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ORICON STYLEで、『アイムホーム』木村拓哉についてコメント

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【春ドラマ】木村拓哉、佐藤健が
“らしくない”役で高視聴率獲得
堺雅人主演『Dr.倫太郎』(日本テレビ系)、SMAP・木村拓哉主演『アイムホーム』(テレビ朝日系)、佐藤健主演『天皇の料理番』(TBS系)、斎藤工主演『医師たちの恋愛事情(仮)』(フジテレビ系)など、人気俳優が目白押しながら、全体的に視聴率が低調傾向の春ドラマ。その中でも視聴率男の面目躍如たる結果を出したのが、初回16.7%の『アイムホーム』(毎週木曜 後9:00)の木村と、同15.1%の『天皇の料理番』(毎週日曜 後9:00)の佐藤だ。この2作品に共通するのは、これが木村拓哉?、これが佐藤健?と、主演の二人が“らしくない”役を好演している点だ。

特に木村は、ジャニーズ俳優に厳しい『週刊文春』(文藝春秋)が、亀和田武氏のコラムで「出世から外れた四十男を自然に演じるキムタク」と絶賛していたり、“ジャニーズの最新情報やタブーを配信する”WEBサイト『サイゾーウーマン』でも「いつものキムタクドラマじゃない」といったネット上の声を拾い、「年相応でカッコいい!木村拓哉がパパ役として好評価」という記事を掲載。「何をやってもキムタク」と揶揄(やゆ)されたり、「二枚目役・ヒーロー役はもう年齢的にキツい」といった酷評から、役者として再評価、一皮むけることへの期待に変わっている。

『アイムホーム』は、ある事故によってこん睡状態に陥り、目が覚めたときには直近5年間の記憶が曖昧になってしまった家路久(木村)が、手元に残された10本の鍵の束を元に、その失ってしまった過去を探していく新感覚のミステリー・ホームドラマ。原作は石坂啓氏の漫画『アイ’ム ホーム』(小学館)。原作を生かしながら、10本の鍵の謎が1回ずつ解き明かされる凝った構成、ストーリーになっている。漫画ではあまり描写されていない“仕事”の部分をふくらませて、よりサラリーマンが共感しやすい人間模様も描くことで、原作とはまた違った面白さも出ている。

タブロイド判夕刊紙『日刊ゲンダイ』(日刊現代)にコラムを連載する、メディア論が専門の上智大学文学部新聞学科・碓井広義教授は、同ドラマを「年齢や性別などを超えて楽しめるドラマですが、特に仕事場でも家庭でも、さまざまな責任を背負っている“働き盛り”の世代にぜひ観てほしい」とすすめる。

木村についても「年齢相応の役柄に果敢に挑戦し、夫であり父でもあるという自身の経験も踏まえながら、きちんと造形している」と評価しており、「自分は元々家庭や職場でどんな人間だったのか。なぜ結婚し、離婚し、新たな家族を持ったのか。知りたい。でも、知るのが怖い。そんな不安定な立場と複雑な心境に陥った男を、木村さんが演技の幅を広げることによって誠実に演じている」と抑制の効いた演技を称賛した。

一方、『天皇の料理番』は、大正・昭和時代の宮内庁大膳頭を務めた秋山徳蔵の人生を描く。佐藤も、何をやっても長続きせず、考える前に体が動き、何かに夢中になるとほかが見えなくなってしまう主人公・秋山篤蔵役を好演。初回では、新婚1月の妻を置き去りにして、料理人になるため上京してしまう暴挙に出てもどこか憎めないキャラクターを、過剰すぎない演技で体現していた。

『アイムホーム』では木村が料理を作るシーンがあり、『天皇の料理番』は“運命のカツレツ”など、タイトルどおりに料理や食事シーンが頻出する。映像作品で料理を美味しそうにみせるのはヒットの鉄則だが、その点も期待できそうだ。

(ORICON STYLE 2015.04.30)

書評本: 『全電源喪失の記憶』ほか

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あらためて、“とんでもないこと”が起きていたのだと分かる。

『全電源喪失の記憶~証言・福島第1原発――1000日の真実』
(祥伝社)だ。

朝日新聞「吉田調書報道」の問題についても再認識。


以下、「週刊新潮」に書いた書評です。

工藤美代子 
『恋づくし~宇野千代伝』
中央公論新社 1836円

『生きて行く私』で知られる作家・宇野千代が、98歳で亡くなってから約20年。奔放な恋愛と旺盛な創作で彩られた生涯が甦る。尾崎士郎、東郷青児、北原武夫などとの愛憎遍歴の深層も、取材と資料に基づく伝記的小説だからこそ描けた。千代は生涯、一人の女だ。


外山滋比古
『思考力の方法 「聴く力」篇』
さくら舎 1512円

「思考する力を得たければ聴け」と著者は説く。対話は生きた言葉であり、最高の思索はそこから生まれる。これまでの「読む書く」重視の落とし穴を指摘し、「聴く話す」の効用を示す。耳で判断し、口でまとめ、思考に結びつける、新たな知の方法のヒント集。

(週刊新潮 2015.04.23号)


共同通信社原発事故取材班、高橋秀樹:編著
『全電源喪失の記憶~証言・福島第1原発――1000日の真実』
祥伝社  1836円

4年前のあの日、福島第1原発で何が起きたのか。東電関係者、政治家、自衛隊員、地域住民など100人を超す証言をもとに探っていく。そこにあるのは使命感と誇り、愛着や愛情、過信と傲慢、そして無理解の怖さだ。安全とは?原発とは?を自問させる。


宮沢章夫 
『長くなるのでまたにする。』
冬幻舎  1728円

「日常」がいかに非日常的かつ冒険的なものかを知る最新エッセイ集。著者は「シジミがいいと知る世代」のくくりに違和感を持ち、千円札以外は使えないコインパークに怒り、夜11時過ぎのファミレスの混雑に首を傾げる。いずれも思わず苦笑い。再読の罠に嵌る。


