「相棒」好調の理由は「GTO」のやんちゃな反町?
秋のドラマは豊作ぞろいだ。息の長いシリーズから、医療や刑事、婚活もの、初の連ドラ化まで、中高年に嬉しいドラマが目白押し。
さて、シリーズが14回目を迎え、4代目の新・相棒に反町隆史を迎えた「相棒」(テレビ朝日系・水曜21時)は初回視聴率が18.4%で2回目が17.6%と順調だ。
「ドラマにより強い個性が加わった。キャスティングの成功」と言うのは上智大学新聞学科の碓井広義教授(メディア論)。
今まで水谷豊が演じる右京の相手は、年齢差が大きかったり、警察内の階級差があったが、今回の相棒・冠城亘は警視庁へ出向した法務省キャリア官僚という設定。それが奏功し「ひけをとらずに張り合えるキャラ設定が新鮮」で、長く見続けている視聴者も十分楽しめると太鼓判を押す。
「シリーズが長いほど作り手の手腕が問われる。手を抜くと画面にそれが出るが、このドラマに関しては心配ない。警察ドラマでありながら人間像を掘り下げるというドラマの持ち味が、新設定で生きそうです」(碓井教授)
ドラマ評論家の成馬零一さんも、「近年、大人の俳優として渋い演技を見せていたが、『GTO』のころのやんちゃな反町が戻ってきた」と絶賛する。
「相棒は初回から15年の間に登場人物が何人も死んで、原形をとどめていない。でも過去にドラマに出てきた女将が、いつしか沖縄に移住して登場したり、なじみ客(長年の視聴者)が楽しめる部分もある」
水曜深夜から金曜深夜枠「ドラマ24」に“移籍”したのが「孤独のグルメ Season5」(テレビ東京系・金曜24時12分)だ。松重豊演じる井之頭五郎がふらっと飲食店に立ち寄る。B級的な店ばかりだ。
「変わってよくなる番組がある一方、変わらない安心感があるのがこれ」と碓井教授。「原作者・久住昌之さんが番組の最後に登場する定番のおまけつき。これができるのはコアなファンがついているから。視聴者の求めているものを知り、ニーズに応えるという番組のまじめさがわかる」
医療ものも今期、複数ある。医師で作家の久坂部羊原作のドラマが、「無痛~診える眼~」(フジテレビ系・水曜22時)と「破裂」(NHK・土曜22時)。2本同時期に進行中。「無痛」には「チーム・バチスタ」シリーズでも医師役を演じた西島秀俊が出演し、ハマリ役との声も高いが、テレビウォッチャーの吉田潮さんは「同じ原作者のものでもNHKは重厚感がある。仲代達矢さんの熟練演技に背筋もしゃんとなる」と話す。
でも吉田さんがより目を光らせるのは、「コウノドリ」(TBS系・金曜22時)だ。綾野剛が産婦人科医兼ピアニストという役を演じる。連載中の人気漫画のドラマ化だ。
「貧困や事故、喫煙依存などさまざまな事情の患者や家族を、綾野演じる医師と組むNICU(新生児集中治療室)や麻酔科の医師や助産師など“チーム医療”がどう支えるか。特に丁寧に描いてほしい」
演技力が求められるのは、ゲスト出演する患者。初回は未受診の妊婦を清水富美加が好演。
「綾野剛を特別にかっこいい医師として際立たせるのでなく、さりげなく描くほうが、ドラマ全体が輝くはずです」(吉田さん)
この秋注目したい作品の中に、「釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助」(テレビ東京系・金曜20時)がある。国民的人気シリーズの初の連ドラ化だ。映画で西田敏行が演じたハマちゃん役に濱田岳が抜擢され、西田は故・三國連太郎が演じたスーさんになる。番組プロデューサー・浅野太さんが起用の決め手について話す。
「二枚目ではないが、愛されるキャラがハマちゃん像。若手新入社員の役で演技もうまいとなれば、濱田岳さんしかいない。迷わずオンリーワンの指名でした」
お茶の間でおばあちゃん、おじいちゃんが孫と“安心して見られる”点でも、オンリーワンかもしれない。原作漫画も映画もすべて見てきたという碓井教授は、ドラマにこう期待を寄せる。
「老舗すし店で若い職人が握るすしを、大将が見守る。西田さんと濱田さんのそんな雰囲気が、ドラマを味わい深くしそうですね」
(週刊朝日 2015年11月6日号より抜粋)