発売中の「週刊ポスト」最新号に、TBSのドラマ「半沢直樹」と、演出担当の福澤克雄ディレクターに関する特集記事が掲載されている。
その手腕だけでなく、慶應義塾の創立者である福澤諭吉の玄孫(やしゃご)ということに注目したようだ。
玄孫だから、福澤先生の曾孫(ひまご)の子供ってことですね。
我々塾員としても、おろそかに扱えない人物だ。
ってのはオーバーですけど(笑)。
とにかく記事は、「半沢直樹」ヒットの功績者としての福澤ディレクターを軸に書かれています。
文中、コメントしているのは、「半沢直樹」の伊與田英徳プロデューサー、TVコラムニストの桧山珠美さん、そして私の3人。
記事全体は例によって本誌をご覧いただくとして、私のコメントは以下のようになっています・・・・
上智大学教授(メディア論)の碓井広義氏はその演出力に舌を巻く。
「ともすると複雑な話になりがちなテーマなのに、非常にわかりやすくできているのがこのドラマの見どころです。銀行内部のドロドロとした権力闘争やパワハラなどをリアルに描きつつ、同時に自然な形で銀行の業務や金融業界全体が見えるようにしている。まるで池上彰さんの絵解きのごとく、視聴者を飽きさせない、うまい工夫が施されていると思います」
「福澤さんはこれまでにTBS日曜劇場の『南極物語』や『華麗なる一族』なども手がけており、男のドラマの見せ方はうまい。それに加えて今回は、夫の地位や身分で妻たちの序列も決まるといった、社宅住まいの妻たちの苦労も描いている。男たちの企業ドラマでありながら、女性視聴者の共感も得られるような工夫が凝らされている。銀行という閉じられた空間だけの話にせず、周辺にいる人たちをきちんと描いている点も秀逸です」
(週刊ポスト 2013.08.09号)
・・・・ちなみに、26日放送の「半沢直樹」第3回の視聴率は、前週の
21.8%から、さらにアップして22.9%でした。
この数字はすごい。
19.4%→21.8%→22.9%という推移は、もはやこの夏のブームと言っていい。
原作者である作家の池井戸潤さんは、確か慶應の文学部と法学部の両方を卒業して(学士入学?)、当時の三菱銀行に入ったはず。
またドラマの主人公・半沢直樹は、慶應の経済卒ってことになっている。
そこに福澤克雄ディレクターを加えると、“慶應社中”(卒業生、在学生、教職員の総体)の取り組みにも見えます。
福澤先生が喜んでいらしゃるかもしれない。
もっとも、主演の堺雅人さんは早稲田ですが(笑)。
ということで、先日、日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」で、「半沢直樹」について書いたものを転載しておきます。
ドラマ「半沢直樹」TBS
大胆さが吉と出た
夏ドラマの初回視聴率がとても高い。テレビ朝日「DOCTORS2」19.6%。フジテレビ「ショムニ2013」18.3%。そしてTBS「半沢直樹」が19.4%だ。
個別の分析はともかく、最大の要因は「毎日メチャ暑い!」ことだろう。この猛暑では外で夜遊びする気にもならない。みんな早く家に帰って、クーラーの効いた部屋で休息したいのだ、多分。
「半沢直樹」の注目ポイントは2つある。
まず主人公が大量採用の“バブル世代”であること。企業内では、「楽をして禄をはむ」など負のイメージで語られることの多い彼らにスポットを当てたストーリーが新鮮だ。
池井戸潤の原作「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」は、優れた企業小説の例にもれず、内部(ここでは銀行)にいる人間の生態を巧みに描いている。
福澤克雄ディレクター(「華麗なる一族」など)の演出は、この原作を相手に正攻法の真っ向勝負だ。
第2のポイントは主演の堺雅人である。
今年6月、「リーガル・ハイ」(フジ)と「大奥」(TBS)の演技により、ギャラクシー賞テレビ部門の個人賞を受賞したが、まさに旬と言っていい。シリアスとユーモアの絶妙なバランス、そして目ヂカラが群を抜いている。
思えばタイトルを「半沢直樹」としたのは大胆な選択だったはず。
その大胆さも吉と出た。
(日刊ゲンダイ 2013.07.16)