古賀義章 
『アット・オウム~向こう側から見た世界』
ポット出版  2376円

地下鉄サリン事件から20年。オウムを考える際、「信者の視点」は欠かせないと言う著者は事件当時から取材や撮影を続けてきた。信者たちの肉声から、麻原崇拝教としてのオウムや共同幻想が生まれる過程が明らかになる。さらに「終わってはいない」という事実も。


荒俣 宏 
『サイエンス異人伝~科学が残した「夢の痕跡」』
講談社ブルーバックス 1382円

ドイツとアメリカの科学博物館を巡りながら、20世紀という“科学と発明の時代” を解読する。ドイツが生んだカメラ、機関車、自動車、通信機。アメリカは電話、飛行機、ロケット、コンピュータ。かつてSFの中にしか存在しなかった道具はいかにして誕生したのか。

(週刊新潮 2015.04.30号)

NHK「クロ-ズアップ現代」調査報告書への違和感

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ビジネスジャーナルに連載している、碓井広義「ひとことでは言えない」。

今回は、NHK「クロ-ズアップ現代」調査報告書について書きました。


NHK捏造問題
頑なに「やらせ」を認めず、
「過剰な演出」強弁の理由 
信頼失った公共放送

●幕引きのための調査報告書

昨年5月に放送されたテレビ番組『クロ-ズアップ現代 追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人』内で多重債務者に出家の斡旋を行っているブローカーとして登場した男性が、「自分はブローカーではなく、記者の指示で“役柄”を演じた」と告発していた問題について、NHKは4月28日、調査報告書を公表した。

結論としては、「事実のねつ造につながる、いわゆる『やらせ』はなかったものの、裏付けがないままこの男性をブローカーと断定的に伝えたことは適切ではなかった」などとしている。NHKは番組を担当した記者の停職3カ月をはじめ、その上司や役員などの処分を決定。組織としての幕引きへと向かった格好だ。

●番組内容と制作過程の乖離

番組では、出家詐欺の当事者とされるブローカー・A氏との接触に成功し、彼の事務所でインタビューを行っていた。取材当日は偶然にも多重債務者・B氏がやって来て、出家詐欺を相談する様子を撮影することに成功。しかも、その映像は隣のビルからの隠し撮りという準備の良さだ。さらに事務所から出てきたB氏にも話を聞いており、本来であればスクープであった。

しかし実際は、B氏と記者が旧知の間柄で、A氏はB氏の知り合いだった。事務所もまたB氏が撮影用に調達したものでありニセの事務所だった。A氏は調査報告書が出た後も、自身がブローカーであるとは認めていない。

報告書は、基本的に記者の証言や主張を受け入れるかたちでまとめられている。記者がA氏をブローカーだと思い込んでいたこと、役柄や演技の指示はしていないという主張が認められ、取材・撮影の手法に問題はあったが、「事実のねつ造につながる、いわゆる『やらせ』はなかった」と判断しているのだ。

しかし、放送された内容と報告書にある制作過程を客観的に比べてみた時、「『やらせ』はなかった」という結論には納得できないものがある。

なぜなら、いわゆるやらせとは、ねつ造だけではなく、もっとヴァリエーションがある。実際よりも事実をオーバーに伝える「誇張」、事実を捻じ曲げる「歪曲」、あるものをなかったことにする「削除」、逆にないものをあるかのようにつくり上げる「ねつ造」が、いずれもやらせに該当する。だが、報告書はねつ造だけをやらせと認識しており、その狭い定義に該当しないということで、「『やらせ』はなかった」と言い張っているのだ。

上記に照らせば、この番組では取材側の都合に合わせた、いくつかのやらせが行われていた。それらを報告書は、やらせではなく「過剰な演出」と呼んでいる。いわば一種の「言い換え」である。

●やらせと過剰な演出の間

かつて、テレビ番組のやらせが大問題となったことが何度もあった。1985年、『アフタヌーンショー』(テレビ朝日系)で、制作側が仕組んだ暴行場面が放送された「やらせリンチ事件」。92年、『素敵にドキュメント 追跡!OL・女子大生の性24時』(朝日放送系)で、男性モデルと女性スタッフに一般のカップルを演じさせたケース。同じく92年、『NHKスペシャル 奥ヒマラヤ・禁断の王国ムスタン』での「やらせ高山病」シーン。その後も2007年に、『発掘!あるある大事典2』(関西テレビ系)でねつ造問題が起きている。いずれも番組自体が打ち切りになったり、テレビ局トップの責任が問われたりしてきた。

もしNHKが今回、『クロ現』におけるやらせを認めた場合、ダメージは相当大きいものになるだろう。なぜなら同番組はやらせとは無縁であるべき報道番組であり、NHKの看板番組の一つでもある。その影響を考えれば、是が非でも報告書からやらせという言葉を排除し、あくまで「過剰な演出」という着地を目指した可能性は十分にある。

筆者は『クロ現』という番組自体は高く評価している。社会的なテーマを掘り下げ、内容の質をキープしながらデイリーで伝え続けていることに敬意を表したい。それだけに、今回のような番組作りは残念であり、当事者である記者には憤りを感じる。番組のみならずNHKという公共放送、さらにテレビジャーナリズム全体に対する信頼感を大きく損なったからだ。

今回の報告書では、この記者が関わった他の番組でもB氏を登場させていることに触れている。しかし、その内容について詳細な検証は行っていない。あくまでも、この番組における過剰な演出を指摘することで終わっている。果たして、それでいいのか。

