日本農業新聞に、お米のブランド化新戦略をめぐる特集記事が掲載されました。
この記事の中で、解説しています。
米ブランド化 新戦略
意外性で売り込み 強い印象狙う
米の新顔銘柄を売り込もうと、ブランド名にあえて難しい漢字や、食品業界で「食欲を減退させる」と敬遠されがちな青色を米袋に使う産地が出てきた。新品種の開発競争が激しくなる中、少しでも強く消費者に印象付ける戦略だ。
専門家は「保守的とされる米の世界で、既成概念を打ち破る商品が成功すれば、業界がもっと活気づく可能性がある」と注目する。
難読漢字、男性の名前、袋に青色・・・
青森県やJAグループ青森は、新品種「青天の霹靂(へきれき)」を今月、地元や東京都内などでデビューさせた。名称は公募で選んだ。米の名前は平仮名や片仮名書きが主流で、当初は「漢字が難しく、浸透しないのではないか」と異論も多かった。しかし、県は「突如として現れる稲妻のような鮮烈な存在となってほしい」と決定した。
今年の作付面積は550ヘクタール、生産見込み量は約2500トンとまだ少ないが、全国的に話題となっている。日本航空は国際線ファーストクラスラウンジでの提供を決めた。大手米卸も「今年、一番の注目銘柄」と口をそろえ、取り扱う県内外のスーパーでは売り切れ店も相次ぐ。
JA全農あおもりは「食味には絶対の自信がある。ただ、各地で新品種が続々と誕生しているだけに、まず食べてもらわないと勝負できない」と狙いを明かす。
新潟県も、2017年秋のデビューを目指す新品種に「新之助(しんのすけ)」と名付けた。泉田裕彦知事は「米は女性的な名称が多かったが、日本男児にちなんだ名前にした」。17年産で1万トンの生産を計画する。
13年度にデビューした滋賀県の新品種「みずかがみ」。県やJAグループ滋賀などは米袋のデザインに、琵琶湖の水を連想させる青を採用している。県などは「今までの米にないイメージを」と勝負に出た。関西を中心に出回る約1万トンのうち、9割がこの青をメーンカラーにした米袋だという。
近畿を中心に約150店舗を展開するスーパーの平和堂は、15年産「みずかがみ」の取扱量を前年比2倍弱の850トンに増やした。同社は「袋のデザインを見て購入した客が、冷めてもおいしい食味を評価し、繰り返し買っている」と話す。(宗和知克)
良食味ならより高評価
広告などに詳しい上智大学文学部の碓井広義教授(メディア論)の話
米の販売競争が激しくなり、産地の戦略が高いレベルで横並びになっている。そこから頭一つ抜き出るために意外性を打ち出す米が出てきた。意外性は強過ぎると違和感になる。ただマイナスの印象からスタートする分、食べておいしければ、通常以上に評価は高まる。ぎりぎりの線を狙った高等戦術だ。
(日本農業新聞 2015.10.24)