NEWSポストセブンで、「開運!なんでも鑑定団」石坂浩二問題について解説しました。
石坂浩二の発言カット騒動
プロデューサーの強大な権限とは
俳優・石坂浩二(74)の『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京系)降板騒動は、石坂の発言シーンが2年ものあいだ不自然にカットされていた問題に端を発した。その背景にはチーフプロデューサーとの確執があったと報じられ、波紋を広げている。
およそ22年も続く長寿番組の功労者である大御所芸能人にこのような“仕打ち”ができるほど、プロデューサーの権力とは強大なものなのか。
元テレビプロデューサーで上智大学教授(メディア論)の碓井広義さんは、その権限と責任についてこう解説する。
「プロデューサーには『ヒト・モノ・カネ』に対して、それぞれ権限と責任が与えられています。どういうタレントを使うか、どういう制作チームを編成するか(=ヒト)、番組の中身をどう作っていくか(=モノ)、予算をいかに確保するか、番組のどこに経費をかけるか(=カネ)、これらを決めるのがプロデューサーの仕事です。
いわば番組の王様のようなものですが、通常、番組をゼロから作る際には局や出演者などと話し合いながら決めていきます。しかし途中から入ってきたプロデューサーが自分のカラーを出そうと強引にキャスティングを変えたりコーナーを刷新したりしようとすると、軋轢が生じやすくなります。
今回の場合、石坂さんを出すかどうかはプロデューサーの権限の範囲。しかし報道にあるようなことが事実であるとすれば、番組への愛情や思い入れがなかったんじゃないかな、と思います。モノづくりに対しても不誠実だと思います」(碓井広義さん、以下「」内同)
この騒動を最初に報じた『女性自身』は、酒席で石坂とトラブルを起こした制作責任者が、石坂を自主降板へと追い込むために2年ほど前から石坂の発言シーンをカットしているという番組関係者の証言を紹介した。それを見たネットユーザーたちからは、「陰湿なイジメだ」、「パワハラだ」と、制作責任者やテレビ東京を批判する声が相次いだ。
「実は私と私の家族も『鑑定団』のファンで、番組が始まってから20年以上、毎週観ている番組の一つです。確かにいつからか、石坂さんがあまりしゃべらないことには気づいていたんです。家族で『変だね』とは言っていましたが、報道を見て『まさか』と驚きました」
当の石坂本人はスポーツ紙などの取材に「どうせ放送されないから、何を言っても大丈夫だと安心してやっていますよ」と答えるなど、騒動に対しては大人の対応を見せている。石坂ほどの大物でも、相手がプロデューサーとなれば侮辱的な仕打ちでも耐えなければならないのだろうか。
「どうまとめるかは制作側が決めることなので、出演者は普通、制作に口出しはしないものです。映画なんかでも、監督がシーンをカットしたからといって文句を言う役者はいませんよね。石坂さんは役者さんだから、そのことをよくわかってらっしゃるんだと思います。
カメラの前で自分の役割をきちんとこなすことができて、ギャラもちゃんと出ているのであれば、淡々と仕事を続けるのはある意味プロなら当たり前のことです。ただ、こういうことが明るみに出たのは石坂さんに対して失礼。応援してきた視聴者としても、残念なことです」
4月からは石坂に代わり、フリーアナウンサーの福澤朗(52)が司会を務める。そして石坂は、BSジャパンで4月からスタートする新番組『開運!なんでも鑑定団・極上!お宝サロン(仮)』の司会に就任することが決まった。本家からは去るが、新しい居場所ができたことでファンは一安心か。結果的にこれで良かったのかどうかは、微妙なジャッジである。
(NEWSポストセブン 2016.02.05)