また、くだんのA氏も「今後は、BPO(放送倫理・番組向上機構)の手続きにおいて、私の名誉が回復されるよう努めていきます」というコメントを出している。もしもBPOがこの番組の審議入りを認めることになれば、この問題の本質に迫る“第2章”が始まるかもしれない。

(ビジネスジャーナル 2015.05.02)


碓井広義「ひとことでは言えない」
http://biz-journal.jp/series/cat271/

サンデー毎日で、朝ドラ「まれ」の松本来夢についてコメント

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発売中の「サンデー毎日」最新号に、朝ドラ「まれ」の特集記事が掲載されました。

この中で、コメントしています。


<記事タイトル>
NHK朝ドラ「まれ」を10倍楽しむ
目からウロコの4大トリビア

・記事は、土屋太鳳編、撮影現場編、能登編、朝ドラ史編の4ブロックで構成されています。

・私のコメントは、撮影現場編の中で、子役の松本来夢(らむ)についてです。

新たな才能も注目されている。主人公・希(まれ)の少女時代を演じた松本来夢(11)が、心に響く芝居で大物の予感を漂わせているという。

上智大文学部の碓井広義教授(メディア論)はこう絶賛する。

「来夢ちゃんはとても芸達者でうまい。とくに、大きな声で父親をなじる場面。まるで本当に泣いているようで、驚きました。NHKはいい子役を見つけるのが上手で、作品に見事にはまった迫真の演技を見せてくれました」

(サンデー毎日 2015.05.10-17)


・・・・記事全体は、ぜひ本誌をご覧ください。

【気まぐれ写真館】 信州で田植え

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美味!地元の宝「松田牛乳」

ぜひ、守っていただきたい!











”田んぼのポルシェ”にハコ乗り



黒四ダム工事の難所「破砕帯」とサイダーのコラボ!?

【気まぐれ写真館】 信州で会った花たち

産経新聞で、好調が続くNHK「朝ドラ」について解説

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NHK「朝ドラ」はなぜ見られるのか…
5作連続「20%超え」から浮かぶ
“勝利の方程式”
NHK連続テレビ小説(朝ドラ)が相変わらず好調だ。3月に放送終了した「マッサン」は全話平均視聴率21・1%を記録し、「あまちゃん」から5作連続で平均20%超を達成。バトンを受け取った「まれ」は雰囲気の異なる現代劇だが、連日20%超えをたたき出し、快調な滑り出しを見せている。朝ドラブームはいつまで続くのか。

 ■応援したくなる外国人ヒロイン

完結した「マッサン」は、ニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝と妻のリタをモデルに、日本初の国産ウイスキー作りに挑むマッサン(玉山鉄二)とエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)の半生を描いた物語。朝ドラ初の外国人ヒロイン起用が話題となり、国産ウイスキーにも注目が集まった。

上智大の碓井(うすい)広義教授(メディア論)は、「マッサン」について、こう振り返る。

「外国人ヒロインの起用が当たりました。たどたどしい日本語で朝ドラに挑戦するシャーロット自身の“はじめて物語”と、ドラマの役柄がうまくシンクロし、多くの視聴者を応援したくなる気持ちにさせた。また、夫婦の愛情物語と、ウイスキー作りをめぐる企業ドラマ的要素がバランスよく織り交ぜられていたのも良かったですね」

ドラマ放送に伴い、国産ウイスキー各メーカーが発売当時の味を再現した復刻版を売り出したり、北海道の余市をはじめとする舞台が地域振興に乗り出したりといった余波も。業界や地域の振興にも大きな影響を与えた「マッサン」は、視聴率ともども、成功したといえそうだ。

 ■「梅ちゃん先生」で20%台回復

朝ドラの平均視聴率は平成15年の「こころ」(21・3%)以降、伸び悩み、20%台を突破できない作品が続いていた。しかし、24年の「梅ちゃん先生」(20・7%)で18作ぶりに20%台へ回復すると、その後の「純と愛」(17・1%)で若干下がったものの、「あまちゃん」(20・6%)以降は堅調だ。

以来、「ごちそうさん」(22・3%)▽「花子とアン」(22・6%)▽「マッサン」(21・1%)-と推移。中でも「花子とアン」は、過去10年の朝ドラで最高の平均視聴率を記録し、話題となった。

 ■朝ドラヒットの“方程式”

朝ドラ好調の理由は各所で分析されているが、ヒットの“方程式”を大きくまとめると、以下のような点が挙げられるだろう。

(1)毎朝(日曜除く)15分間という放送形態が、「夜の1時間ドラマと比べて見やすい」と再評価されている。昼の再放送や、BSプレミアムでの前倒し放送・1週間分放送など、見逃しても追いつけるチャンスが多く、視聴習慣の定着につながっている。

(2)ヒロインを中心とする出演陣のキャスティングが絶妙。特に「いい味」を出す脇役が注目されるケースが増えており、「あまちゃん」の橋本愛をはじめ、朝ドラをきっかけにブレークした若手俳優が相次いでいる。また、「ごちそうさん」のキムラ緑子や「花子とアン」の吉田鋼太郎など、ベテランが脚光を浴びるケースも多い。

(3)朝ドラ放送直後の情報番組「あさイチ」でアナウンサーらが朝ドラの感想を語ったり、ドラマ出演者が「スタジオパークからこんにちは」などのトーク番組に出演したりすることで、番組の宣伝や盛り上がりを後押ししている。「マッサン」終盤では、「あさイチ」で有働由美子アナや出演者がドラマの展開に涙を流したことが注目を集めた。

(4)上記の理由から朝ドラをめぐる話題が継続的に発信され、インターネットのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でも拡散。知人らと感想を共有する面白さが生まれ、リアルタイム視聴につながるといういい循環が生じている。

こうした点に加え、碓井教授は「朝ドラの基本はヒロインや家族の成長物語。そうした朝ドラらしさをNHKが大事にしつつ、作品の作り方や見せ方を進化させてきたことが実を結んでいるのでは」と分析する。

