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Channel: 碓井広義ブログ
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「『ぴあ』を片手に町へ出よう」の時代があったのだ

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「『ぴあ』を片手に町へ出よう」の時代があったのだ
本屋さんやコンビニの雑誌コーナーで、ふと、『ぴあ』を探している自分に気づくことがある。あの映画情報誌が”休刊”してから、もう5年は経つというのに。

映画や演劇、コンサートなどの情報を、ネットから自在に入手できる時代になったことが、休刊の最大の要因だ。それは、わかっているけれど・・。

思えば、創刊された1972年当時、自分が観たい映画が「どこの映画館で、何時からの上映か」を知ることは、本当に大変だった。『ぴあ』は、一種の情報革命だったのだ。

掛尾良夫「『ぴあ』の時代」(小学館)は、この雑誌を生み出した矢内廣(創刊時は大学生)と仲間たちが、時代とどう向き合い、自分たちの事業を進めていったのかを辿るノンフィクションだ。

素人集団だった彼らが、手づくりのような雑誌を巨大ビジネスに育てていく過程は、企業物語であると同時に70年代の青春物語でもある。

また、『ぴあ』を足場に、森田芳光、大森一樹、長崎俊一など何人もの映画監督が世に出た。一つの雑誌が日本映画界に与えた影響は大きい。映画専門出版社の社員として、時代と並走してきた著者ならではの一冊だ。

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