の仕事を残している。

● 実相寺昭雄監督との出会い

私にとって、監督との最初の出会いは、テレビマンユニオンに参加した1981年だった。それ以来、2006年に監督が亡くなるまでの25年間、様々な形で師事してきた。

旅番組「遠くへ行きたい」(日本テレビ系)で監督が担当する回は、プロデューサーとしての自分の番組をそっちのけにして、ADを務めた。監督の代わりにロケハンを行い、一緒に神田、鎌倉、気仙沼、そして長崎などへ出かけたロケは、ひたすら楽しかった。

ロケ自体が、実相寺学校の移動教室でもあったのだ。現場でいつも驚かされるのは、創ろうとする映像のイメージが明確であることと、それを実現するための巧みな技術だった。

また、私がプロデュースした番組では、監督に何度もタイトル文字を書いていただいた。ひと目で監督の書とわかる筆文字。あの独特の字体が好きだった。

それから映画「帝都物語」も、原作者が、私が仲人をさせていただいた作家・荒俣宏さんだったこともあり、企画段階から公開まで、さまざまな思い出がある。第一に、荒俣さんと実相寺監督、それぞれ自分にとって大切な知り合いが、一つの作品で出会ったことが嬉しかった。

● ドラマ「波の盆」

そんな中で、私にとって最も大事な作品が、ドラマ「波の盆」である。

西武スペシャル「波の盆」が放送されたのは、1983年11月15日のことだ。

主人公は、明治期に日本からハワイへ渡った、日系移民一世の老人(笠智衆)。妻(加藤治子)を失った新盆の日に、日本からやって来た孫娘(石田えり)と出会うことで、起伏に満ちた自分たちの過去が甦ってくる。家族とは、民族とは、故郷とは何かを問う意欲作だった。

監督・実相寺昭雄、脚本・倉本聰、主演・笠智衆、音楽・武満徹。こんな豪華な座組みは、もう二度とできない。制作は日本テレビとテレビマンユニオンである。

また、この作品は、実相寺監督にとって17年ぶりとなるテレビドラマだった。マウイ島での長期ロケでは、光と影による大胆な構図など、磨き抜かれた“実相寺カット”を駆使しながら、丁寧に物語を構築していった。

アシスタント・プロデューサーとして、私がドラマの原点を学んだこの作品は、最終的に、この年の「芸術祭大賞」や「ATP大賞」を受賞するなど高い評価を得た。

● 所詮、死ぬまでのヒマツブシ

5年ほど前、川崎市市民ミュージアムで、「実相寺昭雄展~ウルトラマンからオペラ魔笛まで」が開催された。

「所詮、死ぬまでのヒマツブシ」と言いながら、だからこそ自らの美学に従って真剣に遊び抜いた監督。

会場に再現された書斎には、監督が愛用した「けろけろけろっぴ」の筆箱もあった。仕事を離れた時のお茶目な監督の姿が浮かんできた。

そうそう、監督のすごいところは、そのヒマツブシが様々なジャンル、多岐にわたり、しかもどれもが一流だったことだ。

展覧会場には、監督の絵てがみ、というか葉書に絵を描き、ひと言の文を添えたものがたくさん展示されていた。書家の島田正治先生とやりとりされたものだ。

実は私の手元にも、監督から届いた数十枚の絵てがみがあって、大切な宝物になっている。それを取出し、眺めていると、受け取った当時は気づかなかった、その時々の監督の気分や気持ちが、一枚の葉書に込められていたことが分かる。

● 実相寺昭雄研究会の発足

以下は、ドラマ「波の盆」の当時のスタッフ表だ。

•脚本:倉本 聡
•音楽:武満 徹
•制作:梅谷 茂
•プロデューサー:吉川正澄、山口 剛
•撮影:中堀正夫
•照明:牛場賢二
•美術:池谷仙克
•編集:浦岡敬一
•録音:奥山東宣宏
•効果:小森護雄
•記録:穴倉徳子
•監督:実相寺昭雄
•制作:日本テレビ、テレビマンユニオン

キャストを含め、もう何人もの方が亡くなっている。

実相寺監督をはじめ、主演の笠智衆さん、加藤治子さん、音楽の武満徹さん、ユニオン側のプロデューサー吉川さん、美術の池谷さん、編集の浦岡さん、効果の小森さん、VE(ビデオエンジニア)の小野さん、そして俳優の蟹江敬三さんや奥村公延さんも。

