「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。
鶴見俊輔 『まなざし』
藤原書店 842円
昨年7月に他界した著者の追悼出版だ。石牟礼道子、岡部伊都子、小田実など、敬愛する人物たちについて書かれた文章の鋭さと的確さ。また祖父・後藤新平、父・鶴見祐輔、姉・鶴見和子など血縁を語る言葉の公平さと温かさ。じっくりと味わいたい。
御厨貴・橋本寿朗・鷲田清一:編
『わが記憶、わが記録~堤清二×辻井喬オーラルヒストリー』
中央公論新社 3456円
巨大流通グループを率いた実業家・堤清二。谷崎潤一郎賞や野間文芸賞を受賞した小説家・辻井喬。一人の人間の内部で両者はいかに共存し、また分裂していたのか。3人の優れた聞き手による29時間のインタビューは、個人史であると同時に貴重な現代史でもある。
アニエス・ジアール:著 山本規雄:訳
『[図説] “特殊性欲”大百科 ~“ビザール”の生態学』
作品社 2592円
著者はフランスの女性ジャーナリストであり性文化研究者。取材で集めた当事者の証言と豊富な図画像は、人間の性的欲望の形は無限とさえ思わせる。ラバーフェチからペットガール、武器愛好者までの294態は、果たしてビザール(奇怪、異様)な快楽か?
(週刊新潮 2015年2月4日号)