「刑事ものや医療ものが代表的ですが、民放ドラマは、登場人物を特殊な状況に追い込む非日常を扱うことが多い。これに対し、朝ドラは一種の『ホームドラマ』。半年間をかけて、視聴者に『知っている家族』として定着させていくスタイルが、共感を呼んでいるのでしょう」

 ■「まれ」に漂う「あまちゃん」らしさ

それでは、好調なスタートを切った「まれ」は、どうだろう。

石川・能登地方を舞台に、「夢アレルギー」のヒロイン、希(まれ)が、ケーキ職人を目指して成長していく物語。序盤では、ヤマっ気のある父親に振り回される幼年期から高校時代をへて、輪島市役所に就職した。

碓井教授は「戦時中も扱った『花子とアン』や『マッサン』にいい意味での重さがあったのに対し、『まれ』は全体的に雰囲気が明るく、肩の力を抜いて見られる。ヒロインがはじめは『夢』に抵抗するというひとひねりがあって、物語が平板にならないよううまく工夫されている」と話す。

田中裕子や田中泯といった祖父母代わりをはじめとする周囲の配役に始まり、実力派からお笑い芸人まで緩急を付けた配役からは、最近の朝ドラらしさがにじむ。

碓井教授は、作中のユーモラスな演出や地方の風景や暮らしを強調していることについて、「あまちゃんから学んでいる感じがする」と指摘。「オープニングや語りも含め、隅々まで意識が行き届いていて、ぜいたく感がある」と称賛する。

「大河ドラマは心配になることもあるが、朝ドラは次の企画(*波瑠が主演の『あさが来た』)などを見ても、しばらく好調なのでは」と碓井教授。

すでに“独走態勢”に入ったというべきか。(三品貴志)

(産経新聞 2015.05.05)

「カルピスウォーター」CMは、黒島結菜主演の青春物語

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日経MJ(流通新聞)に連載しているコラム「CM裏表」。

今回は、カルピスウォーターの「海の近くで 初夏編」を取り上げました。


カルピス「カルピスウォーター」
いたずらな笑顔  この風景が青春
若手女優にとって、“登龍門”と呼ぶべきCMがある。

橋本愛さんや二階堂ふみさんを起用してきた「東京ガス」。堀北真希さん、北乃きいさんが光った「シーブリーズ」。そして長澤まさみさん、能年玲奈さんなどを輩出した、この「カルピスウォーター」だ。

今回、第12代目キャラクターとして登場したのは黒島結菜(ゆいな)さん。『アオイホノオ』『ごめんね青春!』といったドラマで注目された短髪美少女だ。

特に『ごめんね・・』で演じた生徒会長役が印象に残る。自分が転校することを仲間に隠しながら、文化祭の準備に没頭する姿が何ともいじらしかった。

このCMの舞台は桟橋だ。カルピスウォーターを飲んだ後、隣に座った男の子に「何見てんの?」と、いたずらっぽい笑顔を向ける。

そんなこと言われたって困る。こんな少女がいたら誰だって見ちゃうだろう。

そして、この日の風景を一生忘れない。それが青春。

(日経MJ 2015.05.04)

【気まぐれ写真館】 多摩川夕景

映画『セッション』に、スタンディング・オベーション

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ずっと気になっていた映画『セッション』を、ようやく観ることができた。

名門音楽学校へと入学し、世界に通用するジャズドラマーになろうと決意するニーマン(マイルズ・テラー)。そんな彼を待ち受けていたのは、鬼教師として名をはせるフレッチャー(J・K・シモンズ)だった。ひたすら罵声を浴びせ、完璧な演奏を引き出すためには暴力をも辞さない彼におののきながらも、その指導に必死に食らい付いていくニーマン。だが、フレッチャーのレッスンは次第に狂気じみたものへと変化していく。

なんとまあ、すさまじい映画が出てきたもんだ。

ジャズファンとしては、セッションというタイトルから勝手な想像はしていたけど、しっかり裏切られました。

おそるべし、デイミアン・チャゼル監督。

名門音楽学校の生徒と教師のお話、だなんてノンビリしたことは言っていられない。

千本ノックの鬼特訓みたいなハードプレイの連続なのだ。



圧倒的な存在感を示すのは、やはりJ・K・シモンズ。

この教師の情熱(狂気?)とエネルギーはどこから来ているんだろう。

ジャズの神様の采配?


この映画、実は映像もスゴイのだ。

たとえば、ニーマンとフレッチャー、それぞれの顔のアップが行き来するカット。

並みのパン(カメラの首を振る)ではない。どうやって撮ってるんだろうと思うほど高速なのだ。

ビュンビュンなんてものじゃなく、ピピッてな速さだ。

それでいて、2人のアップはピタリと決まっている。


「どうなるんだろう」「どうするんだろう」と、サスペンス映画を見ているような心臓ドキドキが続く。たたみかけるようにジャスも次々と流れる。

どのシーンも気が抜けないというか、緊張感持続のままだなあと思ったら、何とすべてのシーンに主人公が出ていたらしい。それって何気にすごい脚本であり演出だ。

うーん、もう一度、観たくなってきた。

チャーリー・パーカーも聴き直したいなあ。



久しぶりのサントラも入手してしまった

2015年春 ひと味違う「注目CM」はこれだ!