これは「波の盆」に限ったことではなく、様々なジャンルの実相寺作品に関わった人たちの多くが他界している。

そこで数年前、“実相寺組”として長く監督と過ごしてきた方々と共に、「実相寺昭雄研究会」を結成した。

活動の中心は、監督が遺した資料の整理・分類・分析と、監督と作品に関する聞き取り調査である。その成果は、研究会が運営する「実相寺昭雄オフィシャルサイト」などで、順次公開中だ。

http://jissoji.wixsite.com/jissoji-lab

● 京都での上映会、そして・・・

特に今年は没後10年ということで、11月から12月にかけて、京都で大規模な上映会を行った。実相寺昭雄研究会と京都文化博物館が共同で主催した、「鬼才・実相寺昭雄監督 映像の世界~ウルトラマンから仏像まで~」だ。

命日の11月29日と、12月6〜11日の計7日間に26作品を上映。

「ウルトラマン」シリーズで人気の高い「故郷は地球」「恐怖の宇宙線」などや、京都や周辺を舞台にした「無常」「曼陀羅(まんだら)」「哥(うた)」のATG三部作、さらに62〜63年にTBSで放送され、大島渚が脚本を手掛けたドラマ「おかあさん」(6本)などもフィルム上映した。

テレビを通じてリアルタイムで見た「ウルトラマン」や「おかあさん」を、フィルムで見るのは貴重な、また不思議な体験だった。そして、あらためて、“実相寺カット”と呼ばれる特異な映像の冴えやキレを実感することができた。

期間中、作品の上映だけでなく、トークライブも行った。

司会は研究会の勝賀瀬重憲監督(ドキュメンタリー「KAN TOKU 実相寺昭雄」)。ゲストには映画評論家の樋口尚文さん、「恐怖の宇宙線」に子役として出演していた内野惣次郎さん、京都嵯峨芸術大学准教授の安齋レオさんなどが並んだ。

加えて、実相寺監督夫人で女優の原知佐子さん、俳優の堀内正美さんの特別出演もあった。

会場には、東京など関西以外の地域からも、多くの方が来てくださった。実相寺監督とその作品は不滅だという気がして、やはり嬉しかった。

2017年は生誕80年。まだ検討中だが、特に、若い世代にも何かが伝わっていくような、そんな催しが出来たらいいなと思っている。

きっと監督も、遥かM78星雲あたりから、笑って見て下さっていることだろう。

(シミルボン 2016.12.18)


書評した本: テリー伊藤 『オレとテレビと片腕少女』ほか

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「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

テリー伊藤 『オレとテレビと片腕少女』
角川書店 1620円

著者がテレビという天職にたどり着くまでの自伝的ノンフィクションだ。月光仮面と長嶋茂雄に憧れた少年は、いかにして「テリー伊藤」となったのか。その秘密は生まれ育った築地と出会った女性たちにあった。中でも片腕の天使、マリンちゃんに圧倒される。


山下裕二、井浦 新
『日本美術応援団~今度は日本美術全集だ!』
小学館 1728円

完結した『日本美術全集』全20巻を基礎資料として、日本美術3万年の歴史を一気に振り返る。豊富な図版と簡潔な文章。伊藤若冲も岡本太郎も、その位置づけと意味が分かってくる。新たな応援団員はNHK『日曜美術館』の司会を務める異能の俳優・井浦新だ。


森下 達  
『怪獣から読む戦後ポピュラー・カルチャー
~特撮映画・SFジャンル形成史』
青弓社 3240円

『君の名は。』と並んで今年の映画界を席巻した『シン・ゴジラ』。62年前の『ゴジラ』公開から現在まで、「特撮映画」とその解釈はいかに変遷してきたのか。気鋭の研究者である著者は、SFという文化と交差させながら、「非政治性」をキーワードに解読していく。


古書山たかし 『怪書探訪』
東洋経済新報社 1944円

古書、それも奇書・珍書・怪書をめぐるエッセイ集である。トーマス・マンの署名本との奇縁。日本SF史上最大の怪作、栗田信『醗酵人間』への偏愛。ツチノコ本や雪男本の奥深さ。上質なユーモアは、著者を上場企業の役員にしておくのがモッタイナイと思わせる。

(週刊新潮 2016年12月15日号)



樋口尚文さん「実相寺昭雄 才気の伽藍」出版パーティー

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映画評論家の樋口尚文さん

撮影監督の中堀正夫さん

写真家の塩澤秀樹さん



樋口さんと、実相寺監督夫人で女優の原知佐子さん

原さん

TBSで実相寺監督と同期だった並木章さん

堀内正美さんが司会役で、出演者の皆さんが登壇 

志水季里子さん

風祭ゆきさん

樋口真嗣監督



風祭さんと

中堀さん、志水さん

樋口監督と

女子高生が勝負!異色の麻雀ドラマ「咲-Saki-」

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日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、深夜ドラマ「咲-Saki-」(TBS系)について書きました。


