「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。
上村達男 『NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか』
東洋経済新報社 1620円
NHKの長い歴史の中で、これほどひどい人物が会長だった例はない。元・経営委員長代行の著者は、巨大組織のトップにふさわしい素養・知見が備わっていないだけでなく、コミュニケーション能力の欠如も指摘する。いくつもの「なぜ」に答えた重要証言だ。
西田宗千佳
『ネットフリックスの時代~配信とスマホがテレビを変える』
講談社現代新書 821円
膨大な数の映画やオリジナル作品で、ネット配信ビジネスの世界的覇者となった「ネットフリックス」が日本に上陸した。その魅力と衝撃度。迎え撃つ日本の状況。先行する音楽産業の大変化。「見放題」と「イッキ見」がテレビにもたらすものは何なのか。
菊池紗緒 『ハミル、時空を飛ぶ』
世界文化社 1080円
著者は科学ジャーナリスト。素粒子論、量子論、一般相対性理論といった物理学理論を、巧みなストーリーテリングでファンタジー小説に昇華させた野心作だ。主人公の少年ハミルと共に物語世界を巡りながら、自然科学の不思議と面白さを再発見できる。眠れる想像力にさわやかな刺激を。
(週刊新潮 2015.12.03号)
斎藤美奈子 『ニッポン沈没』
筑摩書房 1728円
話題の本3冊をベースとした、鋭い社会時評である。震災、原発事故、安倍晋三再登場、集団的自衛権、原発再稼働など、この5年間で世の中がいかに危うくなってきたかがよく分かる。さらにメディアのチェック機能低下も大きな罪だ。沈没をどう防ぐのか。
水川薫子、高田秀重 『環境汚染化学』
丸善出版 3688円
現在、1億種を超えているという化学物質。その中から汚染物質が生まれ、環境汚染が進行していく。本書が伝えるのは、汚染の分布と動態を予測する研究の最前線である。石油汚染、プラスチック汚染、ダイオキシンなど、今後の環境汚染問題を考える際の必読書だ。
(週刊新潮 2015.12.10号)