篠原涼子「オトナ女子」は“時代遅れ”?
今季のドラマが出揃った。数字の上では「相棒」(テレビ朝日系)、「下町ロケット」(TBS系)がリード中だが、見どころはほかにもある。ドラマ評論家などが徹底分析した。
テレビウォッチャーの吉田潮さんが「切り口にハッとした」と言うのは、夫婦や恋人と楽しめそうな「偽装の夫婦」(日本テレビ系・水曜22時)。
こちらも初回14.7%と好スタート。45歳の図書館司書を演じる天海祐希が、ゲイの元カレ沢村一樹と偽装結婚する。脚本は「家政婦のミタ」や「○○妻」を書いた遊川和彦。天海と以前組んだ「女王の教室」は大ヒットした。吉田さんは言う。
「理想の夫婦を偽装の夫婦とモジったタイトルが興味を引くし、天海の本音が“字幕”の形で表現されて、その言葉にすかっとする」
たとえば、結婚準備をどんどん進める沢村の母に対し本音はこうだ。
<いい加減にしろよ、この暴走ババア>
内田有紀が演じる子持ちのレズビアンも登場するのだが、こうした設定も吉田さんは評価する。
「LGBTと呼ばれる多様な性は誰もが尻込みするテーマ。そこをやってのけるのは遊川さんならでは」
脚本でドラマ評論家の成馬零一さんが注目するドラマがもう一つ。2年半ぶりに連ドラ主演する篠原涼子が“アゲマンだが幸せになれないアラフォー女性”を演じる「オトナ女子」(フジテレビ系・木曜22時)。
「脚本の尾崎将也は『結婚できない男』や『アットホーム・ダッド』で、モテない男や主夫のようなニッチな題材を見つけた。強い女が定番化した篠原の弱さをどう描くか気になります」
ところが、ドラマが始まると内容以上に主人公のしぐさが「気になる」という意見が多かった。上智大学新聞学科の碓井広義教授(メディア論)も黙っていない。
「篠原さんが何度も長い髪をかき上げる。書き下ろしの脚本なのに、80年代後半のドラマを見ているかのような既視感と違和感が否めない。ドラマが視聴者をリードするはずが、3歩くらい時代から遅れている」
視聴者の戸惑いは、初回一桁(9.9%)という視聴率にも表れた。吉田さんは、初回を録画で2度見て髪をかき上げる回数を数えた。
「髪にちょっと触れるのも含めたら30回。癖というか演出だと思うんです、篠原さんの。大物になったので周囲が何も言えないのかも」
2年半前に篠原がフジで主演した「ラスト・シンデレラ」(平均視聴率15・2%)くらいに巻き返しできるか。
(週刊朝日 2015年11月6日号より抜粋)