日経MJ(流通新聞)に連載しているコラム「CM裏表」。
今回は、カップヌードル「名探偵 篇」について書きました。
日清カップヌードル「STAYHOT 名探偵 篇」
犬神家パロディ 役者も大真面目で
名探偵・金田一耕助の世界に、カップヌードルが侵入した。パロディのベースとなっているのは、市川崑監督の映画『犬神家の一族』だ。
関係者が集まる旧家の座敷も、白いマスクなどの小道具も、しっかり作り込んである。また古谷一行の金田一をはじめ、登場する役者たちも大真面目で演じている。
それでいて展開されるのが、カップヌードルの“具材”同士の権力争いだというバカバカしさ。このギャップがおかしいのだ。
元ネタの横溝正史作品を知らなくても笑えるが、知っている人ほど楽しめる。鉢巻きにフォークを何本も差し、鬼の形相で走ってくる男は『八つ墓村』。和服の女性が、つり鐘を思わせる巨大容器の下敷きになっているのは『獄門島』だ。ならば、あの“横笛”は?
昨年は市川崑監督の生誕百年だった。また76年の『犬神家』公開から、今年はちょうど40年だ。CMを見るたび、「もっとやれ!」と声をかけたくなる。
(日経MJ 2016.02.22)