NHK調査委:一部誤り認める
…やらせ指示は判断示さず
NHKの報道番組「クローズアップ現代」などで「やらせ」があったとされる問題でNHKは9日、調査委員会の中間報告を公表した。一部については誤りがあったことを認め、過剰演出の可能性についても言及しているが、記者が「やらせ」を指示したかどうかなどについては「意見に食い違いがある」と指摘するにとどまった。
問題の番組は「追跡“出家詐欺”〜狙われる宗教法人〜」。多重債務者がブローカーを介して出家の儀式を受け、名前を変えて融資などをだまし取る詐欺の手口を紹介。昨年4月25日に関西ローカル「かんさい熱視線」で放送されたあと同年5月14日「クローズアップ現代」で全国放送された。
やらせが疑われているのは、ブローカーとされる男性の元に、多重債務者とされる男性が相談に訪れる場面。窓越しに部屋の様子が撮影されている。
中間報告では、相談場所とされた事務所をブローカーの「活動拠点」とコメントしたことは「誤りであり、裏付けが不十分だった」と認めた。
また、記者が詐欺の現場を突き止めたように構成されているが、実際は2人に依頼して撮影していた。「視聴者に実際と異なる取材過程を印象づけた」として過剰な演出がなかったかなど検証の必要性を指摘した。
しかし、記者が演技を依頼したかについては「記者は一貫して否定している」とし、ブローカーとされる男性と意見が食い違っている点を指摘。男性を「ブローカー」と伝えたことについても記者と男性の間で認識が大きく異なっているとした。
ブローカーとされた男性は9日、代理人の弁護士を通じて改めて「記者に演技を求められた。自分はブローカーではない」とコメントした。
同日の「クローズアップ現代」で国谷裕子キャスターは、ブローカーの「活動拠点」ではなかったことを認めた上で謝罪。「取材や制作が適切であったか調査委員会はさらに調査を進め、できる限り早い時期に報告書を公表することにしています」と述べた。
中間報告について碓井広義・上智大新聞学科教授(メディア論)は「記者がだまされていたのか、それともブローカーではないと知りながら取材したのかといった核心部分が解明途上だったのは残念だ」と述べた。
【望月麻紀、須藤唯哉、北林靖彦】
◇弁護士「承服できない部分も多い」
NHKの中間報告を受け、NHKに訂正放送を求めたブローカーとされた男性の代理人の弁護士は9日、「各関係者の供述内容が明らかにされたことはポイントの明確化という意味で評価するが、承服できない部分も多く存在するので、内容を精査し、今後の対応について改めて検討する」とのコメントを発表した。
(毎日新聞 2015.04.09)