日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週の掲載分では、NHK土曜ドラマ「七つの会議」について書きました。
ドラマ「七つの会議」NHK
民放では作れなった池井戸作品
NHK土曜ドラマ「七つの会議」全4話が先週で完結した。舞台はある中堅電機メーカー。東山紀之演じる営業課長が企業ぐるみの不祥事隠蔽に巻き込まれていく。
問題となったのは強度不足の製品用ネジだ。乗り物の座席を固定するのに使われており、大事故を引き起こす危険性があった。しかしまともにリコールすれば、親会社や孫請けの零細企業も含めての大打撃だ。会社は一人の社員に不祥事の罪を着せようとするが・・・。
このドラマが描いたのは「組織のダイナミクス(力学)」の怖さだ。個人の批判的精神が抑え込まれ、価値判断は停止し、組織の目的に向けて自己を超越してしまうのだ。隠蔽工作について社長(長塚京三)が言う。「過ちではない。決断だ」。
ドラマを見ていて、いくつもの現実の事件を思い出した。日本ハム牛肉偽装、三菱自動車リコール隠し、ミートホープ食肉偽装等々。その指揮をとった幹部や不正と知りつつ従っていた社員は、会社と自分のことは考えても、社会に目を向けてはいなかった。
原作は「半沢直樹」と同じ池井戸潤の小説だが、企業が抱える危うさをあぶり出したこのドラマ、スポンサーを必要とする民放では作れなかったかもしれない。東山や吉田鋼太郎などの好演と、「ハゲタカ」の堀切園健太郎ディレクターの手堅い演出にも拍手だ。
(日刊ゲンダイ 2013.08.06)