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テレビ番組もそうですが、CMは時代を映す鏡です。その時どきの世相、流行、社会現象、そして人間模様までをどこかに反映させています。 この春、流されているCMの中から、注目作を選んでみました。


●ソフトバンクモバイル 白戸家「お父さん回想する」編

映画『スター・ウォーズ エピソードⅣ/新たなる希望』を、有楽町の日劇で見たのは全米公開翌年の1978年。

それから約20年後に作られたのが『エピソードⅠ/ファントム・メナス』だ。後にダース・ベイダーとなるアナキン・スカイウォーカーの少年時代を描いた、後日談ならぬ衝撃の“前日談”だった。

このCMで驚いたのは、お父さん(声・北大路欣也さん)とお母さん(樋口可南子さん)が高校の同級生で、当時の“見た目”は染谷将太さんと広瀬すずさんだったことだ。特に今年の目玉、超新星アイドルである広瀬さんの起用はお見事。

また、染谷さんが上戸彩さんにそっくりな保健室の先生(上戸さんの二役)にトキメクのも、後年のお父さんを彷彿とさせて苦笑いだ。

今後、染谷さんと広瀬さん、二人の高校時代を舞台に、回想の枠を超えた前日談の物語が続々と展開されてもおかしくない。いや、ぜひ見てみたいものだ。


●ワイモバイル「ふてネコ お風呂で鼻歌」編

猫は気まぐれだ。素直に人の言うことをきかない。時には人間より偉そうに見える。ちょっとコシャクな存在だ。

このCMもそうだ。湯船につかりながらの鼻歌。小坂明子さんの名曲「あなた」の替え歌だが、「家を建てたニャら光とスマホ~」と宣伝も忘れない。

またカフェ編ではカウンターに肘をつき、「ワイモバイルのスマホでにゃんにゃん言ってみませんか」などとハードボイルド風につぶやいたりする。

約30年前、「なめんなよ」で大ヒットした“なめ猫”がいた。しかし、その暴走族風の学ランなどは、「人間に着せられちゃいました」という印象が強い。

その点、ふてネコは自然体だ。誰にも縛られず、また、こびない態度が気持ちいい。自らの哲学と価値観に生きる一匹オオカミ、いや一匹ネコのようではないか。

ちなみに、なめ猫の声はスタッフだという。声質もトーンも猫のふてくされぶりにぴったりで、演技賞ものだ。


●カルピスウォーター「海の近くで 初夏」編

若手女優にとって、“登龍門”と呼ぶべきCMがある。

橋本愛さんや二階堂ふみさんを起用してきた「東京ガス」。堀北真希さん、北乃きいさんが光った「シーブリーズ」。そして長澤まさみさん、能年玲奈さんなどを輩出した、この「カルピスウォーター」だ。

今回、第12代目キャラクターとして登場したのは黒島結菜(ゆいな)さん。『アオイホノオ』『ごめんね青春!』といったドラマで注目された短髪美少女だ。

特に『ごめんね・・』で演じた生徒会長役が印象に残る。自分が転校することを仲間に隠しながら、文化祭の準備に没頭する姿が何ともいじらしかった。

このCMの舞台は桟橋だ。カルピスウォーターを飲んだ後、隣に座った男の子に「何見てんの?」と、いたずらっぽい笑顔を向ける。

そんなこと言われたって困る。こんな少女がいたら誰だって見ちゃうだろう。

そして、この日の風景を一生忘れない。・・・・それが青春。



NHK『クロ-ズアップ現代』問題の深層

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北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。

今回は、NHK『クロ-ズアップ現代』やらせ疑惑問題について書きました。


NHK『クロ-ズアップ現代』問題の深層
トップの責任回避へ やらせ否定
4月28日、NHKが『クロ-ズアップ現代』に関する調査報告書を公表した。昨年5月放送の「追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」の回に、多重債務者に出家の斡旋を行うブローカーとして登場した男性が、「自分はブローカーではなく、記者の指示で演じた」と告発したことを受けての調査だった。

報告書は、「事実のねつ造につながる、いわゆる『やらせ』はなかったものの、裏付けがないままこの男性をブローカーと断定的に伝えたことは適切ではなかった」と述べている。

番組では、出家詐欺のブローカー(A氏)に接触し、彼の事務所でインタビューを行っていた。また、相談に来た多重債務者(B氏)とのやりとりを見せた上で、事務所を出たB氏を追いかけて話を聞いている。

だが、実際にはB氏と記者が旧知の間柄で、A氏はB氏の知り合いだった。事務所もB氏が撮影用に調達したもので、A氏の活動拠点ではなかった。A氏は報告書が出た後も、自身がブローカーであることを否定している。

放送内容と制作過程を比べると、やらせはなかったという結論は納得できない。なぜなら、やらせは「ねつ造」だけではないからだ。

実際よりオーバーに伝える「誇張」。事実を捻じ曲げる「歪曲」。あるものをなかったことにする「削除」。逆に、ないものをあるかのように見せる「ねつ造」。これらはいずれもやらせである。

報告書は、なぜか「ねつ造」だけをやらせとしており、その狭い定義に該当しないことを理由に、「やらせはなかった」と言っているのだ。

この番組では取材側の都合に合わせる形で、いくつかのやらせが行われていたが、報告書では、それらを「過剰演出」と呼んでいる。一種の言い換えであり、すり替えである。

『クロ-ズアップ現代』は、やらせとは無縁であるべき報道番組であり、NHKの看板番組の一つだ。組織のトップにまで責任が及ぶ可能性のある「やらせ」という言葉を、是が非でも回避したかったのではないか。

社会的なテーマに取り組み、地道に伝え続けてきた『クロ-ズアップ現代』だからこそ、今回のような番組作りは残念であり、当事者の記者には憤りを覚える。NHKのみならず、放送ジャーナリズム全体に対する信頼感を大きく損なったからだ。

また、それ以上に問題なのは、メディアコントロールを強めている現政権に、放送への介入を許す口実を与えたことである。自らの首を絞めるような愚挙をこれ以上繰り返してはならない。

(北海道新聞 2015.05.11)

佐藤健の愛嬌、可愛げが生きる「天皇の料理番」

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日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今週は、TBS日曜劇場「天皇の料理番」について書きました。


