東京新聞の夕刊1面に、気になる記事が掲載されていました。
つい先日、TBS「サンデーモーニング」のインタビューに答えて、ネットにおける匿名性の話をしたばかりです。
番組の中では、時間の都合もあり、使われていませんでしたが、収録時には、この「悪意の投稿」問題にも触れていたのです。
こうして調査の数字を示されてみて、ネット社会の現実として、あらためて考えていくべき課題なのだと再認識した次第です。
スマホからネットへ書き込み
4人に1人 悪意の投稿
携帯端末のスマートフォン、タブレットを使い、インターネットを通じてブログやツイッターなどへ投稿した人の四人に一人が、他人や企業の悪口などの「悪意のある投稿」をした経験のあることが十七日、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のネット利用者の意識調査で分かった。
調査は昨年十月にネット上で匿名で実施。携帯端末の利用者三千五百人のうち投稿経験があるとしたのは千八百五十人。
「他人や企業の悪口」「下品な言葉を含む」「さげすんだり、けなしたり」「人格を否定」など、IPAが例示した十四種類の悪意のある投稿をしたことがあるとした人は、そのうちの26・9%に上り、前年から3・4ポイント増えた。
投稿理由(複数回答)では「反論したかった」「投稿やコメントを見て不快になった」「非難・批評するため」が30~20%台と多かった。「仕返しするため」は前年より5・4ポイント増えて13・2%、「炎上させたくて」は4ポイント増えて6・8%。
投稿後の心理では「気が済んだ、すっとした」が31・9%で最多。ほかは「何も感じない」(27・6%)、「後悔した」(13・6%)など。
年代別では、二十代の36・8%が最も多く、次は十代の30%。三十代以降は年齢が上がるにつれて減少した。
一方、パソコンでネット投稿した約千九百人のうち悪意のある投稿をしたのは22・2%で、前年より4・2ポイント減った。
IPAの花村憲一主任は「若年層に倫理意識の低下傾向が見られ、教育の必要性が高まっている。悪意のある投稿をした割合が携帯端末利用者で増え、パソコン利用者で減った理由は今後詳しく調べる」と話している。
◆安易な思いから深刻被害
インターネットへの悪意ある投稿は何度も社会問題化してきた。安易な気持ちでの投稿でも、拡散が繰り返され、取り返しのつかない被害がもたらされることもある。
「最初は一部のネットに依存している人がうわさを流しているだけと思ったが…」。過去、ネット上で身に覚えのない殺人事件の犯人と名指しされたお笑い芸人スマイリーキクチさん(43)は体験を語る。
一九九九年にネットの掲示板で書き込まれた根も葉もない話は拡散が続き、次第に「事実」のように扱われ、非難や糾弾が相次いだ。
「家族を襲撃する」との投稿も出るようになり警視庁に告訴。二〇〇九年、男女七人が名誉毀損(きそん)などの容疑で書類送検された。(全員不起訴)
「みんな普通の会社員らで驚いた。悪意ではなく正義感と思っていたようだが書かれる側にとってこれほど怖いことはなかった」
過去には著名人の被害が目立っていたが、最近は一般の人たちにも被害は拡大している。
青少年に正しいネット利用の在り方を語る活動をしているスマイリーキクチさんは、ツイッターのリツイート(転送)機能で誰でも簡単にうわさや中傷を拡散できる時代になっていることを挙げ「それも投稿者と同罪だという認識が必要だ」と指摘している。
(東京新聞 2015.02.17)