TBS系「咲-Saki-」
カロリー高し!
女子高生が卓を囲む異色の麻雀ドラマ
「咲-Saki-」(TBS系)は、小林立の麻雀漫画が原作のドラマだ。

主人公の宮永咲(浜辺美波)は、一見ごく普通のおとなしい女子高生だが、麻雀では誰にも負けない天才的な勝負勘と強運を発揮する。現在は高校の麻雀部に入ったばかり。それぞれ個性的な仲間たちと県大会、そして全国を目指すことになる。

一つ目の見どころは、「四暗刻」「嶺上開花」といった役が飛び出す対戦場面だ。麻雀を知っている人はもちろん、知らない人でもつい見入ってしまう緊迫感と高揚感がある。しかも雀士はセーラー服の女子高生。このギャップが面白い。

次に見るべき点は、麻雀という勝負を描くこのドラマが、出演者たちにとっても“勝負の場”になっていることだ。初主演の浜辺は「東宝シンデレラ」ニュージェネレーション賞の受賞者。麻雀部員にはSUPER☆GiRLSのメンバー・浅川梨奈、私立恵比寿中学の廣田あいか、元「ニコラ」専属モデルの古畑星夏らがいる。皆、ライバルだ。

また他校の麻雀部でも、人気モデルの武田玲奈、バラエティーでも見るようになった山地まり、AKB48の元メンバー・永尾まりやらが出番を待っている。にぎやかだ。

女子高生たちが雀卓を囲む異色の麻雀ドラマであるだけでなく、4校20人が競い合う、“動くグラビア大会”としてのカロリーもかなり高い。

(日刊ゲンダイ 2016.12.21)

書評した本: 『皇室をお護りせよ!~鎌田中将への密命』ほか

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「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

米軍で大隊長も務めた日本人 
男が戦後、果たした役割とは

鎌田 勇 
『皇室をお護りせよ!~鎌田中将への密命』 
ワック 1728円

80年代に、『戦後の検証~吉田茂とその時代』と題する、4夜連続放送のドキュメンタリー番組の制作に携わった。当時すでに高齢化していた元GHQの人々など、日米の当事者・関係者の証言を集め、占領期を立体的に捉え直す試みだった。

その制作過程でかなりの資料に当たったが、不十分だったようだ。恥ずかしながら、鎌田銓一・陸軍中将  のことを本書で初めて知った。明治29年生まれ。陸軍幼年学校、陸軍砲工学校、京都帝大などを経て渡米。イリノイ大、MITで学ぶ。さらに昭和8年からは日本軍将校のまま米軍の工兵連隊に入隊し、大隊長まで務めた。帰国後は陸軍省交通課長などを歴任。野戦鉄道司令官として、北京で終戦を迎えた。この特異なキャリアが、戦後の鎌田に大きな“役割”を担わせることになる。

昭和20年8月28日、厚木飛行場にマッカーサー司令部の先遣隊が到着した。降り立った隊長が出迎えの日本人たちに向かって言う。「ミスター・カマダはどこだ?」と。この人物こそ、米軍工兵連隊の大隊長時代の部下、テンチ大佐だった。

やがてマッカーサー元帥も乗り込んできて、GHQによる日本占領が本格的に開始される。鎌田はテンチ大佐との「工兵の絆」を生かし、米軍との調整で最前線に立つ。中華民国軍(国民党軍)の名古屋進駐が目前に迫った時、これを阻止すべくマッカーサーを動かしたのも鎌田だ。

いや、それ以上に驚いたのは、「政府の要となるべき終連は、あまり機能していなかった」という記述だ。吉田茂の要請で、終連(終戦連絡中央事務局)の参与に就任していたのは、あの白洲次郎である。前述の番組でも、占領期における白洲の活躍や武勇伝を紹介したが、鎌田の知られざる貢献はそれ以上かもしれない。特に皇室の保持に関してはそうだ。

実は鎌田の息子である著者。自宅でマッカーサーにピアノ演奏を聴かせた少年は、日本に一人しかいない。


東野圭吾 『恋のゴンドラ』
実業之日本社 1296円

スキー場を舞台とする連作短編集だ。表題作の主人公・広太は、同棲している美雪の目をかすめ、他の女性と泊りがけでスキー場へ。女性4人組とゴンドラに同乗するが、なんとその中に美雪がいた。7つの話が見事にリンクし、恋という名のサスペンスを堪能できる。

(週刊新潮 2016.12.22号)
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