産経新聞で、高畑淳子さんの「謝罪会見」について、コメントしました。
高畑淳子、みのもんた、三田佳子…
なぜ成人した子供の不祥事で
「親の責任」に関心が集まるのか?
「私の育て方がいけなかった」-。強姦致傷容疑で逮捕された俳優の高畑裕太容疑者(22)の母で女優、淳子さん(61)の謝罪会見は、大半のテレビ局が生中継するなど大きな注目を集めた。家族の起こした事件を受け、以前から謝罪や仕事の自粛が繰り返されてきた日本の芸能界。親(家族)の責任に、なぜ関心が集まるのだろうか。(放送取材班)
「刺し違える覚悟」
「私ども(家族)のように皆さまの目に触れる機会が多い人間は『いけないことをしたら互いに刺し違えて死ぬ』くらいの覚悟でやらなければ」「(私は)一人の母親で人間ですが、“商品”です。(息子が)成人しているからといって、『自分とは関係がない』とは絶対に言えない」
淳子さんは8月26日の会見で、芸能界における家族の責任の取り方について、そんな考えを明かした。
淳子さんは「私がここで仕事を降りては、(番組が差し替えになった息子と)同じことをしてしまう」と、主演舞台に予定通り出演する考えを示した。一方、テレビのトーク番組出演を見合わせたり、CMが放送中止になったりと、事件の波紋は広がってもいる。
親も謝る風潮
今回に限らず、家族の不祥事に対する著名人の対応は、かねてから度々、人々の注目の的になってきた。
女優の三田佳子さんの次男は平成10年以来、3度の覚醒剤事件を起こし、三田さんが繰り返し、会見で謝罪。三田さんはCMを相次いで降板し、一時は活動を自粛した。
25年にはタレント、みのもんたさんの次男が窃盗未遂容疑で逮捕(後に起訴猶予処分)され、みのさんは司会を務めていた情報番組を降板。会見では「辞めなければ(バッシングが)収まらない風潮を感じた」と語り、成人した子供に対する親の責任をめぐって議論を呼んだ。
中央大の山田昌弘教授(家族社会学)は「日本では伝統的に、人が罪を犯した場合、家族に責任があるという考えが根強い。欧米では、子供が小さい場合は別だが、行動の責任は本人にあると考えられている。親が謝罪することはまずありえない」と指摘。その上で「人の成長には友人や学校、職場など多くの要素が関わっている。何かあったら親が謝るという現在の風潮は、親の過保護、過干渉につながり、社会にとって必ずしも良くないことだと思う」と話す。
一部質問に苦言も
一方、上智大の碓井広義教授(メディア論)は今回の事件をめぐり、淳子さんと裕太容疑者が親子で度々、バラエティー番組で共演し、暮らし向きを公開していたことに着目。「裕太容疑者は『親の七光』をフル活用して世に出てきた印象が強い。そうしたイメージが事件への注目度の高さにつながったのでは」とみる。
一般人と異なり、芸能人の場合、私生活が良くも悪くも「見せ物」になってしまうケースは少なくない。淳子さんの会見では、裕太容疑者が事件前、テレビ番組で語っていた女性観や異性との交際に関する質疑も交わされた。
碓井教授は「淳子さんに裕太容疑者の『性癖』を尋ねるなど、報道陣の質問の一部には、その意図に首をかしげたくなるものもあった」と苦言を呈し、「捜査中とはいえ、傷つけられた女性のいる悪質な事件で、ニュースの扱いには慎重であるべきだ。メディアは謝罪の場を一種のショーのようにとらえ過ぎていないか」と、警鐘を鳴らしている。
(産経新聞 2016.08.30)