TBS系「天皇の料理番」
佐藤の独特の愛嬌、可愛げが生きている
よくこの企画を思いついたものだ。物語の主人公は、大正・昭和時代に宮内省大膳頭を務めた実在の人物、秋山徳蔵(ドラマでは篤蔵)。原作は36年前に出版された杉森久英の小説である。

TBSはこれまでに2度、ドラマ化している。1980年に篤蔵を演じたのは、後に「チューボーですよ!」に出演することになる堺正章。93年版は高嶋政伸だった。

そして今回が佐藤健だ。「仮面ライダー電王」(テレビ朝日系)やNHK大河ドラマ「龍馬伝」の岡田以蔵役で注目され、昨年は刑事ドラマ「ビター・ブラッド」(フジ)で主役を務めていた。

とはいえ、お世辞にも演技派とか芸達者といったタイプではない。だが、佐藤には独特の愛嬌というか可愛げがあり、このドラマではそれがうまく生かされている。

婿養子に入った商家を飛び出し、勝手に東京で料理人修業に励む篤蔵。厨房の掃除と食器洗いに追われながらも、コック長 (「深夜食堂」の小林薫、好演) やスタッフたちから何とか学び取ろうとしている。その必死な姿は見る者の共感を呼ぶ。

全体として安心して見ていられるのは、実績のある作品のリメイクだからだ。その一方で、先の読めないドキドキ感は希薄となる。後は、ふとした瞬間に「この主人公、アホなのか」と笑わせる、佐藤の突拍子もない熱演に期待したい。

(日刊ゲンダイ 2015.05.12)

産経新聞で、朝ドラ「まれ」についてコメント

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産経新聞で、NHK朝ドラ「まれ」についてコメントしました。

【ZOOM】
堅調「まれ」 横浜編スタート 
ゆるさに好感 「あまちゃん」継承?
放送中のNHK連続テレビ小説「まれ」が堅調な人気を示している。

一昨年の「あまちゃん」から続く朝ドラブームの流れをうまく引き継ぎ、これまで視聴率は20%前後をキープ。ヒロインの希(まれ)役を演じる土屋太鳳(たお)や脇を固める俳優陣の熱演も光る。今週から「横浜編」に突入した「まれ」の堅調の理由を探った。(本間英士)

「まれ」は、石川・能登地方や横浜を舞台に、希がパティシエ(ケーキ職人)を目指して成長していく物語。幼い頃、ヤマっ気のある父親、徹(大泉洋)に振り回された経験から「夢アレルギー」になった希は、いったんは輪島市役所に就職するものの、祖母のパティシエ、幸枝(草笛光子)が作るケーキとケーキが持つ「力」に感動し、本来の夢であるパティシエへの道を選ぶ。

「時代もの」反動?!

「ごちそうさん」「花子とアン」「マッサン」と3作連続で「時代もの」が続いた最近の朝ドラ。今作は久しぶりの現代劇だ。

コラムニストの桧山珠美さんは「3作品時代ものが続いた“反動”か、今回の朝ドラには全体的に良い意味で『ゆるさ』がある。青空や海など能登の光景は開放感と旅情感があり、朝から見ていてさわやかな気持ちになれる」と話す。

上智大の碓井広義教授(メディア論)は「戦時中も扱った『花子とアン』や『マッサン』に良い意味での重さがあったのに対し、『まれ』は全体的に雰囲気が明るく、肩の力を抜いて見られる。ヒロインが初めは『夢』に抵抗するというひとひねりがあって、物語が平板にならないよう、うまく工夫されている」と語る。

さらに、作中のユーモラスな演出や地方の風景や暮らしを強調していることについて、碓井教授は「『あまちゃん』から学んでいる感じがする」と指摘。「オープニングや語りも含め、隅々まで意識が行き届いていて、ぜいたく感がある」と称賛する。

ベテラン陣が好演

一方、早稲田大の岡室美奈子教授(テレビ文化論)の評価は少々からめだ。

「『夢を持てない』というのは現代の若者にとって切実な問題。この問題に朝ドラがどう向き合い、描いていくのかを楽しみにしていたが、初回でいきなり『夢を見つけて花開かせるまでの珍道中』と言われてしまったため、少しがっかりした。希が夢を持てない理由などについて、もっとリアリティーが欲しかった」と語る。

一方で、塩職人の元治役を演じる田中泯(みん)や、希の祖母代わりでもある文(ふみ)役の田中裕子ら「ベテラン陣の好演が光る」と分析。

「塩作りの際の田中泯さんの美しい姿や徹を演じる大泉洋さんの浮ついた姿など、周囲のキャラクターの存在感が素晴らしい。だからこそ、希役の土屋さんや(希の友人の)一子(いちこ)役の清水富美加さんら若い女の子たちの輝きが増している」と話す。

舞台は第二の故郷

物語は今週から「横浜編」に突入。希は、パティシエの修業をするために輪島市役所を辞め、夢の原点になったバースデーケーキを作った店がある横浜へと向かう。

制作統括の高橋練チーフ・プロデューサーは「希にとって『第二の故郷』になる横浜で、どんなことが繰り広げられていくのか。今後の展開も楽しみにしていただければと思います」と話している。

 ■手間と時間を実感 ロケ同行

「まれ」の撮影は、どのように行われているのか。4月上旬、ロケに同行し、その一端をのぞいてみた。
 
「本番、いきまーす!」

東京都内のある公園。スタッフのよく通る声が響き渡る。この日は、能登に住む文(田中裕子)が横浜を訪れ、希の父、徹(大泉洋)と話をするシーンが撮影された。

撮影は2度のリハーサルを経て、本番。カメラのアングルを変え、2度撮影した。演技に細かいカットはかからず、3分程度の連続しての芝居を撮影した。芝居のライブ感を大切にしており、10分弱の長いシーンも続けて撮ることもあるという。

