NHK記者「演技依頼していない」食い違う証言
NHKの報道番組「クローズアップ現代」に出演した男性が「やらせがあった」と訴えている問題で、NHKの調査委員会は9日、中間報告を公表。
不十分な裏付け取材による事実関係の誤りを認定したほか、過剰な演出があった可能性があることを明らかにした。調査委が近くまとめる調査報告書で「やらせ」の有無などをどう判断するのか注目される。
◆4点で証言にズレ
「やらせはあったのか」「取材がずさんでは」。9日午前、NHKで行われた会見。記者の質問に対し、NHK幹部は「あくまで中間報告。判断は調査委員会が下す」と繰り返した。
昨年5月14日に放送された同番組は、多重債務者をブローカーを介して出家させ、名前を変えさせて融資などをだまし取る「出家詐欺」の手口を紹介する内容。調査委は、取材や制作に携わった記者らNHK側計14人と、番組で「ブローカー」とされた男性ら3人から聞き取りをし、記者と男性との主な説明の食い違いが4点明らかになったとした。
ブローカーとされた男性は「自分はブローカーではないが、記者から役を演じるよう依頼された」などと主張。記者は「男性はインタビューの中で自らを『われわれブローカー』と称した。演技の依頼はしていない」と説明している。
中間報告は、番組取材への認識や口止め依頼の有無を含め、これら4点の説明の相違を「主張の食い違い」などとするにとどめたが、会見で質問を受けたNHK幹部は、記者が男性本人に対し、ブローカーかどうかを尋ねて確認していなかったことも明らかにした。
(中略)
碓井広義・上智大教授(メディア論)の話
「問題の放送回の根幹は『ブローカーを見つけ、多重債務者とのやりとりを取材できた』という点であり、記者が男性に対してブローカーであるのかどうかを確認していない時点で、記者の認識にかかわらず、根幹に関わる部分の取材が不十分だったと言うほかない。また、事実関係と番組構成が合致しないなど不自然な点も多く、記者がスクープ性やストーリー性にこだわり、無理をした疑いもぬぐえない」
(読売新聞 2015.04.10)