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日刊ゲンダイで、各局の「春ドラマ」についてコメント

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春ドラマ辛口採点
キムタク「アイムホーム」に識者の評価二分
4月スタートの春のドラマは、元祖視聴率男・木村拓哉(42)と旬の演技派俳優・堺雅人(41)の同世代対決が話題だ。識者の評価は――?

「Dr倫太郎」(日本テレビ系)は、「半沢直樹」でブレークした堺雅人(41)が精神科医を演じる異色の医療ドラマ。 医者モノは腐るほどあるが、心の病をモチーフにするのは珍しい。

作家の吉川潮氏は、「堺雅人の包み込むような雰囲気やしゃべり方は、心が病んでいたらこういう医者に診てもらいたいと思わせる。 ドラマは社会の理想像を求めるものだが、それを表現できるのが堺雅人という俳優の実力」とベタ褒め。

作家の麻生千晶氏も、「心の病を通して時代の不安な空気感を描こうというスタッフの意欲は評価したい」と合格点を与える。

一方、木村拓哉が記憶を失ったエリートサラリーマンを演じる「アイムホーム」(テレビ朝日系)はどうか。

石坂啓の同名マンガが原作で、上戸彩演じる妻と子の顔が仮面に見えるというサスペンス的な物語。

キムタクは初の父親役を演じているが、「キムタク自身がその役柄に戸惑っているように見える」と言うのは、 TVウオッチャーの石橋さや夏氏だ。

「エリート社員なのに朝ごはんをしっかり作るなんて、ちょっとあり得ない。昔のキムタクならそういう不自然な役でも力業でやってのけたが、もうマジックはきかなくなったのかも。実生活では父親なんだから演技の引き出しはあるはず。ちまたの“キムタク像”に自身も振り回されているのかもしれませんね」

しかし、初回の視聴率は平均16.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、倫太郎の13.9%に差をつけた。麻生千晶氏が「きっちり数字をとれるのは彼のオーラのたまもの」と言えば、上智大教授の碓井広義氏(メディア論)も、「いい意味で裏切られた。いつものキムタクではなく、ちゃんと家路久という役を演じている。ドラマの出来も倫太郎といい勝負」と絶賛。見てみる価値はありそうだ。

両雄に割り込まんとするのが元AKB48のセンター大島優子。「ヤメゴク」(TBS系)で、暴力団をやめたいヤクザからの電話、通称“足抜けコール”を受ける女刑事を演じているが、これがすこぶる好評なのだ。

「エキセントリックな女刑事という役柄がハマっている」(吉川潮氏)

「普通の顔ではあるが、それがかえって刑事という役柄にリアリティーを与えている」(麻生千晶氏)

演出は「SPEC」など独特の世界観で知られる堤幸彦。このドラマをきっかけに、元アイドルから一皮むけるか?


■フジ「心がポキッとね」の山口智子に酷評

ドラマでも迷走しているのがフジだ。

自ら“男壇蜜”と自嘲気味に名乗る斎藤工主演の「医師たちの恋愛事情」は、「熱血で一本気に正義を振り回す絵に描いたようなチープな役柄。裏があって、ちょっとずる賢い彼の持ち味が全く出ていない」(石橋さや夏氏)、「女子の妄想を実現するためのドラマ」(放送ライターの堀江南氏)とケチョンケチョン。

意外なのは、小泉今日子主演でヒットした「最後から二番目の恋」の脚本家・演出家のコンビで挑んだ「心がポキッとね」の不調。阿部サダヲ、藤木直人、山口智子、水原希子らが演じる“ちょっと病んだ男女4人”が織り成すラブコメディーという触れ込みだが、「山口智子が悪い意味で目立ってる。制作側の意図かもしれないが、ロンバケの頃とまったく演技が変わっていない」(石橋さや夏氏)、「いい年してチャラチャラした演技でみっともない。そういう使われ方を恥ずかしいと思わないところが致命的」(麻生千晶氏)。

同じフジテレビでも「ようこそ、わが家へ」は評価が高い。

「池井戸潤原作。家族を舞台にしたサスペンスをしっかり描いている。主演の嵐・相葉雅紀のとぼけた男の役がはまっているし、共演の沢尻エリカも悪くない」(碓井広義氏)

「今春のドラマの共通テーマである“社会不安”を描いている。父親役の寺尾聰、妹役の有村架純もいい」(麻生千晶氏)

ジャニーズの山下智久主演の「アルジャーノンに花束を」は、「脚本監修が野島伸司で、いしだ壱成や河相我聞など野島作品の常連だった俳優もキャスティング。お得意の暗さ、人間関係の陰湿さが盛り込まれているが、ストーリーがご都合主義」(堀江南氏)。

オヤジ世代におすすめは、横山秀夫原作の刑事ドラマ「64(ロクヨン)」(NHK総合)。

「今クールでナンバーワンの作品。原作は横山秀夫で、演出はハゲタカやあまちゃんの井上剛、音楽もあまちゃんの大友良英。軍人のような独特の存在感を持つピエール瀧も持ち味を出している。NHKが本気になるとここまでやれるんだという本格的な映像で、ぐいぐい引き込まれる」(放送ライターの八雲翠氏)

せっかくの貴重な時間。くだらないドラマでロスしたくないものだ。

(日刊ゲンダイ 2015.04.27)

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