日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今回は、NHK土曜ドラマ「限界集落株式会社」について書きました。
地域活性という地味なテーマが
堂々のエンターテインメントに昇華
過疎と高齢化が進み、社会的な共同生活を維持することが困難になった地域。それが「限界集落」だ。何て秀逸な、そして悲しい呼称だろう。
NHK土曜ドラマ「限界集落株式会社」の舞台である「止村(とどめむら)」も、まさに限界ギリギリの状態だ。農家の老人たちの、ある者は病に倒れ、またある者は村を去っていく。
そんな村に帰ってきたのが大内正登(反町隆史)。かつて有機農業の夢に破れ東京へと逃げた正登だが、母親(長山藍子)や娘の美穂(松岡茉優)と共に、再び農業にトライしようというのだ。
もう一人、突然この村に現れたのが経営コンサルタントの多岐川優(谷原章介)だ。村人たちに向かって「農業はやり方次第で儲かる」と説き、さまざまなアイデアで実践してみせる。
原作である黒野伸一の同名小説では多岐川が主人公だが、ドラマでは正登を主軸としている。両者をつなぐのが美穂だ。この3人の個性と配置のバランスが功を奏して、地域活性という地味なテーマが堂々のエンターテインメントになっている。
出演者の中では、「あまちゃん」で注目された松岡茉優がハマリ役だ。フジテレビで放送中の「問題のあるレストラン」といい、このドラマといい、こんなにも“屈折女子”が似合う若手女優はいない。
限界集落のジャンヌ・ダルクとなるか。
(日刊ゲンダイ 2015.02.10)