「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。
逢坂剛、南伸坊、三谷幸喜 『ハリウッド黄金期の女優たち』
七つ森書館 2700円
往年のハリウッド美人女優164人の写真を前に、映画好き3人が純愛、熱愛、偏愛を語り合う。『ハリウッド美人帖』の続編だが、三谷の参戦でテンションが上昇。「性欲は?(笑)」「強いと思う」などと失礼な妄想も頻出している。女優愛、ここに極まれりだ。
井上麻矢 『夜中の電話~父・井上ひさし最後の言葉』
集英社インターナショナル 1296円
著者がこまつ座の社長に就任したのは2009年秋。井上ひさしが、がんの告知を受けた頃だ。残された時間の中で、父は娘に演劇と劇団について語り続ける。「どんな仕事も一個一個片づけていけばいい」をはじめ、収められた77の言葉は知恵と愛情に満ちている。
都築響一 『圏外編集者』
朝日出版社 1782円
若者たちの自室、独居老人、さらに珍スポットまで、それまでなかったテーマの本を生み出してきた著者。だが、「編集のノウハウなんて存在しない」が信条だ。ネットに頼らない。興味をもった人や場所には直接当たる。「自分で見つける」醍醐味こそが原動力だ。
松本博文 『東大駒場寮物語』
角川書店 1944円
東大駒場寮をめぐるノンフィクションだ。明治期に一中(後の一高)の寄宿舎として始まった学生寮が、大正、昭和を経て、15年前に幕を閉じた。それぞれの時代と社会を背景に、学生たちが過ごした破天荒な青春。著者は存続運動にも携わった元寮委員長である。
馬場マコト『朱の記憶~亀倉雄策伝』
日経BP社 1944円
約半世紀前の東京オリンピックで使われたエンブレム。朱色の太陽と黄金の五輪、そしてTOKYO1964の文字で構成された力強いデザインは亀倉の作だった。戦中のプロパガンダから戦後の国家的イベントまで、日本のデザイン界をリードし続けた男の生涯をたどる。
(週刊新潮 2016年2月11日)