2011年以来、”鎮魂の月”となった3月も終わります。
今月最後の日に読むのは、いとうせいこうさんの小説『想像ラジオ』(河出書房新社)です。
これまでに、地震や津波を取り込んだ形の文芸作品がいくつも生まれました。
しかし、これほどのインパクトを持つものはないのではないでしょうか。
主人公は、ラジオパーソナリティであるDJアーク。
被災地から、不眠不休で放送を続けています。
しかし、そのおしゃべりや音楽を聴こうと、ラジオのスイッチを入れても無理なのです。
DJアーク自身が言うように、「あなたの想像力が電波であり、マイクであり、スタジオであり、電波塔であり、つまり僕の声そのもの」なのだから。
想像ラジオには、リスナーからのメールも届きます。
「みんなで聴いてんだ。山肌さ腰ばおろして膝を抱えて、ある者は大の字になって星を見て。黙り込んで。だからもっとしゃべってけろ」。
DJアークは話し続けます。
遠くにいる妻や息子を思い、聴いている無数の人たちの姿を想像しながら・・・。
オーバーなことを言えば、『想像ラジオ』は、日本で生まれた“21世紀の世界文学”といえる、問題作の一つだと思っています。
そしてこの作品で、言葉のチカラ、文章のチカラ、文学のチカラを、しっかりと示してくれた、いとうせいこうさんに感謝です。