田中と大泉は、力がほどよく抜けた自然体の演技を披露。また、スタッフによるカメラなどの準備が非常にてきぱきしており、一つの「伝統芸」を見るかのようだった。

このロケでは約40人のスタッフが2時間かけて撮影したが、実際にオンエアされるのはわずか2分程度。これでも放送に使える部分としては多い方だといい、朝ドラがいかに手間と時間を掛けて作られているかを実感した。

(産経新聞 2015.05.12)

NHK『クロ-ズアップ現代』やらせ問題

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「ヤフー!ニュース」での連載に、NHK『クロ-ズアップ現代』やらせ問題についての文章をアップしました。


NHK『クロ-ズアップ現代』やらせ問題の深層
NHKの調査報告書

NHKが、『クロ-ズアップ現代』に関する調査報告書を公表したのは4月28日のことだ。

昨年5月放送の「追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」の回に、多重債務者に出家の斡旋を行うブローカーとして登場した男性が、「自分はブローカーではなく、記者の指示で演じた」と告発したことを受けての調査だった。

結論としては、「事実の捏造につながる、いわゆる『やらせ』はなかったものの、裏付けがないままこの男性をブローカーと断定的に伝えたことは適切ではなかった」などとしている。

NHKは番組を担当した記者の停職3カ月をはじめ、その上司や役員などの処分を決定。組織としての幕引きへと向かった格好だ。

「やらせ」は捏造だけではない

番組では、出家詐欺のブローカー(A氏)に接触し、彼の事務所だという部屋でインタビューを行っていた。また、相談に来た多重債務者(B氏)とのやりとりを見せた上で、事務所を出たB氏を追いかけて話を聞いている。

だが、実際にはB氏と記者が旧知の間柄で、A氏はB氏の知り合いだった。事務所もB氏が撮影用に調達したもので、A氏の活動拠点ではなかった。A氏は報告書が出た後も、自身がブローカーであることを否定している。

放送内容と、報告書が明らかにした取材・制作過程を比べると、やらせはなかったという結論は納得できない。なぜなら、やらせは「捏造」だけではないからだ。

実際よりもオーバーに伝える「誇張」。事実を捻じ曲げる「歪曲」。あるものをなかったことにする「削除」。逆に、ないものをあるかのように作り上げる「捏造」。これらはいずれもやらせである。

報告書は、なぜか「捏造」だけをやらせと見なしており、その狭い定義に該当しないことを理由に、「やらせはなかった」と言っているのだ。

「過剰な演出」という言葉

この報告書は全体として、記者とB氏の証言や主張を認め、A氏に対しては懐疑的という立場で一貫している。

その上で、番組での「やらせ」と言われても仕方がない作り方・見せ方を、「過剰な演出」と呼んでいるが、これは一種の言い換えであり、すり替えである。

かつて、テレビ番組のやらせが大問題となったことが何度もあった。1985年、『アフタヌーンショー』(テレビ朝日系)で、制作側が仕込んだ暴行場面が放送された「やらせリンチ事件」。

また92年、『素敵にドキュメント 追跡! OL・女子大生の性24時』(朝日放送系)で、男性モデルと女性スタッフに一般のカップルを演じさせたケース。同年の『NHKスペシャル 奥ヒマラヤ・禁断の王国ムスタン』での「やらせ高山病」シーンなどだ。

その後も2007年に、『発掘!あるある大事典2』(関西テレビ系)で捏造問題が起きている。いずれも番組自体が打ち切りになったり、テレビ局トップの責任が問われたりしてきた。

ましてや、『クロ-ズアップ現代』は、やらせとは無縁であるべき報道番組であり、NHKの看板番組の一つだ。組織のトップにまで責任が及ぶ可能性のある「やらせ」という言葉を、報告書は是が非でも回避したかったのではないか。

ついにBPO審議入り

5月8日、BPOの放送倫理検証委員会は「放送倫理上の問題」を理由に、同番組を審議の対象とすることを決めた。

これにより、NHK自身による調査とその結果が、客観的にみて納得のいかないものであることが明白となった。まずはBPOの的確な判断を評価したい。

現在、BPOの放送倫理検証委員会には、放送や番組制作について十分な見識を持つメンバーが参加している。ドキュメンタリーの優れたつくり手でもある映画監督の是枝裕和氏、新聞記者として長年放送の現場を取材してきた放送評論家の鈴木嘉一氏、そして放送研究で多くの実績がある法政大学社会学部教授の藤田真文氏などだ。

今回の問題は、一人の不心得な記者の暴走にすぎないのか。それとも組織としてなんらかの欠陥が背後にあるのか。BPOの審議と検証が待たれる。

社会的なテーマに取り組み、地道に伝え続けてきた『クロ-ズアップ現代』だからこそ、今回のような番組作りは残念であり、当事者の記者には憤りを覚える。NHKのみならず、放送ジャーナリズム全体に対する信頼性を大きく損なったからだ。

また、それ以上に問題なのは、メディアコントロールを強めている現政権に、放送への介入を許す口実を与えたことである。自らの首を絞めるような愚挙をこれ以上繰り返してはならない。

(ヤフー!ニュース 2015.05.14)

女性セブンで、フジテレビについて解説

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発売中の「女性セブン」最新号が、フジテレビに関する特集記事を掲載しました。

この記事の中で解説しています。


記事タイトル:
もう一度わくわくさせてよ フジテレビ

記事は、フジテレビの現状に始まり、フジテレビの元アナウンサー・露木茂さんや、元ディレクター・永峰明さん、そしてペリー荻野さんなどに、お話を伺っています。

以下は、私の解説部分のみですので、記事全体は本誌をご覧ください。


元テレビプロデューサーで上智大学文学部教授の碓井広義さんも手厳しい。

「過去の成功体験にしがみついて、視聴者が求めるような新しいコンテンツを生み出せていない。例えば『アイアンシェフ』(12年10月~13年3月)は、かつての大ヒット番組『料理の鉄人』(93年10月~99年9月)のリメイクでした。スタートが11年の東日本大震災の翌年ということもあって、豪華な料理対決というエンタメを大衆が求めていない機運をフジはまったく分かっていなかった」

