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Channel: 碓井広義ブログ
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3人の「キャスター」が報道番組を去った

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北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。

今回は、「報道番組」について書きました。


3人のキャスター去った報道番組
もの言う意気 今後は・・・
3月17日、NHK「クローズアップ現代」が最終回を迎えた。1993年から23年間、キャスターを務めてきた国谷裕子さんもこの日が最後だった。「振り返ってみますと、国内、海外の変化の底に流れるものや、静かに吹き始めている風をとらえようと日々もがき、複雑化し見えにくくなっている現代に、少しでも迫ることができればとの思いで番組に携わってきました」と挨拶した国谷さん。

私たちは日々の生活の中で、「変化の底に流れるものや、静かに吹き始めている風」をなかなか感知することができない。見えないところで何が起きているのか。それが何を意味しているのか。もしかしたら自分たちの将来に大きく影響するかもしれない出来事の深層を伝えることは、ジャーナリズムとしてのメディアの大事な役割だ。国谷さんは、そのために奮闘を続けてきた。

また25日には、「NEWS23」(TBS-HBC)の岸井成格アンカーが退任した。特定秘密保護法、安全保障関連法、さらに憲法改正など、この国のかたちを変えていこうとする政治の流れの中で、テレビを通じてその危うさを伝え続けたのが岸井さんだ。

「今、世界も日本も、歴史的な激動期に入りました。そんな中で、新しい秩序や枠組み作りの模索が続いています。それだけに報道は、変化に敏感であると同時に、極端な見方に偏らないで、世の中の人間の良識や常識を基本とする。そして何よりも真実を伝える。権力を監視する。そういうジャーナリズムの姿勢を貫くことが、ますます重要になっていると感じます」。岸井さんの最後の言葉は、メディアに対する切実なメッセージだった。

そして31日、「報道ステーション」(テレビ朝日―HTB)の古舘伊知郎キャスターが番組を卒業した。自身の降板について、「圧力があって辞めさせられるわけではない」としながらも、次のように語った。

「無難な言葉で固めた番組なんか、ちっとも面白くありません。人間がやっているんです。人間は少なからず偏っています。だから情熱をもって番組を作れば、多少は偏るんです。しかし、全体的にほどよいバランスに仕上げ直せば、そこに腐心をしていけばいいのではないかと、私は信念をもっております」

その意気や良しであり、こうした“もの言うキャスター”がまた一人、画面から消えたことを残念に思う。三人のキャスターを失った報道番組が今後、何をどう伝え、また何を伝えないのか、注視していきたい。

(北海道新聞 2016.04.04)


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