オリコンが発行するエンタメ専門誌「コンフィデンス」。
その新年特別号に、「新春ドラマ放談」のタイトルで座談会が掲載されました。
この座談会で、産経新聞記者の三品貴志さん、ライターの吉田潮さんとご一緒しています。
以下はそのパート3。
10月期のドラマが対象です。
新春ドラマ放談
15年注目ドラマ振り返り&16年の期待の若手
ヒットドラマ・俳優ブレイクのカギを探る!
<パート3>
後半はバラエティ豊かな力作ぞろい
2016年のドラマにも期待
――10月期は『下町ロケット』の他にも力作が多かった印象ですね。『あさが来た』もスタートしました。
三品氏 『あさが来た』は、やはり正統派で面白いですね。波瑠はそれまで、ミステリアスだったり清楚な役が多く、お転婆な役柄が合うのかという危惧もあったのですが、意外に明るいコメディタッチもいけると証明してみせた。それと、やはり出るだけで画面の質が変わる宮あおいの存在感。このヒロイン2人によって、作品が重層的になっています。
碓井氏 少なくとも実話ベースですから、お話も安心して観ていられる。財閥のお嬢さんが幕末からどう流転し成長するのか、という下世話な興味もありつつ。まだ女優としてはこれからという波瑠のたどたどしさ、素人っぽさが、両替商の若いおかみさんや炭鉱主の責任者といった場における初々しさに、うまく自然に重なるんですよね。非常に効果的なキャスティングだったと思います。
吉田氏 女性が朝ドラにはまる要因の1つに、ちょっとダメな男の存在があるんですよ。『花子とアン』での吉田鋼太郎のような。今回は、江本佑と玉木宏というダブルダメ男、さらに風吹ジュンと萬田久子、ダブルヒロインだけでなく、そのへんどこからでも美味しく食べやすく構築してあるなと思います。
――『破裂』『サイレーン』というなかなか刺激的な作品もありました。
吉田氏 『破裂』については、内容がセンセーショナルかつリアルでしたね。介護、高齢化、医療費などのテーマ立てが、どこかでこれって厚労省の本音なんじゃないのという部分も感じられて。でも残念ながら、一般にはあまり話題にならなかった。
碓井氏 原因としては、登場人物に感情移入しにくいというのはあったかもしれません。観ていてスカッとするわけでもなく、正義の味方がいる勧善懲悪でもない。でも全体のバランスは良かったですよね。奇妙な味ではありますが。
三品氏 役者の濃さは見応えありましたが、ずっと緊張して観ていないとお話がわからなくなるようなところはありましたね。そういう意味では、『サイレーン』は分かりやすいというか。『ファーストクラス』以降の菜々緒のケレン味がついにここで確立した感がありました(笑)。
吉田氏 菜々緒の禍々しさが非常に印象的でしたね。せっかくの松坂桃李と木村文乃が霞んでしまうほど。あと、この期で触れておきたいのは『おかしの家』ですね。最初は、ほっこり癒し系で下町情緒を映して終わりだったらつまらないなと思っていたら、全然そうじゃなかった。ふんわりどころじゃなくて、ドラマの必然で人が死んだりもする。描かれている要素を書き出してみると、けっこう社会派な面もある。良い意味で裏切られた作品でした。
碓井氏 私は『釣りバカ日誌 ~新入社員 浜崎伝助~』が良かったですね。実は、映画も原作マンガも大好きなので、ダメなら叩いてやろうと待ち構えていたのですが(笑)、アンチに回らずに済みました。設定を新入社員時代にしたのも大正解。
三品氏 濱田岳の芝居のうまさ、憎めない愛らしさはもちろん、ハマちゃんが今度はスーさんを演じるという構造はうまかったですね。出てくる人が誰も傷つかない、こういうドラマは今なかなか少ないですし。それに、広瀬アリスが良い存在感を放っていますね。なんというか、落ち着きと暖かみを感じる女優さんだと思います。
――駆け足で2015年のドラマを振り返ってきましたが、では2016年のドラマに期待するのは、どういった点でしょうか。注目の役者さんなども含めて最後に教えてください。
三品氏 2016年は、やはり良質なコメディをもっと観たいですね。『デート』や『リーガルハイ』『民王』のような。明るいけど、ちょっとヒネってあるような作品を期待したいです。役者でいうなら、例えば菅田将暉と松岡茉優の共演するコメディとか、どこかで実現してほしい。志尊淳、高杉真宙、芳根京子といった『表参道高校合唱部!』出演メンバーのその後も注目しています。
吉田氏 群像劇が時々疲れてしまうので、力のある人たちが5人くらいで空気感をきちんと作っていくような、大人の鑑賞に耐えるようなドラマが観たいです。真飛聖とかをキャスティングしてもらって(笑)。注目の若手は森川葵などたくさんいますが、以前の『ごめんね青春!』や『表参道高校合唱部!』もそうかもしれませんが、若手の登竜門になるようなドラマ枠がもっと増えるといいなと思います。そういう意味でも、15分枠や30分枠のドラマがあってもいいのにとも思う。
碓井氏 大人たちが普通に観られるような、もっとリアルなドラマがあってもいいようには思います。50、60代はテレビの優良な視聴者ですから。無理に恋愛モノや企業モノとかじゃなくても、等身大の日常も十分スリリングだと思うんですよね。それはさておき、注目しているのは中条あやみ、山崎紘菜といったあたり。この2人は憶えていていい名前だろうと思います。
吉田氏 そうそう、ドラマと関連する希望として。ドラマのCMにキャストが出てくるパターン、最近すごく多くないですか? スポンサーさんの意向なのかもしれませんが、あれは逆に視聴者の集中力を削ぐことおびただしい。ぜひ2016年は減らしてほしいです(笑)。
【3人が注目した作品/15年10月期】
碓井氏
『下町ロケット』(TBS系)
『破裂』(NHK)
『コウノドリ』(TBS系)
三品氏
『あさが来た』(NHK)
『釣りバカ日誌 ~新入社員 浜崎伝助~』(TX系)
『サイレーン』(CX系)
吉田氏
『破裂』(NHK)
『偽装の夫婦』(NTV系)
『おかしの家』(TBS系)
(オリコン「コンフィデンス」2016新年特別号)