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70年代までのキャッチコピーは「母と子のフジテレビ」。子供向けの『ひらけポンキッキ』や主婦向けの『小川宏ショー』が看板番組だった。

「70年代までのフジは、本当に地味な放送局でした。若者が見るような派手な番組はほとんどありませんでした」(碓井さん)

当時、視聴率トップだったのはTBS。

「そのTBSを追いかけていたのが日本テレビ。フジは2強に大きく離されて、万年3位でした」(碓井さん)

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91年にバブルが崩壊すると、フジの勢いにも陰りが見え始め、94年には視聴率三冠王の座を日本テレビに奪われてまった。その理由を碓井さんが推測する。

「フジはバブル崩壊後もバブルっぽい雰囲気を残していたので、次第に世の中とズレが生じてきたんだと思います。いったんは日テレからトップの座を奪い返しましたが、それはタレントの魅力など、昔の遺産で食いつないだだけのことでしょう。

そのことがかえって過去の成功体験を引きずる原因になっているように思います。時代はとっくに変わっているのに、いまだにバブルの匂いがする。誰もやったことのない新しい番組にチャレンジしてこそフジなのに。今では『フジはダサイ』というイメージすらあるように思います」(碓井さん)

(女性セブン 2015.05.28号)




期待以上のサービス精神 『ワイルド・スピード SKY MISSION』

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ヴィン・ディーゼル主演の『ワイルド・スピード SKY MISSION』を観ました。

巨大な犯罪組織を率いていたオーウェン・ショウ(ルーク・エヴァンス)一味を撃破し、彼から恋人レティ(ミシェル・ロドリゲス)を取り戻したドミニク(ヴィン・ディーゼル)。ロサンゼルスへと戻った彼は、相棒のブライアン(ポール・ウォーカー)や妹のミア(ジョーダナ・ブリュースター)らと平穏な毎日を過ごしていた。しかし、オーウェンの兄である特殊部隊出身の暗殺者デッカード(ジェイソン・ステイサム)が復讐(ふくしゅう)を開始し……。


気がつけば、このシリーズも第7作目です。

カーアクション物は大好きなので、ほとんど劇場で観てきました。

今回も、陸に空に、ハンパじゃないアクションの連続で、まず、そのサービス精神に拍手です。

そして、例によって、いろんなクルマが出てくる、出てくる。

アメ車や欧州車だけでなく、日本車も大活躍だ。

スバル・インプレッサ、日産・GT-Rから、懐かしい日産・シルビアやトヨタ・スープラもいたと思います。

それらが、ロスだ、アブダビだ、東京だと、世界各地を走る、走る。

疾走するクルマたちを眺めるだけでも十分、目の保養。

ディーゼルの仲間愛(ほぼ家族愛)も変わりません。

いや、泣けるくらい、ますます強くなっている。

それだけに、現実世界で、ポール・ウォーカー(ディーゼルの義弟役)が急逝したことは残念でした。

合掌。

ジュニアエラで、「動画」特集を監修

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朝日新聞のニュース解説誌「ジュニアエラ」。

ジュニア(小中学生)のための「アエラ」です。

その6月号の特集が「動画」で、監修を務めています。


特集:
世界を動かす動画のチカラ

小中学生向けということで、全体が、語りかけるような形式での解説になっています。

「みんなは普段、どのくらいテレビやインターネット上の「動画」を見ているかな?私は毎日、全テレビ局の全番組を録画して、気になった番組うはもれなくチェックするくらいテレビ愛好家だ(それが仕事でもある)」といった具合。

全6ページの、なかなか充実した内容になっていますので、「ジュニアエラ」本誌を、ぜひ、ご覧になってみてください。










実習科目「テレビ制作1」リハーサル開始

全5回のドラマがもっとあっていい

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日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今回は、フジテレビの深夜ドラマ「she」を取り上げました。


フジテレビ系ドラマ「she」
30分枠で全5回
こういう企画がもっと増えていい
たとえば、「ようこそ、わが家へ」(フジテレビ系)や「アイムホーム」(テレビ朝日系)を見ていて、ふと思う。これって全10回、つまり10時間を費やさないといけない話なんだろうかと。

池井戸潤の原作小説も石坂啓の原作漫画も、いわゆる大作ではない。むしろ一気読み可能な中編だ。それを全10回に仕立てる際の“水増し感”が気になるのだ。これが、もしも半分の全5回だったら、ドラマ全体がぐっと引き締まり、緊迫感も増していたはずだ。

実は、先週末に最終回を迎えたNHKの土曜ドラマ「64 ロクヨン」も、この「she」も全5回の放送だった。どちらも、ある謎を追うサスペンスドラマであり、最後まで見る側を“安心”させずに引っ張り続けていた。

「she」の舞台は高校だ。突然、学年一の美少女、あずさ(中条あやみ)が姿を消す。学校側は生徒から事情を聞くが、原因や行き先を知る者はいない。しかし、ジャーナリスト志望の涼子(松岡茉優)が真相を探るうち、あずさだけでなく、クラスメイトたちの秘密も明らかになっていく。

高校生のリアルな距離感と関係性を見せた、松岡たちの好演。ドキュメンタリーのような手持ちカメラの映像。また、問題の当事者が不在のままの推理劇という点も挑戦的だった。

30分枠で全5回のドラマ。こういう企画がもっと増えてもいい。

(日刊ゲンダイ 2015.05.19)

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